天職みつかーる
更新日:2026/06/18

有給消化を含めた退職届の書き方入門(例文付き)

有給消化を含めた退職届の書き方入門(例文付き)

この記事の要約

退職時に残っている有給休暇を消化するためには、退職届の書き方と提出のタイミングが重要になります。退職届に有給のことを書いてよいのか、会社に拒否されないかと不安に感じる方も少なくありません。

本記事では、退職日と最終出勤日の違いを踏まえた文面テンプレートや、会社に有給消化を拒否された場合の対処法を解説します。手順を理解し、トラブルを防ぎながら円満な退職を目指すための参考にしてください。

退職届に有給消化の旨は書くべき?

退職の意思が固まり、いざ手続きを進める段階になると、「退職届に有給消化のことを書いてもよいのだろうか」「角が立たないか」と悩む方は少なくありません。口頭で上司と合意したから大丈夫だろうと考え、書面には残さないケースも見受けられます。

結論として、有給消化のスケジュールや最終出勤日は、退職届に明記することをおすすめします。口頭での約束だけでは、「言った・言わない」のトラブルに発展するリスクが残るためです。

有給消化の合意がうやむやにされたり、会社側の都合で退職日を前倒しされたりする事態を防ぐには、決定事項を書面に残すことが有効な防衛策となります。

退職願と退職届の違いと使い分け

机に置かれた2つの封筒を見比べるビジネスパーソン

退職手続きにおいて混同されがちな書類に「退職願」と「退職届」があります。これらは提出する目的や法的な性質が異なるため、状況に応じて正しく使い分けることが大切です。

神奈川県弁護士会の「退職届と退職願の違い」(2021年10月)によると、退職願は労働契約の合意解約の申込みであり、会社が承諾するまでは撤回が可能とされています。一方、退職届は一方的な解約通知であり、会社が受領した時点で効力が発生するため、原則として提出後の撤回はできません。

項目退職願退職届
目的退職の意思を打診・相談する確定した退職日を通知・記録する
提出先直属の上司人事部門や社長(上司経由)
撤回の可否会社が承諾するまでは可能原則として不可

有給交渉の段階では「退職願」

退職の意思を伝え、有給消化の日程を相談・交渉する段階では、退職願を用いるか、まずは口頭で打診するのが一般的です。この時点では退職日や最終出勤日が確定していないため、会社側とスケジュールを調整する余地を残しておく必要があります。

いきなり退職届を提出してしまうと、一方的な通知と受け取られ、円満な引き継ぎや有給交渉が難しくなる傾向があります。まずは直属の上司に相談し、業務の引き継ぎ期間と残りの有給日数をすり合わせることから始めます。

日程確定後に「退職届」を提出

上司との話し合いで最終出勤日と退職日が合意に至ったら、その決定事項を記録する意味合いで退職届を提出します。退職届は、交渉を終えた後の確定申告のような役割を果たします。

この段階で提出する退職届に、合意した最終出勤日と有給消化の旨を明記しておくことで、後からスケジュールを覆されるリスクを減らすことができます。

有給消化を含めた退職届の書き方

有給消化を伴う退職届を作成する際は、いくつかの基本的なルールと、日付の書き分け方に注意を払う必要があります。ここでは、書き方とそのまま使えるテンプレートを紹介します。

基本的なフォーマットとマナー

退職届の用紙はB5またはA4サイズの白無地(便箋)を使用し、黒のボールペンや万年筆で手書きするのが基本です。縦書きで作成し、白無地の封筒に入れて提出します。

ただし、会社によっては専用のフォーマットやシステム上の申請フォームが用意されている場合があります。その場合は会社の就業規則や指定の形式に従って手続きを進めてください。

「退職日」と「最終出勤日」の書き分け

有給消化を含める場合、重要なのは「退職日」と「最終出勤日」を書き分けることです。退職日とは会社に籍を置く最後の日であり、社会保険の資格喪失日などに関わります。一方、最終出勤日は実際に会社に出向いて業務を行う最後の日を指します。

有給消化の期間は、最終出勤日の翌日から退職日までとなります。この2つの日付を退職届に併記することで、「いつまで働き、いつから有給に入り、いつ正式に退職するのか」というスケジュールを会社側と共有できます。

【例文】有給消化を明記するテンプレート

実際に退職届を作成する際の文面テンプレートです。以下の文章を縦書きで便箋に記入してください。
退職日を宣言した後に「なお」と続け、最終出勤日と有給消化の日数を書き添えることで、角を立てずに法的に有効な形で申請内容を残すことができます。

私儀
このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
なお、令和〇年〇月〇日を最終出勤日とし、以降は残存する年次有給休暇〇日を消化させていただきます。


令和〇年〇月〇日
〇〇部〇〇課
氏名 印


株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇 〇〇様

退職届を提出するタイミング

退職届を提出するタイミングは、法律上の規定と会社のルールの両方を考慮して決める必要があります。特に有給をすべて消化したい場合は、逆算してスケジュールを立てることが重要です。

法律(民法)と就業規則の違い

民法第627条の規定では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し出から2週間が経過すれば退職できるとされています。しかし、円満に退職するためには、会社の就業規則で定められた期限(1〜2ヶ月前とされていることが多い)を優先するのが一般的です。

業務の引き継ぎや後任の配置にかかる期間を考慮し、就業規則に沿ったタイミングで直属の上司に打診することで、有給消化の交渉もスムーズに進みやすくなります。

有給消化日数を逆算したスケジュールの立て方

残っている有給休暇の日数が多い場合、就業規則通りのタイミングでは物理的に消化しきれないケースがあります。たとえば、残有給が40日(約2ヶ月の営業日分)ある場合、1ヶ月前に退職を申し出ても日数が足りません。

全日数を消化しやすくするためには、「退職希望日」から「残有給日数」と「引き継ぎに必要な期間」を逆算してスケジュールを立てます。上記の例であれば、退職希望日の2.5〜3ヶ月前には上司に打診を始める必要があります。早めに相談を開始することで、会社側も余裕を持って対応できるようになります。

参考記事:退職時に有給40日を全消化する手順|退職日と最終出勤日の決め方

有給消化を拒否された場合の対処法

バツ印のついたカレンダーを持ち困惑するビジネスパーソン

退職届を提出し有給消化を申請しても、会社側から「引き継ぎが終わらないから認めない」と拒否されたり、退職届の受け取りを拒まれたりする場合があります。そのようなときの法的な対処法を解説します。

会社は退職時の有給を拒否できない

労働基準法第39条により、有給休暇の取得は労働者の正当な権利として認められています。会社には、事業の正常な運営を妨げる場合に取得日を変更させる「時季変更権」がありますが、退職予定者に対してはこの権利を行使できないと解釈されるのが一般的です。

沖縄労働局の「労働相談事例 年休Q1」でも、退職予定日を超えて時季変更権を行使することは不可能であるため、退職日までの残りの労働日すべてについて有給消化を申請された場合、会社は拒否できないとされています。

内容証明郵便で退職届を送付する

上司が退職届を受け取ってくれない場合は、配達証明付きの内容証明郵便で会社(社長宛)に送付するという手段があります。内容証明郵便を利用することで、「誰が、誰宛てに、いつ、どのような内容の文書を差し出したか」を郵便局が公的に証明してくれます。

これにより、法的に退職届を提出したという客観的な証拠を残すことができ、会社側が「受け取っていない」と主張するトラブルを防ぐことにつながります。

労働基準監督署への相談

内容証明郵便を送っても有給取得を妨害されるなど、自力での解決が困難な場合は、労働基準監督署へ相談することを検討します。

相談に赴く際は、有給の残日数がわかる給与明細、会社の就業規則、提出した(または送付した)退職届のコピーなど、客観的な事実を示す資料を持参すると、状況を正確に伝えやすくなります。

自力交渉が難しいときの選択肢

上司が高圧的で退職届を出せる雰囲気ではない場合や、自分で有給交渉をする精神的な余裕がない場合は、退職代行サービスを利用するのも一つの選択肢です。

退職代行サービスを利用すれば、業者が間に入って退職の意思や有給消化の希望を伝えてくれるため、即日出社せずに手続きを進められる可能性があります。退職届の郵送手配などもサポートしてもらえるため、直接会社とやり取りする心理的負担を軽減できます。

ただし、会社に対して有給消化の交渉を行うには法的な権限が必要です。そのため、民間企業が運営するサービスではなく、労働組合や弁護士が運営する退職代行を選ぶことが重要です。労働組合が運営する退職代行Jobsなどは、団体交渉権を用いて有給の交渉を行うことができます。自身の状況に合った依頼先を検討してみてください。

まとめ

退職届に有給消化の旨を記載することは、口頭での約束によるトラブルを防ぎ、自分の権利を守るための有効な手段です。退職日と最終出勤日を書き分け、決定事項を書面に残すことで、スケジュールを変更されるリスクを減らすことができます。

有給休暇の取得は労働者に認められた正当な権利です。まずは直属の上司と引き継ぎのスケジュールを相談し、合意した内容を退職届に反映させて、提出を進めてみてください。

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