医学物理士・遺伝カウンセラーの求人|求人サイトで見つからない理由と探し方
この記事の要約
医学物理士と認定遺伝カウンセラーは、求人サイトで探すという前提が成り立たない職種です。募集は認定団体の求人情報ページと、施設が自前で出す採用ページに掲載されます。しかも公開範囲が職種によって違い、片方は誰でも見られる一方、もう片方は詳細を会員だけが閲覧する形になっています。この記事では、求人の出どころ、資格要件の違い、そして制度上の配置要件から応募先を逆算する方法を整理しました。
求人が見つからないのはなぜか

放射線治療の現場で装置の品質管理や照射計画に関わっていると、医学物理士という職種が視界に入ってきます。あるいは遺伝子検査に関する説明の場に立ち会って、遺伝カウンセラーという仕事を知ることもあります。関心を持って求人サイトを開いてみると、しかし、思っていたような結果は出てきません。
医学物理士で検索すると、出てくるのは個別の病院の募集要項や大学の医局員募集で、一覧としてまとまっていません。遺伝カウンセラーで検索すると、臨床心理士や遺伝子検査の営業といった別の職種が混ざって並びます。求人の数が少ないのか、探し方が悪いのか、そこから判断がつきません。
この記事が対象にしているのは、診療放射線技師など放射線治療に関わっていて医学物理士への移行を考えている方と、医療職や生物系・心理系の学部を出て遺伝医療に関心を持っている方です。どちらも同じ壁にぶつかります。その壁の正体は、求人が少ないことではなく、求人が載る場所が違うことです。
医療系の求人サイトやエージェントの選び方、職種ごとの探し方の全体像は、以下の記事で整理しています。
求人はどこに掲載されるか
この2職種の求人が載る場所は3つあります。認定団体や学会の求人情報ページ、施設が自前で出す採用ページ、そして自治体や独立行政法人の採用試験の情報です。総合求人サイトを見続けても見つからないのは、そもそも掲載先が違うためです。順に見ていきます。
認定団体と学会の求人情報ページ
医学物理士側から見ていきます。一般財団法人日本医学物理士会の求人情報ページは誰でも閲覧できる公開ページで、大学や大学病院、自治体病院、がんセンター、国立病院機構、日本赤十字社の医療センター、公的研究機関といった多様な主体の募集が並びます。掲載ページには、応募前に各施設の情報を確認するよう案内が添えられています。
このページで注目したいのが職名の書かれ方です。「医学物理士」として募集しているものだけでなく、「診療放射線技師(医学物理士)」という形で、技師の採用枠に医学物理士の資格要件を付けた募集も出ています。技師として採用されて医学物理の業務を担う形が実在するということです。
もしあなたが診療放射線技師として働いているなら、このページは今日から見られます。どんな施設がどんな雇用形態で募集しているかを先に確かめてから、大学院に進むかどうかを検討できます。順序を逆にすると、学位を取ってから選択肢の狭さを知ることになります。
一方、認定遺伝カウンセラー側は事情が違います。一般社団法人日本認定遺伝カウンセラー協会も求人情報を扱っており、会員向けに求人情報の掲載とメーリングリストでの配信を無料で行っていると記載されています。ただし、詳細な求人情報を閲覧できるのは会員のみとされています。一覧ページで分かるのは募集元の名称と所在地程度で、職種や雇用形態の中身は会員専用ページに入らないと見えません。
医学物理士側は誰でも求人情報を閲覧できるのに対し、認定遺伝カウンセラー側は詳細が会員限定です。認定資格の取得者は原則としてこの協会に加入するという前提で運用されているため、資格を取るまで募集の中身が見えにくい構造になっています。
とはいえ、資格取得前に手がかりがないわけではありません。一覧ページに表示される募集元からは、大学病院、国立の研究機関、そして検査を扱う企業まで含まれることが読み取れます。また「修了見込可」と付記された募集もあり、養成課程を修了する見込みの段階から応募できる枠が存在することも分かります。
施設が自前で出す採用ページ
募集要項を自院のサイトにしか掲載しない施設もあります。認定団体のページに出ていないからといって、その施設が採用していないとは限りません。
志望する施設がすでに決まっているなら、こちらのほうが確実です。がん専門病院や大学病院のように放射線治療や遺伝診療の部門を持つ施設を数か所リストにして、採用情報のページを定期的に見る形にしておくと、募集が出たときに動けます。
自治体や独立行政法人の採用試験
自治体病院や独立行政法人の場合、募集が中途採用ではなく採用試験という形をとることがあります。年に1回や随時といった実施の仕方が決まっていて、応募の手順も日程も民間の中途採用とは違います。
この情報は各機関の採用情報のページに出るため、認定団体の求人情報だけを見ていると気づけません。公務員の採用試験情報をまとめたサイトで職種名を登録しておく方法もあります。
2つの職種の仕事内容
同じ「希少な専門職」として並べられますが、扱うものはまったく違います。片方は放射線という物理量を、もう片方は遺伝情報と患者の意思決定を扱います。
医学物理士
医学物理士認定機構は、医学物理士を「放射線を用いた医療が適切に実施されるように、医学物理の専門家としての役割を業務とする医療職」と定義しています。
日々の業務は、診療報酬の施設基準に書かれた担当区分から読み取れます。基準は「放射線治療における機器の精度管理、照射計画の検証、照射計画補助作業等を専ら担当する者」という枠を設けており、この枠が医学物理士の仕事の輪郭にあたります。装置が設計どおりの線量を出しているかを測って確かめ、患者ごとに立てられた照射計画が意図した線量分布になっているかを検証し、計画の作成を支える。治療そのものを行う医師や、照射を担当する技師とは別の位置から、精度を担保する役割です。
認定遺伝カウンセラー
遺伝性の疾患や遺伝子検査について、患者と家族が自分で決められるように支援する職種です。
がんゲノム医療の現場での位置づけは、厚生労働省の指針から読み取れます。指針は、遺伝子パネル検査の結果を医学的に解釈するための多職種による検討会をエキスパートパネルと呼び、月1回以上の開催を求めています。その構成員に「遺伝医学に関する専門的な遺伝カウンセリング技術を有する者」を1名以上含めることが要件です。加えて、遺伝子パネル検査の二次的所見として生殖細胞系列の変異が見つかった場合の対応方針を明文化しておくことも求められています。
つまり、検査結果が出た後に患者と向き合うだけでなく、検討会に加わって結果の解釈に関与し、二次的所見という重い情報をどう伝えるかという設計にも関わる仕事だということです。
資格要件はどちらも学位が前提
どちらの職種も、働きながら資格だけを取るという道は用意されていません。公式に示されている経路は、いずれも認定教育コースの修了か学位の取得を前提にしています。
医学物理士の入口
医学物理士認定機構は、目指す方への案内として4つの教育経路を示しています。
- 認定機構が認定する医学物理教育コースを修了する
- 理工学系の修士または博士の学位を取得する
- 放射線技術系の修士または博士の学位を取得する
- 認定機構が認定するもの以外の医学物理教育コースで修士もしくは博士の学位を取得する
このうち、認定機構が認定する教育コースの修了者は、新規認定において優遇措置を受けられるとされています。そして認定を受けるには、認定試験に合格するだけでなく、業績基準を満たし、定められた臨床研修と業績点を積む必要があります。試験に受かれば終わりという構造ではありません。
年間の日程も押さえておきましょう。2026年度は8月3日から8月19日が出願期間で、試験日は2026年10月3日です。逆算して準備を進めるための目安になります。
受験資格の細かい区分は出願要項に記載されているため、準備を始める段階で最新の要項を確認してください。過去には理工学系の学士と実務経験の組み合わせによる出願区分がありましたが、要件は改定されています。古い情報のまま進路を決めないことが大切です。
認定遺伝カウンセラーの入口
認定遺伝カウンセラーは、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同認定する資格です。平成17年4月1日に正式にスタートしました。
受験資格は、制度委員会が認定した養成専門課程のある大学院を修了し、修士の学位を持っていることです。養成課程では、人類遺伝学・遺伝医学、カウンセリングの理論と技法、遺伝医療と倫理、遺伝医療と社会といった内容を、座学・実習・研究を通して学びます。修了と同時に受験資格を得られる仕組みです。
もう1つ条件があります。受験を申請する時点で、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会のいずれかの会員歴が2年以上になっている必要があります。大学院に入ってから学会に入るのでは間に合わない可能性があるため、入学の段階で会員になっておく必要が出てきます。
試験は年1回で、筆記試験はCBT形式、あわせて面接試験としてロールプレイが課されます。資格は5年ごとに更新申請を行います。
どちらの職種も、大学院に通う期間の費用と、その間の収入の空白が発生します。求人がどこにどれくらい出ているかを確かめる前に進学を決めると、修了後に選択肢が想定より狭いと分かったときに引き返しにくくなります。求人情報を先に見ておくことをおすすめします。
求人が出る施設の条件

この2職種の求人は、施設が制度上の配置要件を満たす必要があるところに出ます。裏を返せば、施設の条件から応募先を逆算できるということです。
放射線治療の施設基準
診療報酬の施設基準は、放射線治療のいくつかの加算について「放射線治療における機器の精度管理、照射計画の検証、照射計画補助作業等を専ら担当する者(診療放射線技師その他の技術者等)が1名以上配置されていること」と定めています。
ここで注意したいのが、条文が直接「医学物理士」と書いているわけではないという点です。この「その他の技術者」が何を指すのかは、厚生労働省の疑義解釈で示されています。平成30年3月30日の事務連絡は、遠隔放射線治療計画加算、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療加算、体外照射呼吸性移動対策加算、定位放射線治療、定位放射線治療呼吸性移動対策加算、粒子線治療、画像誘導密封小線源治療加算の施設基準に掲げる「その他技術者」について、「医学物理士」を指すと回答しています。令和2年3月31日の事務連絡でも同趣旨の回答があり、こちらは対象に粒子線治療医学管理加算を加えたうえで「医学物理士等」としています。
したがって、これらの治療を実施して加算を算定している施設が、応募先の候補になります。強度変調放射線治療や定位放射線治療、粒子線治療を行っている施設を調べれば、その施設には配置が必要な枠があると見当がつきます。求人が出ていない時期でも、候補としてリストにしておく価値があるということです。
なお、この担当者は外来放射線照射診療料および医療機器安全管理料2における技術者との兼任ができないとされています。1人が複数の役割を兼ねて済ませられない領域があるという意味で、これも配置の必要性を支えています。
がんゲノム医療の指定要件
遺伝カウンセリング側の配置要件は、厚生労働省の「がんゲノム医療中核拠点病院等の整備に関する指針」に定められています。
指針は、がんゲノム医療中核拠点病院の診療従事者要件として、遺伝カウンセリング等を行う部門に「遺伝医学に関する専門的な遺伝カウンセリング技術を有する者が1名以上配置されていること」を求め、さらにそのうち少なくとも1名はエキスパートパネルの構成員であることとしています。がんゲノム医療拠点病院にも同様の要件があります。
指定されている施設の数を見ておきましょう。2026年8月1日時点で、がんゲノム医療中核拠点病院は13施設、がんゲノム医療拠点病院は32施設、がんゲノム医療連携病院は258施設(うちエキスパートパネル実施病院は43施設)です。一覧は毎月更新されています。
| 区分 | 施設数 |
|---|---|
| がんゲノム医療中核拠点病院 | 13施設 |
| がんゲノム医療拠点病院 | 32施設 |
| がんゲノム医療連携病院 | 258施設 |
ここでも書き方に注意が必要です。指針が求めているのは「遺伝医学に関する専門的な遺伝カウンセリング技術を有する者」であって、「認定遺伝カウンセラー」という資格名を名指ししているわけではありません。医師や看護師がこの役割を担う場合もあります。したがって、中核拠点病院と拠点病院を合わせた施設数がそのまま認定遺伝カウンセラーの求人の数になるわけではありません。それでも、配置が制度上の要件になっている部門が全国のどこにあるかは、この一覧から確かめられます。
制度の定めが職域を決めるという構造は、この2職種に限りません。法改正によって働ける場所が広がった職種の例として、以下の記事も参考になります。
人数と地域の偏り
どちらの職種も人数が少なく、しかも都市部に偏っています。転職先がある地域と自分が住みたい地域が一致しない可能性を、先に見ておく必要があります。
医学物理士認定機構が公表している在籍状況によると、2026年4月30日現在の在籍医学物理士は1,593名です(うち海外3名)。都道府県別に見ると、東京都231名、大阪府129名、愛知県125名、神奈川県96名、千葉県79名と続きます。一方で、秋田県4名、鳥取県6名、高知県6名、宮崎県6名といった県もあります。
この開きは、そのまま選択肢の広さの差です。東京都には200名を超える人が在籍していて、それだけの数の椅子が存在しているということになります。秋田県で4名という状況では、席が空くのを待つという発想自体が現実的ではありません。地域を動かずに転職するのか、職種を優先して地域を動かすのかを、早い段階で考えておくことになります。
年代の構成も見ておきましょう。40代が629名、30代が541名で、この2つの年代が中心です。20代は97名にとどまります。新卒でいきなり就く職種ではなく、学位を取ってから、あるいは他の職種を経てから入ってくる構造になっているということです。30代で検討を始めても遅くはありません。
認定遺伝カウンセラーはさらに人数が少なく、制度委員会の公表では2026年4月現在で456名です。医学物理士のおよそ3分の1にあたります。都道府県別の分布は公表が確認できませんでしたが、配置が要件になっているがんゲノム医療の中核拠点病院と拠点病院がどこにあるかを調べると、活動の場が集まっている地域の見当はつきます。
人数の少なさは、2つの読み方ができます。席が空きにくいという意味と、いったん入れば代わりのきかない立場になるという意味です。どちらも事実で、共通して言えるのは、求人が常に出ているわけではないということです。だからこそ、情報源を定期的に見ておいて、出たときに動けるようにしておく必要があります。
企業や行政という選択肢
応募先は病院だけではありません。医療機器メーカー、検査を受託する企業、独立行政法人や自治体の採用にも、この2職種の枠があります。
医学物理士側では、放射線治療の臨床経験を持つ人材を医療機器メーカーが求める形があります。日本医学物理士会の求人情報にも、公的研究機関からの募集が掲載されてきました。認定遺伝カウンセラー側でも、協会の求人一覧に検査を扱う企業や国立の研究機関が募集元として並びます。病院の中で臨床に関わるか、装置や検査を提供する側に回るかという分岐があるということです。
行政と独立行政法人のルートも押さえておきましょう。自治体病院や独立行政法人の場合、募集が中途採用ではなく採用試験という形をとることがあります。応募の手順も日程も病院の中途採用とは違うため、志望するなら各機関の採用情報ページを直接見る必要があります。医薬品医療機器総合機構のような規制側の機関が、医学物理の実務経験を条件に技術系の職員を募ることもあります。
企業側の求人にアクセスする手段として、専門職を扱う転職サービスがあります。
JACリクルートメント
JAC Recruitment Co., Ltd. が運営する、ハイクラス層を対象とした転職支援サービスです。外資系企業や日系グローバル企業への転職を強みとして掲げており、業界としては製造業、金融、IT、医療など幅広く対応しています。
このサービスを挙げる理由は、「メディカル・バイオ」職種および「メディカル(医薬品・CRO・医療機器)」業種として専門チームを配置していると公式サイトに明記されている点にあります。医療機器メーカーや、検査を受託する企業への転職を考える場合、その領域を担当するコンサルタントと話せることになります。複数の専門コンサルタントが連携して提案する体制をとっているとされ、利用は無料です。
ただし、このルートには線引きがあります。こうしたサービスに病院側の求人が載っているとは限りません。大学病院や自治体病院のポストを志望するなら、主戦場はやはり学会の求人情報ページと施設の採用ページです。企業ルートは選択肢を広げる手段であって、病院ルートの代わりにはなりません。
よくある質問
Q. 医学物理士になるには診療放射線技師の資格が必要ですか?
認定機構が示している教育経路は学位や認定教育コースの修了に基づくもので、診療放射線技師の免許そのものは認定の要件として挙げられていません。ただし施設側が募集要項で両方を求めることはあり、実際に「診療放射線技師(医学物理士)」という職名の募集も出ています。応募先によって求められるものが変わると考えてください。
Q. 働きながら資格を取れますか?
どちらの職種も、公式に示されている経路は認定教育コースの修了か学位の取得を前提にしているため、通学と仕事を両立できるかが分かれ目になります。医学物理士側は認定機構が認定する教育コースの修了者に新規認定の優遇措置があるため、まずどのコースが通える範囲にあるかを調べるところから始めるのが現実的です。
Q. 地方でも求人はありますか?
在籍する医学物理士が1桁台の県もあり、地域差は大きいのが実態です。ただし、強度変調放射線治療や定位放射線治療といった配置が要件になる治療は全国の施設で行われているため、地域名で求人を探すより、そうした治療を実施している施設を調べて候補にするほうが確実です。
Q. 認定遺伝カウンセラーの求人はどこで見られますか?
日本認定遺伝カウンセラー協会が求人情報を扱っていますが、詳細を閲覧できるのは会員のみとされています。資格取得前の段階では、がんゲノム医療の指定病院の一覧を手がかりに、施設の採用ページを個別に確認する方法が実際的です。一覧ページには募集元の名称と所在地は表示されるため、どこが動いているかの見当はつきます。
Q. 病院以外の就職先はありますか?
あります。医療機器メーカー、検査を受託する企業、国立の研究機関、独立行政法人や自治体の採用に枠があります。認定団体の求人情報ページにも、こうした主体からの募集が掲載されています。
まとめ
医学物理士と認定遺伝カウンセラーの求人について、要点を振り返ります。募集は認定団体の求人情報ページと施設の採用ページに出るため、総合求人サイトを見続けても見つかりません。公開範囲は職種で違い、医学物理士側は誰でも閲覧できる一方、認定遺伝カウンセラー側は詳細が会員限定です。資格はどちらも認定教育コースの修了か学位の取得が前提で、認定遺伝カウンセラーは学会会員歴2年以上という条件も加わります。そして求人が出る施設は、診療報酬の施設基準やがんゲノム医療の指定要件という制度側の条件で決まります。
今日できることを1つ挙げるなら、日本医学物理士会の求人情報ページを開いて、掲載されている施設の所在地と雇用形態を書き出してみてください。常勤か有期か、大学か自治体病院か、という並びを見るだけで、自分が想定していた進路がどれくらい現実的かが分かります。