未経験から情シス・AWS・データサイエンティストへ転職する時に知っておきたいこと
この記事の要約
IT業界への転職を考えているものの、「自分にプログラミングができるか不安」と感じている方もいます。しかし、IT業界には開発をメインとしない職種も存在し、これまでの経験や適性を活かせる可能性があります。
本記事では、情シス(社内SE)やインフラエンジニア、データサイエンティストといった職種の特徴と、未経験から挑戦するためのステップを解説します。
未経験IT転職の選択肢

現在の仕事に将来の不安や待遇への不満を抱え、成長産業であるIT業界への転職を検討する方は増えています。しかし、いざ転職活動を始めようとすると、「IT業界=プログラマー」というイメージが先行し、自分に開発業務が務まるのかと足踏みしてしまうケースもあります。
実際にIT業界の求人を見ると、Webアプリケーションの開発やシステムのプログラミングを担う職種が目立ちます。そのため、文系出身の方やパソコンの基本操作しか経験がない方は、ハードルが高いと感じやすい傾向があります。
しかし、IT業界を支えているのはプログラマーだけではありません。社内のIT環境を整えるポジションや、システムが動くための土台を作るポジション、さらにはデータを分析してビジネスの方向性を決めるポジションなど、多様な役割が存在します。開発以外の選択肢を知ることで、自分の強みであるコミュニケーション能力や論理的思考力を活かせる道が見つかる可能性があります。
専門職転職全体の難易度比較や求人の探し方については、こちらの全体ガイドも参考にしてください。
IT人材の将来性と狙い目領域
IT業界への転職を考える上で、業界全体の将来性や人材の需要を把握しておくことは重要です。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、需要の伸びが高位シナリオの場合、2030年に最大約79万人のIT人材が不足する可能性があると試算されています。
この慢性的な人材不足を背景に、IT業界では経験者だけでなく、未経験者を採用して自社で育成しようとする企業も増える傾向にあります。特に、新しい技術の普及に伴って需要が急増している分野では、学習意欲の高い未経験者にもチャンスが広がっています。
未経験からIT業界を目指す場合、プログラマー以外の狙い目となる領域として、主に以下の4つが挙げられます。
- 情シス(社内SE):自社のITインフラ整備や従業員のサポートを担う
- インフラエンジニア:サーバーやネットワークなどシステムの土台を構築・運用する
- データサイエンティスト:蓄積されたデータを分析し、事業戦略に活かす
- SIer(システムインテグレーター)のSE:顧客の課題を解決するシステムを企画・設計する
これらの職種は、プログラミングスキルだけでなく、他部署との調整力や課題解決力、コツコツと仕組みを構築する力が求められます。
情シス(社内SE)への転職戦略
情シス(情報システム部門)は、社内SEとも呼ばれ、自社の従業員が円滑に業務を行えるようにIT環境を整える役割を担います。自社のビジネスをITの側面から支える重要なポジションです。
情シスの主な仕事内容
情シスの業務は多岐にわたりますが、代表的なものとしてヘルプデスク業務があります。「パソコンが起動しない」「社内システムにログインできない」といった従業員からの問い合わせに対応し、トラブルを解決します。
また、新入社員が入社した際のパソコンの初期設定(キッティング)や、社内ネットワークの構築・保守、ソフトウェアのライセンス管理なども重要な業務です。近年では、テレワーク環境の整備や、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策の策定など、企業のリスク管理に関わる業務の比重も高まっています。
情シスに向いている人と注意点
情シスは、社内のあらゆる部署の従業員と関わるため、相手のITリテラシーに合わせて分かりやすく説明するコミュニケーション能力が求められます。そのため、もしあなたが社内調整や人のサポートをすることにやりがいを感じるタイプであれば、情シスが向いていると言えます。
一方で、情シスは既存のシステムを安定稼働させることが主なミッションとなることが多く、ゼロから新しいシステムを開発する機会は限られます。そのため、ひたすらコードを書いてモノづくりに没頭したい人にとっては、業務内容にギャップを感じるリスクがあります。
未経験から評価されやすい資格
未経験から情シスへの転職を目指す場合、ITの基礎知識を体系的に身につけていることを証明する資格が役立ちます。代表的なものとして「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」が挙げられます。
特に基本情報技術者試験は、コンピューターの仕組みからネットワーク、セキュリティ、プロジェクト管理まで幅広い知識が問われるため、取得しておくと選考で学習意欲の高さとして評価される傾向があります。資格取得に向けて学んだ知識は、実際のヘルプデスク業務やベンダー(外部のシステム開発会社)との折衝でも活かすことができます。
インフラ(AWS等)への転職戦略
インフラエンジニアは、Webサイトやアプリケーションが24時間365日、安定して稼働するための土台(インフラ)を作る職種です。普段、私たちが意識することなくインターネットを使えるのは、インフラエンジニアの働きがあるためです。
インフラエンジニアの主な仕事内容
インフラエンジニアの仕事は、大きく「サーバーエンジニア」と「ネットワークエンジニア」に分けられます。サーバーエンジニアは、データを保管・処理するサーバーの設計や構築、保守を行います。ネットワークエンジニアは、ルーターやスイッチといった機器をつなぎ、データが安全かつスムーズに行き交うネットワーク環境を構築します。
近年、自社で物理的なサーバーを持つ「オンプレミス」から、Amazon Web Services(AWS)などの「クラウド」環境へシステムを移行する企業が増加しています。そのため、物理機器の配線や設定だけでなく、ブラウザ上の操作で仮想サーバーを構築するクラウドの知識が求められるようになっています。
インフラエンジニアに向いている人と注意点
インフラエンジニアは、システムが止まることなく動き続けるように、緻密な設計と慎重な運用を行う必要があります。もしあなたが、表舞台に立つよりも裏方として社会の基盤を支えることに誇りを持ち、マニュアルに沿ってコツコツと正確に作業を進めるのが好きなら、インフラエンジニアで活躍できる可能性が高いです。
ただし、システム障害は夜間や休日に発生することもあります。企業によってはシフト制での勤務や、障害発生時の緊急対応(オンコール)を担当することがあるため、働き方の条件は事前に確認しておく必要があります。
未経験から評価されやすい資格
インフラエンジニアを目指す上で、クラウドの知識を証明する資格は有効です。特にシェアの高いAWSの認定資格である「AWS Certified Cloud Practitioner(クラウドプラクティショナー)」は、クラウドの基礎概念を理解している証明となり、未経験者の第一歩として推奨されます。
また、ネットワークの基礎知識を証明するCisco社の認定資格「CCNA」や、LinuxOSの操作スキルを証明する「LinuC(リナック)」なども、インフラ技術の土台として高く評価される傾向があります。
データサイエンティストへの道
データサイエンティストは、企業に蓄積された膨大なデータ(ビッグデータ)を分析し、売上向上や業務効率化といったビジネス上の課題を解決するためのヒントを導き出す職種です。
データサイエンティストの主な仕事内容
データサイエンティストの業務は、単にツールを使ってデータを集計するだけではありません。まずは「売上が伸び悩んでいる原因は何か」といったビジネス課題を定義し、仮説を立てます。その後、必要なデータを収集し、分析しやすい形に整える「データクレンジング(前処理)」を行います。
前処理が終わったデータを統計学の手法や機械学習のアルゴリズムを用いて分析し、将来の予測モデルを構築します。最後に、分析結果を経営陣や現場の担当者に分かりやすくレポートとしてまとめ、施策を提案するまでが一連の流れとなります。
データサイエンティストに向いている人と注意点
データサイエンティストは、数字の羅列から意味を見出し、論理的に筋道を立てて考える力が求められます。もしあなたが、複雑な事象を分析して法則性を見つけるのが得意で、事実に基づいて相手を説得することに長けているなら、適性があると言えます。
しかし、データサイエンティストになるには、高度な数学的素養(微分積分、線形代数など)や統計学の知識がないと厳しいというハードルがあります。また、分析のためのプログラミング(PythonやRなど)も習得する必要があるため、学習の難易度は他のIT職種と比べても高い傾向にあります。
未経験から評価されやすい資格
未経験からデータ領域に挑戦する場合、まずはAIやデータ分析の基礎概念を理解することが重要です。日本ディープラーニング協会が主催する「G検定(ジェネラリスト検定)」は、AIの仕組みやビジネスへの活用方法を体系的に学べるため、入門資格として適しています。
また、データ分析で標準的に使われるプログラミング言語の知識を証明する「Python3エンジニア認定基礎試験」や「Python3エンジニア認定データ分析試験」を取得することで、実務に必要な基礎スキルを備えていることのアピールに繋がります。
SIerと自社開発の違い

IT業界への転職を考える際、職種だけでなく「どのような立ち位置の企業で働くか」という業界構造の理解も欠かせません。特にシステムエンジニア(SE)を目指す場合、企業は大きく「SIer(システムインテグレーター)」と「自社開発企業」に分かれます。
SIer(システムインテグレーター)のビジネスモデル
SIerは、ITシステムを必要としている顧客企業(銀行、メーカー、官公庁など)から依頼を受け、システムの企画・設計・開発・運用を請け負う企業です。顧客の要望(要件)をヒアリングし、それを実現するためのシステムをオーダーメイドで作るのが主な役割です。
SIer業界は、元請け企業がプロジェクト全体を管理し、実際の開発作業を下請け企業に委託するという多重下請け構造になっている傾向があります。
自社開発のビジネスモデル
自社開発企業は、自社で企画したWebサービスやスマートフォンアプリ、業務効率化ツール(SaaS)などを開発し、一般ユーザーや他企業に提供して収益を得るビジネスモデルです。顧客から依頼されて作るのではなく、自分たちで「どのような機能があれば売れるか」を考えて開発を進めます。
未経験からSIerのSEを目指す場合の働き方
未経験からSIerのSE(システムエンジニア)として転職した場合、プログラミングのコードを書くことよりも、顧客との打ち合わせや仕様書の作成、プロジェクトの進行管理といった「上流工程」に関わる機会が多くなります。
そのため、プログラミングの技術を極めたいのであれば自社開発企業の方が適していますが、マネジメントスキルや顧客折衝力を磨き、プロジェクト全体を動かす役割を目指すのであれば、SIerのSEが向いています。SIerでは、技術力だけでなく、顧客の業務内容を理解し、課題を解決するための提案力が求められます。
未経験から転職を進める手順
開発以外のIT職種の特徴を理解した上で、実際に未経験から転職活動を進めるためのステップを解説します。計画的に準備を進めることで、選考の通過率を高めることができます。
1. 自己分析と職種選び
まずは、これまでの社会人経験の棚卸しを行い、自分の強みがどのIT職種で活かせるかを分析します。営業経験で培った顧客折衝力があるならSIerのSE、事務職で培った正確な処理能力があるならインフラエンジニア、といったように、過去の経験と職種の適性を結びつけます。
面接官は、未経験者に対して「なぜその職種を選んだのか」という理由と、自ら学習を進める「自走力(自分で調べる力)」があるかを確認します。職種ごとの業務内容を深く理解し、自分の言葉で志望動機を語れる状態にしておくことが重要です。
2. 資格取得と基礎学習
志望する職種が定まったら、関連する資格の取得に向けた学習を開始します。IT業界の選考において、資格そのものが内定を保証するわけではありませんが、「業務時間外に自ら学ぶ意欲がある」という客観的な証明として高く評価される傾向があります。
情シス志望なら基本情報技術者試験、インフラ志望ならAWS認定クラウドプラクティショナーなど、職種に直結する基礎資格のテキストを購入し、学習を進めます。独学での理解が難しい場合は、オンラインの学習サイトや動画教材を活用するのも一つの方法です。
3. IT特化型エージェントの活用
基礎学習と並行して、IT業界に強い転職エージェントに登録し、情報収集を始めます。総合型の転職エージェントでもIT求人は扱っていますが、未経験からのキャリアチェンジにおいては、業界の動向や職種ごとの選考対策に精通したIT特化型エージェントのサポートを受けるのが効果的です。
エージェントを利用することで、自分の適性に合った求人の紹介を受けられるだけでなく、職務経歴書の添削や、専門用語を交えた模擬面接などのサポートを受けることができます。
まとめ
IT業界への転職は、プログラマーとしてコードを書くことだけが正解ではありません。情シス、インフラエンジニア、データサイエンティスト、SIerのSEなど、多様な職種が存在し、それぞれに求められる適性やスキルは異なります。
自分の強みや性格に合った職種を見極めることが、キャリアチェンジの第一歩となります。まずは興味を持った職種の基礎知識を本やWebで調べ、関連する資格の学習を始めてみるか、転職エージェントの無料キャリア相談を活用して自分の適性を探ってみることをおすすめします。