助産師の求人はどこにあるか|夜勤をやめたときに年収から減る額
この記事の要約
助産師の求人を探すと地域別の一覧が並びますが、施設ごとに何が違うのかは求人サイトからは読み取れません。この記事では就業場所別の統計をもとに、病院・診療所・助産所・市区町村それぞれで働く助産師の人数と働き方の違いを整理します。あわせて、夜勤と時間外をやめた場合に年収から何がいくら減るのかを賃金統計の内訳から示し、産婦人科クリニックの募集要項で確認する項目と、助産師に対応した相談先をまとめます。
助産師の求人が少なく見える理由
助産師の求人を検索すると、出てくるのは地域別の一覧です。希望する地域に絞ると候補が数件しかなく、条件の合うものが見つからないまま検索条件を広げていく、ということが起こります。同じ免許を持っているのに、通える範囲では選べるほどの数がない状態です。
これは探し方の問題というより、分娩を扱う施設そのものが減っていることの反映です。厚生労働省の検討会資料によると、分娩を取り扱う病院と診療所の合計は平成8年の3,991施設から令和5年には1,766施設になりました。約30年で半分以下です。同じ期間に出生数も1,206,555人から727,288人へ減り、令和6年は686,173人でした。
施設数には地域差もあります。同じ資料では、分娩を取り扱う医療機関は東京都が147施設と最も多く、最も少ない高知県では9施設で、多くの都道府県で減少しているとされています。助産師の人数そのものにも偏りがあり、令和6年衛生行政報告例では人口10万人当たりの就業助産師数は全国31.3に対し、島根県が51.4で最も多く、埼玉県が22.6で最も少なくなっています。
一方で、助産師の総数は減っていません。同じ調査で令和6年末の就業助産師は38,721人で、令和4年から658人(1.7%)増えています。つまり「働く人は増えているのに、分娩を扱う施設は減っている」という状況で、募集が出る場所が絞られているわけです。だからこそ、どの種類の施設にどれだけの助産師がいるのかを知っておくと、探す範囲を自分で設計できます。
就業先の分布と働き方の違い
助産師の就業先は統計上いくつかに分かれていて、人数の規模は病院と保健所で50倍以上の開きがあります。令和6年末現在の就業場所別の実人員は次のとおりです。
| 就業場所 | 実人員 | 構成割合 |
|---|---|---|
| 病院 | 23,054人 | 59.5% |
| 診療所 | 8,672人 | 22.4% |
| 助産所 | 2,905人 | 7.5% |
| 市区町村 | 1,689人 | 4.4% |
| 看護師等学校養成所又は研究機関 | 1,534人 | 4.0% |
| 保健所 | 435人 | 1.1% |
病院・診療所・助産所の3つで89.4%を占めます。就業先がこの3つに集中しているのは、助産師の業務が法律で限定されているためです。保健師助産師看護師法の第3条は助産師を「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義し、第30条で「助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない」と定めています。医師法に基づいて行う場合を除き、この業務は助産師だけが担えます。
助産という業務が置かれている場所は、分娩や妊産婦のケアを行う施設です。したがって求人も、その機能を持つ施設から出てきます。ここが看護師と異なる点で、看護師のように介護保険施設や訪問看護へ広く分散する構造にはなっていません。
なお雇用形態は正規雇用が80.2%(31,073人)、非正規雇用が19.6%(7,572人)、派遣が0.2%(76人)です。年齢階級別では25〜29歳が6,115人(15.8%)で最も多くなっています。
以下では、実人員で8割を占める病院と診療所について、働き方がどう違うのかを見ていきます。
病院
実人員23,054人で最も多い就業先です。常勤換算数でも22,002.1人(62.8%)と、実人員の構成割合より高くなります。常勤で働く人の比率が他の就業先より高いことを示しています。
分娩に加えて産科病棟や外来を担当する体制が組まれるため、勤務は交代制になりやすく、夜勤が入ります。規模が大きいぶん助産師が複数在籍し、分娩の対応を分担できる一方、病棟業務や委員会活動など分娩以外の業務も担うことになります。
診療所(産婦人科クリニック)
実人員8,672人で2番目に多い就業先です。常勤換算数は7,565.3人(21.6%)で、実人員の構成割合22.4%をわずかに下回ります。
規模が小さいため、助産師1人が担当する範囲は広くなりやすく、外来の対応や物品管理まで含まれることがあります。加えて、分娩を取り扱うかどうかで勤務の組み立てが変わります。
夜勤をやめると年収はどう変わるか

夜勤と時間外をやめると、助産師の年収からは年間で数十万円規模が減ります。これは待遇の良し悪しではなく、給与のどの部分が何に対応しているかという構造の問題です。
賃金構造基本統計調査には、月額の項目が2つあります。「きまって支給する現金給与額」と「所定内給与額」で、前者から時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、宿日直手当、交替手当を差し引いたものが後者です。したがって2つの差が、夜勤や時間外に対応する部分にあたります。
令和7年の同調査で助産師を見ると、きまって支給する現金給与額が389.9千円、所定内給与額が343.9千円です。差は46.0千円で、年換算すると55.2万円になります。年間賞与その他特別給与額988.2千円を加えた年収換算は566.7万円なので、そのうち55.2万円が夜勤・時間外の対応に由来する計算です。
看護師と比べると、この構造がもっとはっきりします。同じ式で看護師の年収は524.7万円で、助産師との差は42.0万円です。この差の内訳を分けると次のようになります。
| 差の内訳 | 年換算の差 |
|---|---|
| 所定内給与額の差 | 12.8万円 |
| 超過労働給与額の差 | 16.0万円 |
| 年間賞与の差 | 13.2万円 |
| 合計 | 42.0万円 |
助産師の年収が看護師より高いといっても、所定内給与額の差は12.8万円にとどまります。残りの29.2万円は、超過労働給与額の差と賞与の差です。言い換えると、助産師の給与面の優位のうち所定内給与で説明できる部分は3割ほどで、大半は夜勤・時間外と賞与から来ています。
ここから分かるのは、「夜勤なしで今より好条件」という求人が構造的に出にくいことです。夜勤を外すと、年収の中で最も大きく効いていた部分が抜けます。求人の提示額が今より高く見えても、その額が夜勤を含む前提なのかどうかで実際の手取りは変わります。
もしあなたが夜勤の負担を減らしたいなら、求人の給与欄を見る前に、いまの給与明細で夜勤手当と時間外手当が月いくらかを合計しておいてください。その額が、条件を比べるときの基準線になります。提示額から基準線の分が消えても納得できるかどうかが判断の軸で、これは求人票の数字だけを見ていても決められません。
夜勤の体制そのものをどう読むか、給与の提示額を基本給や各種手当に分解する手順は、看護職に共通する見方です。自分の基準線を出したうえで求人票を読む段では、次の整理が使えます。
産婦人科クリニックの求人の見方
産婦人科の診療所は、分娩を取り扱うかどうかで仕事の中身と拘束が変わります。同じ「産婦人科クリニックの助産師」という募集でも、この一点で日々の働き方が別のものになるため、まずここを確認します。
産婦人科を掲げる診療所のすべてが分娩を扱うわけではありません。妊婦健診や婦人科の外来を中心にして分娩は扱わない診療所があり、この場合は夜間の分娩対応がないぶん、勤務を日勤中心に組みやすくなります。分娩を扱う施設が減っている一方で、この形の診療所は残っているため、募集要項の記載から見分ける必要があります。
募集要項で見る項目は次の4つです。
- 分娩を取り扱っているか
- 分娩待機のオンコールがあるか、ある場合は月あたりの当番回数と手当
- 分娩手当や待機手当が支給されるか、1件あたりいくらか
- 少人数体制で担当する業務の範囲(外来対応、物品や在庫の管理を含むか)
とくに注意したいのが2つめです。分娩を扱う診療所では、交代制の夜勤という形をとらず、自宅待機で呼び出しに応じるオンコールで対応することがあります。この場合、募集要項の勤務時間欄は日勤のみと書かれていても、実際には夜間に呼ばれる可能性があります。「夜勤なし」という表記だけで拘束の有無を判断せず、オンコールの当番がどのくらいの頻度で回ってくるのかを面接で聞いてください。
3つめの分娩手当は、夜勤手当と時間外手当を合計した基準線に関わります。夜勤手当が無くなる代わりに分娩手当が付く場合、1件あたりの額と月の分娩件数の目安を確認すれば、減る分をどこまで埋められるかを見積もれます。件数の目安が示されない場合は、その施設が業務量を説明できる状態にあるかどうかの判断材料にもなります。
4つめは少人数体制に固有の論点です。助産師が1人か2人の診療所では、助産の業務以外に受付や器具の準備が入ることがあります。募集要項の業務内容欄にどこまで書かれているかを見て、書かれていなければ面接で範囲を確認しておくと、入職後のずれを防げます。
助産所と産後ケアという選択肢

病院と診療所以外にも就業先はありますが、人数の規模は小さくなります。就業場所別では助産所が2,905人(7.5%)、市区町村が1,689人(4.4%)、保健所が435人(1.1%)で、病院の23,054人とは1桁から2桁違います。選択肢として知っておく価値はありますが、常に募集が出ている領域ではないという前提で見る必要があります。
助産所は助産師が中心となって運営される場です。ただしこの統計の助産師には助産所の開設者が含まれているため、2,905人の中には雇われて働く助産師と自ら開設した助産師が混在しています。雇用される側の枠はこの数字より小さくなります。助産所を就業先として考える場合、雇われて働くのか、将来的に自分で開くのかで準備するものが変わってきます。
市区町村や保健所での就業は、母子保健の事業に関わる形になります。この領域では産後ケア事業の整備が進められています。厚生労働省の検討会「議論の整理」では、産後ケア事業等の推進について「必要な産婦が利用できるよう、受け皿の拡大、認知度の向上、利用手続きの簡略化を進める」とされ、実施体制は「地域子ども・子育て支援事業」として市町村が計画的に提供体制を整備するものと位置づけられています。
ただし同じ資料では、今後の検討課題として実施内容や提供体制に地域格差があり、その実態を把握して改善方法を検討すべきという指摘も整理されています。方針として受け皿の拡大が掲げられていることと、いま自分の住む自治体に募集があることは別の話です。関心があるなら、自治体の産後ケア事業の実施状況と委託先を調べるところから始めるのが実際的です。
助産所と市区町村を合わせても就業助産師全体の1割強です。分娩を扱う病院や診療所と比べて募集の機会は限られるため、これらを第一候補にすると選択肢が狭くなります。病院・診療所の求人を見ながら並行して調べる、という順序が現実的でしょう。
求人の探し方と相談先
助産師の求人は、対象資格に助産師が含まれる相談先を選ぶと、条件の交渉まで任せられます。求人サイトの一覧を自分で追うだけでは、分娩の取扱いやオンコールの実態といった募集要項に書かれない部分が確認しにくいためです。
まず公的な窓口として、ハローワークでは正社員・パートを含む求人を扱っています。地域の中小規模の診療所や自治体の募集は、民間のサービスに出ていないことがあります。あわせて、通える範囲の病院や診療所の採用ページを直接見る方法も有効です。分娩件数や体制については施設の公式サイトに情報が載っている場合があります。
そのうえで、看護職向けの転職サービスを使うと、施設への確認や条件交渉を代行してもらえます。以下はいずれも対象資格に助産師が明記されているサービスです。
マイナビ看護師
対象資格は看護師、准看護師、保健師、助産師、ケアマネージャーです。求人紹介に加えて、書類添削サービス、面接指導、条件交渉や日程調整の代行、入職後のアフターフォローが提供されています。利用は無料で、対応エリアは47都道府県の全国です。もしあなたが在職中で施設への問い合わせに時間を取れないなら、日程調整の代行がある点が実務的に効きます。
レバウェル看護
対象資格は正看護師、准看護師、助産師、保健師です。特徴は、取材で収集した職場環境の情報を提供している点で、募集要項に書かれていない体制について事前に聞ける可能性があります。求人紹介、面接対策、履歴書作成支援、条件交渉の代行、退職相談に対応し、LINEやメールでの相談もできます。利用は無料で、事業所からの報酬で運営されています。転職を決めていない段階での情報収集だけの相談も可能とされています。
ナース専科 転職
対象資格は看護師、准看護師、保健師、助産師に加えて、認定看護師・専門看護師まで含まれます。対象の幅が他社より広いのが違いです。求人検索は職種、雇用形態、施設形態、都道府県などの条件から行えます。キャリアパートナーが電話で希望条件をヒアリングして求人を紹介し、応募書類の準備から面接対策まで支援します。すべてのサービスを無料で利用できると明記されています。
よくある質問
Q. 助産師の年収はいくらですか?
令和7年の賃金構造基本統計調査から算出すると566.7万円です。ただしこの額には夜勤や時間外に対応する超過労働給与額が年55.2万円分含まれており、勤務形態を変えるとこの部分が変わります。平均年齢は41.2歳、平均勤続年数は9.3年の集団の数値です。
Q. 夜勤のない助産師の求人はありますか?
分娩を扱わない産婦人科の診療所や、市区町村の母子保健の事業など、夜勤のない働き方はあります。ただし助産師の年収のうち年55.2万円が夜勤・時間外に対応する部分なので、提示額を比べる前に自分の給与明細で夜勤手当と時間外手当を合計し、減る分を把握しておく必要があります。
Q. 助産師の仕事はきついですか?
負担の感じ方は人によりますが、統計から言えるのは拘束の量です。助産師の月額のうち46.0千円が時間外・深夜・休日勤務などに対応する部分で、看護師の32.7千円より大きくなっています。加えて分娩を扱う施設では、交代制の夜勤ではなく自宅待機のオンコールという形で拘束が発生することがあります。
Q. 助産師は病院以外でも働けますか?
働けます。令和6年末現在で診療所に8,672人、助産所に2,905人、市区町村に1,689人が就業しています。ただし病院の23,054人と比べると規模が小さく、募集の機会は限られます。助産所の数字には開設者が含まれるため、雇用される枠はさらに小さくなります。
まとめ
助産師の求人が少なく見えるのは、分娩を扱う施設が平成8年の3,991施設から令和5年の1,766施設へ減っているためです。就業先は病院59.5%、診療所22.4%、助産所7.5%に集中していて、これは助産師の業務が保健師助産師看護師法で限定されていることの結果です。
条件を比べるうえで押さえておきたいのは、年収566.7万円のうち55.2万円が夜勤・時間外に対応する部分だという点です。看護師との年収差42.0万円も、所定内給与の差は12.8万円にとどまります。夜勤を減らす選択をするなら、この構造を前提に提示額を読む必要があります。産婦人科の診療所を見るときは、分娩の取扱いとオンコールの当番回数、分娩手当の額を確認してください。
次の一手として、直近の給与明細を1枚出して、夜勤手当と時間外手当の合計額を書き出してみてください。その金額が、求人の提示額を判断するときの基準線になります。