「退職代行を使うのはありえない」は本当?非常識と言われる理由と使うべき人
この記事の要約
「退職代行を使ってみたいけれど、ありえない・非常識だと思われないか」とためらっていませんか。この記事では、退職代行が「ありえない」と言われる理由を整理したうえで、法律上は退職の自由という正当な権利であること、そして退職代行を使うべき人の特徴と使う前の注意点までを解説します。世間体や罪悪感で辞められずに消耗している人が、自分の状況を判断し、次の一歩を選べるようになることを目指します。
退職代行に罪悪感を抱く人へ

退職したい気持ちははっきりしているのに、「退職代行なんて使うのはありえない」「社会人として非常識だと思われるのではないか」という世間体や罪悪感で、一歩を踏み出せずにいる方もいるのではないでしょうか。上司に切り出すことを考えるだけで気が重くなり、退職の話を先延ばしにしてしまう状態です。
とくに、上司が高圧的で退職を言い出せない、強い引き止めにあいそうで怖い、あるいは心身が限界に近く会社と直接やり取りする気力が残っていない、といった状況では、「本当は誰かに代わってほしい」という気持ちと「それは逃げではないか」という迷いの間で揺れてしまいます。
まず知っておきたいのは、退職代行を検討すること自体は、責められるようなことではないという点です。この記事では、そう言われる理由を正面から見たうえで、法律や実際の使いどころから「本当にありえないのか」を一つずつ確認していきます。
「非常識」と言われる理由
退職代行が「ありえない」「非常識」「クズ」「逃げ」などと言われるのは、主に次のような理由からだと考えられます。批判の声を正しく理解しておくと、自分が気にすべき点とそうでない点を切り分けられます。
- 引き継ぎがないまま突然辞めると、残された同僚や会社に負担がかかる
- 上司や同僚へ直接あいさつや感謝を伝えないまま去るのは、礼儀を欠くと受け取られる
- 「自分で伝えるべきことを他人に任せるのは逃げだ」という価値観がある
これらは、どちらかといえば従来型の職場観や、退職代行を使われた側(残る同僚や会社)の視点から出てくる意見です。実際に負担が生じる場面があるのも事実なので、まったくの言いがかりというわけではありません。
一方で、これらは「マナーや価値観の問題」であって、「退職代行を使うことが違法・ルール違反かどうか」とは別の話です。次の章で、法律の面から見ていきます。感謝や引き継ぎへの配慮は、後述する準備で十分に補うことができます。
退職代行は法的に正当
「非常識かどうか(マナーの話)」と「法的に問題ないか(権利の話)」は、分けて考える必要があります。結論の方向性としては、退職代行の利用そのものは違法でも契約違反でもありません。
その根拠になるのが、退職の自由を定めた民法第627条です。
民法第627条第1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。つまり、期間の定めのない雇用(正社員など)では、労働者はいつでも退職を申し入れることができ、申し入れから2週間の経過で雇用契約は終了します。
退職代行は、この「退職の意思表示」を、本人に代わって会社へ伝えるための手段です。伝える人が本人か第三者かによって、退職の自由という権利が変わるわけではありません。そのため、退職代行を使うこと自体を「法律的にありえない」と決めつける必要はないと言えます。
なお、就業規則に「退職は1〜2か月前に申し出ること」と書かれている場合もあります。円満に辞めたいなら就業規則に沿うのが望ましい一方、法律上の根拠は民法第627条の2週間であるという点は、判断材料として押さえておきましょう。
退職代行を使うべき人

法的に問題がないとしても、誰にとっても必要なわけではありません。退職代行が特に有効なのは、次のような状況にある人です。
退職を受理してもらえない・強く引き止められる
退職を申し出ても「後任が決まるまで無理」「そんな理由では認めない」と受理してもらえず、話が前に進まないケースです。第三者が退職の意思を正式に伝えることで、こう着状態を動かしやすくなります。
ハラスメントがあり直接対峙が難しい
上司からのパワハラや威圧が日常化しており、退職の意思を伝えること自体が精神的に大きな負担になる場合です。直接顔を合わせずに手続きを進められることが、身を守る手段になります。
心身に不調が出ている
眠れない、出勤前に体調を崩すなど、すでに心身に不調のサインが出ている場合、会社とのやり取りを続けること自体がさらに負担を重ねます。もしあなたがこの状態なら、健康を最優先に、第三者に間に入ってもらう選択が現実的です。
言い出せずにズルズルと在籍している
「辞めたい」と思いながらも切り出せず、何か月も同じ状態で消耗している人です。自分一人では踏ん切りがつかないなら、依頼したその日から会社と直接やり取りせずに退職手続きを始められます。たとえば、毎朝の憂うつや日曜の夜になると気が重くなる状態がずっと続いているなら、第三者に間に入ってもらうことで、その悩みのループから抜け出し、気持ちを次の準備へ向けやすくなります。
一方で、自分の言葉で円満に退職を伝えられ、引き継ぎも丁寧に行いたいという人には、退職代行は必ずしも必要ありません。その場合は、直接申し出るほうが角が立ちにくいでしょう。自分がどちらのタイプかを見極めることが、後悔しない選択につながります。
使う前に知っておく注意点
「残る側に迷惑をかけた」「使われた側から逃げと思われた」とならないためにも、代行に任せきりにせず、自分で準備しておきたいことがあります。あわせて、サービス選びの前提になる注意点も押さえておきましょう。
- 引き継ぎ資料を用意する:業務手順、取引先の連絡先、使用しているシステム、重要書類の保管場所などをまとめておく。残る人の負担を減らせるうえ、損害賠償を主張されるリスクの低減にもつながる
- 貸与品を返せるようにする:PC・スマートフォン・社員証・制服・健康保険被保険者証などは会社のものなので、出社せずに郵送で返却する(精密機器は破損に注意)
- 私物をまとめておく:会社に残した私物は、あらかじめまとめておくと着払いなどで受け取りやすい
- 離職票の受け取り:転職や失業給付に必要になるため、発行を依頼し、郵送で受け取れるよう正確な住所を伝えておく
- 有給休暇の残日数を確認し、代行業者に伝えておく
もう一つ重要なのが、運営元によってできることが違う点です。会社との交渉が必要かどうかで選ぶサービスが変わります。
| 運営元 | できること |
|---|---|
| 民間業者 | 退職の意思を会社へ伝える(連絡の代行)まで。有給や退職日などの交渉はできない |
| 労働組合 | 団体交渉権に基づき、退職の意思伝達に加えて有給消化・退職条件などの交渉ができる |
| 弁護士 | 交渉に加え、未払い賃金・残業代の請求やハラスメントの慰謝料請求、裁判手続きまで対応できる |
有給消化や未払い残業代の交渉が必要なら、交渉権のない民間業者では対応できず、労働組合または弁護士が運営するサービスを選ぶ必要があります。民間業者が報酬を受け取って交渉を他者に任せる形は、弁護士法第72条が禁じる非弁行為にあたり得るとも指摘されています。運営元ごとの詳しい選び方や費用の目安は、以下の記事で解説しています。
自力で言えない時の選択肢
罪悪感や恐怖でどうしても自分から言い出せないなら、退職代行は現実的な選択肢の一つです。多くのサービスは無料相談やLINEでの相談に対応しており、いきなり契約せずに「自分のケースで依頼できるか」を確かめるところから始められます。
進め方としては、まず無料相談で状況を伝え、自分のケースが対応可能かを確認します。会社との交渉(有給消化や未払い分の請求など)が想定されるなら、交渉できる労働組合または弁護士が運営するサービスを選ぶ、という点だけ押さえておけば十分です。
退職の意思表示を任せられると、上司にどう切り出すかを一人で思い悩む時間から離れられます。その分のエネルギーを、有給消化の段取りや次の仕事探し、心身の回復といった前向きな準備に向けやすくなります。まずは相談だけでも、気持ちが軽くなり、次にやるべきことが具体的に見えてきます。
よくある質問
Q. 退職代行を使うのは本当に非常識ですか?
マナーや価値観の面で「非常識だ」と感じる人がいるのは事実ですが、法律上は退職の自由(民法第627条)という正当な権利に基づく手段で、違法でも契約違反でもありません。引き継ぎ資料の用意など残る人への配慮をすれば、後ろめたさを過度に抱える必要はないでしょう。
Q. 退職代行を使われた側(会社や同僚)に迷惑はかかりませんか?
引き継ぎがないまま辞めると負担が生じる場合があります。だからこそ、業務手順や取引先情報をまとめた引き継ぎ資料を残し、貸与品を返却する準備をしておくことが大切です。最低限の配慮をしておけば、迷惑を最小限に抑えられます。
Q. 「クズ」「逃げ」と思われそうで不安です。
そう感じるのは、退職を自分で伝えるべきという従来型の価値観からくるものです。心身が限界に近い、ハラスメントがある、退職を受理してもらえないといった状況では、自分を守るための正当な選択です。健康を損なう前に環境を離れることを優先してよい場面もあります。
Q. どの退職代行を選べばいいですか?
会社との交渉が不要で「とにかく辞めたい」だけなら民間業者でも対応できますが、有給消化や未払い賃金の交渉が必要なら、交渉権のある労働組合または弁護士が運営するサービスを選びます。詳しい比較は関連記事を参考にしてください。
まとめ
退職代行は、マナー面で意見が分かれることはあっても、法律上は退職の自由に基づく正当な手段で、非常識と決めつける必要はありません。退職を受理してもらえない、ハラスメントがある、心身が限界、言い出せずに消耗している、といった状況に当てはまるなら、罪悪感で我慢し続けるより、選択肢として検討してよいでしょう。
使う際は、引き継ぎ資料の用意や貸与品の返却など最低限の配慮をし、交渉が必要なら労働組合か弁護士が運営するサービスを選ぶことがポイントです。何より優先すべきは、あなた自身の心身の健康です。まずは無料相談で、自分のケースが依頼できるかを確かめるところから始めてみてください。