40代からの経理転職|年齢より効く2つの壁と未経験・経験者別の入口
この記事の要約
40代から経理への転職を考えている方に向けた記事です。年齢を理由に難しいと言われることがありますが、公的な職業情報を見ると経理事務の平均年齢は44歳で、40代はこの職種の中心層にあたります。では壁はどこにあるのか。そこを確認したうえで、未経験の場合は正社員以外の入口も含めた経路を、経験のある場合は会社の規模によって担当範囲が変わるという軸を整理します。資格の扱いについても、公的な記述にそって確認します。
40代の経理転職で壁になるもの

40代から経理を目指すと聞くと、年齢が障害になると受け取られがちです。まず、そこを数字で確認しておきます。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によれば、経理事務の平均年齢は44歳です。就業者数は1,523,600人で、平均年収は512.2万円、労働時間は月159時間となっています。
経理事務は、40代がこの職種の中心層にあたります。年齢が上がるほど珍しくなる職種ではなく、40代はむしろ平均のところに位置します。年齢そのものが応募を弾かれる理由になりにくい、ということです。
(出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「経理事務」。就業者数は令和2年国勢調査、平均年齢・年収・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査)
では壁はどこにあるのか。2つあります。
ひとつは、未経験であることそのものです。経理は前の月の処理が次の月の前提になる仕事で、日次の伝票作成から月次決算、決算期の財務諸表作成までが積み重なります。この流れを一度も回したことがない状態と、何年か回してきた状態の差は、年齢とは別の軸で評価されます。
もうひとつは、応募先の数です。同じ job tag のデータで、経理事務の有効求人倍率は0.59です。求職者の数に対して求人の数が少ない側の職種にあたります。
つまり、40代の経理転職で対策すべきなのは年齢ではありません。未経験という状態をどう埋めるか、そして少ない枠にどう届くかです。
40代から正社員を目指す場合の全体の流れと、職種の選び方については、以下の記事で整理しています。
未経験なら正社員以外の入口も見る
未経験から経理に入る場合、正社員の求人だけを見ていると候補が狭くなります。job tag の就業形態の内訳を見てください。
| 就業形態 | 構成比 |
|---|---|
| 正規の職員・従業員 | 72.7% |
| パートタイマー | 16.4% |
| 派遣社員 | 10.9% |
(出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「経理事務」)
正規職員が7割強を占めますが、パートタイマーと派遣社員をあわせるとおおよそ4分の1にあたります。正社員に絞ると、その部分は最初から候補に入りません。
各値は合計が100%を超えます(区分の重複によるもの)。正確な内訳としてではなく、正規以外の働き方が一定の比重を占めているという傾向として読んでください。
ここで考えたいのが順序です。未経験のまま正社員の枠を狙い続けるのか、それとも派遣やパートで実務に入り、そこから正社員を目指すのか。
後者を選ぶ場合の理屈は単純です。経理の選考で見られるのは、決算のどこまでを回したことがあるかです。半年でも1年でも実務を通せば、次の応募では「未経験」ではなくなります。job tag が示す仕事の内容のうち、日次の伝票作成や入出金の処理から入って、月次決算に関わるところまで届けば、応募できる求人の幅が変わります。
紹介予定派遣という形もあります。一定期間の派遣を経て、双方が合意すれば直接雇用に切り替わる仕組みです。ただし、切り替わることが保証されているわけではありません。求人票に紹介予定派遣と書かれている場合は、直接雇用に移った実績があるかを面談で確認してください。
派遣やパートが正社員より劣る働き方だという話ではありません。収入や契約期間の条件は変わるので、そこを含めて選ぶ話になります。ただ、未経験という状態を実務経験に変える経路として見ると、正社員の枠だけを見るより現実的な場合があります。
経験者は会社の規模で見る
すでに経理の経験がある場合、40代の応募で見られるのは経験の年数だけではありません。何をどこまで一人で回してきたかです。
同じ経理という職種でも、会社の規模で仕事の形が変わります。
| 分業されている会社 | 少人数で回す会社 | |
|---|---|---|
| 担当範囲 | 売掛金、買掛金、給与など工程ごとに分かれる | 日次から決算まで通して担当する |
| 深さ | 担当する工程を深く扱う | 全体の流れを把握する |
| 40代での評価 | 特定領域の専門性 | 決算を通せることそのもの |
| 弱くなりやすい点 | 範囲の外の工程は経験が薄くなる | 一つの工程を深く掘る時間が取りにくい |
大きい会社で工程ごとに分かれた経理を担当してきた場合、決算を通した経験が薄いことがあります。逆に少人数の会社で決算まで回してきた場合、範囲は広いものの、連結決算や開示のような規模固有の業務は未経験ということがあります。
40代の応募では、この違いが噛み合うかが問われます。応募先が求めているのは工程の専門性なのか、決算を通せる人なのか。求人票の業務内容に「月次決算」「年次決算」「連結」「開示」のどこまでが書かれているかで、求めている側が見えます。
なお、決算まで一人で回す形の求人は、未経験の方には勧めません。引き継ぎが十分でないまま責任を負う状況になりやすいためです。経験のある方にとって裁量の大きい選択肢になりうる、という話です。
経理・財務の経験者が実績をどう言語化するか、面接で何を聞かれるかについては、以下の記事で整理しています。
資格は必須ではない
経理を目指すとき、簿記の資格を取ってからでないと応募できないと考える方がいます。まず公的な記述を確認します。
job tag は経理事務について、就業するにあたり「特に学歴や資格は必要とされない」としています。そのうえで「『日商簿記検定』、『簿記能力検定』があり、取得していると仕事の役に立つ」と記載しています。
つまり応募の条件として必須のものはなく、あると業務で役に立つという位置づけです。学歴構成も大卒63.6%、高卒25.5%、専門学校卒12.7%、短大卒9.1%と幅があります。
そのうえで、日商簿記2級がどういう試験なのかを見ておきます。日本商工会議所は2級の出題範囲を「高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)」とし、「財務諸表の数字から経営内容を把握できる」水準として説明しています。試験方式には統一試験とネット試験があります。
工業簿記と原価計算を含む範囲なので、業務のあいだに独学で進める場合、まとまった時間の確保が要ります。仕事と家庭の時間が固まっている40代では、いつどれだけ充てられるかを先に見積もってから始めるほうが、途中で止まりにくくなります。
順序としては、資格を取り終えてから応募を始めるのか、応募と学習を並行するのかを決めておくことになります。必須ではないので、応募を止める理由にはなりません。
求人票と面接で確認すること

ここまでの内容を、応募前に確かめる項目としてまとめます。
| 確認すること | なぜ見るのか |
|---|---|
| 雇用形態と登用の実績 | 派遣・紹介予定派遣の場合、直接雇用に移った実績があるか |
| 担当範囲 | 日次までか、月次決算までか、年次決算まで含むか |
| 経理の人数 | 何人で回している部署か。一人で担当する形になるのか |
| 使用しているシステム | 会計ソフトの種類。前職と違う場合は覚え直しが発生する |
| 教育体制 | 未経験の場合、誰が何をどのくらいの期間で教えるのか |
| 繁忙期の勤務 | 決算期の残業と休日出勤の実態 |
このうち求人票から読み取りにくいのが、経理の人数と教育体制です。業務内容の欄には担当範囲が書かれていても、それを何人で分担しているかまでは書かれないことが多くあります。面接で聞く項目として用意しておいてください。
社内の体制について事前に知りたい場合は、管理部門に特化した転職サービスを使う方法もあります。MS-Japanは、株式会社MS-Japanが運営する管理部門と士業に特化した転職サービスです。対応領域に経理・財務があり、ほかに人事、総務、法務、経営企画、内部監査、情報システム、および弁護士・公認会計士・税理士などの士業を扱っています。扱う雇用形態は無期雇用および4か月以上の有期雇用です。キャリア相談から求人の紹介、応募書類の添削、面接対策、給与交渉、入社後の職場環境や労働条件に関する助言までを行い、利用は無料です。
使いどころは、求人票に出てこない部分を聞ける点にあります。経理が何人の部署なのか、決算のどこを任される想定なのか、前任者がいるのかといった話は、応募者から直接聞きにくいところです。
よくある質問
Q. 40代未経験でも経理に転職できますか?
年齢が理由で弾かれる職種ではありません。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によれば経理事務の平均年齢は44歳で、40代はこの職種の中心層です。ただし有効求人倍率は0.59で、求職者に対して求人が少ない側にあたります。壁になるのは年齢より、未経験という状態と応募先の数です。派遣やパートで実務に入る経路も含めて考えると、選択肢が広がります。
Q. 簿記の資格は必須ですか?
必須ではありません。job tag は経理事務について、就業するにあたり「特に学歴や資格は必要とされない」としています。そのうえで日商簿記検定と簿記能力検定を「取得していると仕事の役に立つ」ものとして挙げています。応募を止める理由にはならないので、応募と学習を並行する進め方もできます。
Q. 派遣から正社員になれますか?
紹介予定派遣という形があります。一定期間の派遣を経て、双方が合意すれば直接雇用に切り替わる仕組みです。ただし切り替わることが保証されているわけではありません。求人票に紹介予定派遣と書かれている場合は、直接雇用に移った実績があるかを面談で確認してください。派遣で実務を通した期間は、次の応募で未経験ではなくなるという意味も持ちます。
Q. 経理経験者が40代で転職する場合、何を見られますか?
経験の年数だけでなく、何をどこまで一人で回してきたかです。工程ごとに分業された会社で特定領域を深く扱ってきたのか、少人数の会社で決算まで通してきたのかで、評価される内容が変わります。応募先が求めているのがどちらかは、求人票の業務内容に「月次決算」「年次決算」「連結」「開示」のどこまで書かれているかで見当がつきます。
Q. 一人経理の求人はどう判断すればよいですか?
経験の有無で判断が分かれます。決算まで通した経験がある方にとっては、裁量が大きく、自分の判断で進められる環境になりえます。一方、未経験から入る場合は、引き継ぎが十分でないまま責任を負う状況になりやすいため勧めません。求人票では経理の人数と前任者の有無を確認し、書かれていなければ面接で聞いてください。
まとめ
40代から経理を目指すうえで押さえておきたいのは、次の3点です。
第一に、壁は年齢ではありません。job tag によれば経理事務の平均年齢は44歳で、40代はこの職種の中心層にあたります。対策すべきなのは、未経験という状態と、有効求人倍率0.59という応募先の少なさです。
第二に、未経験の場合は正社員以外の入口も候補に入れてください。就業形態はパートタイマー16.4%、派遣社員10.9%で、正規以外が一定の比重を占めます。実務を半年でも通せば、次の応募では未経験ではなくなります。
第三に、経験がある場合は会社の規模で仕事の形が変わることを前提に見てください。工程ごとに分業された会社と、決算まで少人数で回す会社では、評価される経験が違います。求人票の業務内容にどこまで書かれているかで、求めている側が見えます。
応募前にできることを1つ挙げるなら、求人票の業務内容を読んで、担当範囲が日次までか決算まで含むかを確かめることです。ここが決まると、自分の経験が噛み合うかも、教育体制について何を聞けばよいかも決まります。