ITベンチャーの求人が絞れない理由と探し方|おすすめサイト5選
この記事の要約
求人サイトで「ベンチャー」と入れても候補が絞れないのは、この語に法令上の定義が無く、社員数百人の会社も創業数年の会社も同じ言葉で自社を説明できてしまうからです。この記事では、設立年・従業員規模・資金調達の段階・事業モデルという4つの事実に置き換えて絞り直す方法、求人票の勤務地と契約と開発体制の記載から自社サービスか客先常駐かを推定する読み方、国税庁のサイトで会社の外形を確かめる手順、そして媒体の型ごとに給与が分かるタイミングが変わることまでを整理します。
「ベンチャー」では絞れない

ITエンジニアとして数年働いてきて、次の職場にITベンチャーを入れようと考えている。転職するかどうかはおおむね決まっていて、止まっているのは探し方のところ。ここから先はITエンジニアの求人を前提にしています。
転職サイトで検索の語に「ベンチャー」を足して、出てきた一覧を上から眺めていく。社員が数百人いて何度も資金調達をしている会社も、創業して2年の会社も、同じ「ベンチャー」という言葉で自社を説明できます。だから残った一覧には、その両方が並びます。
つまずくのは、次の2点です。
1つは、「ベンチャー」という語が会社の規模も設立からの年数も指していないことです。従業員数や設立年で絞り込む項目が用意されているなら、そちらは入力した数字のとおりに絞られます。「ベンチャー」はそういう項目ではなく、会社が自分を説明するために使う言葉です。裁量の大きい少人数の組織を思い描いてこの語を足しても、絞られるのはその語を載せている会社かどうかまでで、規模は絞られません。もう1つは、職種名と使用技術は書かれていても、その仕事が自社のサービスを作るものなのか、受託した案件を担当するものなのか、客先に常駐して進めるものなのかが読み取れない募集があることです。同じ職種名で募集されていても、この3つでは1日の過ごし方も、身につくものも変わります。
絞れない原因は検索の仕方ではありません。「ベンチャー」という語のほうに、絞り込みに使えるだけの中身が無いのです。
「ベンチャー」に定義はない
「ベンチャー」は、確認した範囲では、中小企業基本法のような法令上の定義を持たない呼び名です。だから会社を見る物差しを、この語から別の4つの事実に置き換えます。
参考になるのが中小企業の定義です。中小企業基本法は業種ごとに「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員の数」で中小企業者の範囲を定めており、ソフトウェア業・情報処理サービス業では資本金3億円以下または従業員300人以下が中小企業者にあたります(独立行政法人中小企業基盤整備機構)。従業員20人以下は小規模企業者です。つまり、この範囲の中だけを見ても20人の会社と300人の会社が同じ区分に入り、範囲の外にも「ベンチャー」を名乗る会社があります。「メガベンチャー」という言い方が生まれるほど幅があるのは、そもそも語のほうに線が引かれていないからです。
置き換える4つの事実は次のとおりです。
- 設立年
- 創業からの年数で、制度や仕組みがどこまで整っているかの見当がつきます。人事評価や研修の体系を作るには時間がかかるので、設立から間もない会社ではまだ形になっていない場合があります。
- 従業員規模
- 何人の組織かで、1人が担当する範囲が変わります。もしあなたが裁量の大きさを求めているなら、社名の知名度ではなく従業員規模を条件に入れたほうが、求人の絞り込みは早くなります。
- 資金調達の段階
- 外部から資本が入っているかどうかで、採用の計画や事業の急ぎ方が変わります。調達していない自己資本の会社もあり、その場合は成長の速さより収益の安定を重視する運営になります。
- 事業モデル
- 自社サービスを作っているのか、受託開発なのか、客先に常駐するのかで、書くコードも関わる工程も変わります。
この4つのうち、求人票のどこまでが書かれているかは媒体と募集によって変わります。設立年と従業員規模は会社概要の欄に置かれている場合があります。事業モデルはどこかの欄に明記されるとは限らず、いくつかの記載から推定することになります。資金調達の段階は求人票の項目にありません。つまり、事業モデルは求人票を読み解いて推定し、設立年と資金調達の段階は求人票の外で調べる、という2つの作業が要ります。
ここまでの4つは、ITベンチャーを候補に入れると決めた人が応募先を絞るための道具です。そもそも移るかどうかを決めきれていないのであれば、資金調達の段階ごとに会社の状態がどう違うのか、ストックオプションが実際にどう扱われるのか、どういう人が向いてどういう人が向かないのかを扱った記事のほうが先に役立ちます。
求人票で事業モデルを読む

求人票から読み取りたいのは3つです。何を作るのか、どこで働くのか、誰の指示で働くのか。この3つが揃った状態を、ここでは事業モデルと呼びます。
業務内容の欄から分かるのは、たいてい1つめだけです。「自社サービスの開発」「受託開発」と明記した募集なら、何を作るのかはそこで読めます。ただし、そう書かれていても残りの2つは決まりません。自社サービスの開発でも一部の工程を客先で進めることはあり、受託開発でも自社のオフィスで完結することはあります。「Webアプリケーションの設計・開発」のように、どの会社でも同じに書ける表現しかない募集では、1つめすら分かりません。
そこで、見る欄を移します。働く場所は勤務地の欄に、指示を出す相手は契約の書き方に、何を作っているのかは開発体制の記載の細かさに表れます。
勤務地の欄を見る
自社のオフィスの所在地だけが書かれているか、「客先常駐」「常駐先」「プロジェクト先」「就業先」という語が入っているかを見ます。「本社(東京都◯◯区)ただし配属プロジェクトによる」のような書き方も同じ扱いです。ここに常駐を示す語があれば、日々働く場所は自社ではなく取引先になります。
契約と指揮命令の関係を見る
「準委任」「二次請け」「パートナー企業」といった語が出てきたら、契約の型を確認する必要があります。厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)は、請負の形式で契約していても、次のいずれかを発注者側が行っている場合は労働者派遣にあたりうるという枠組みを示しています。
- 業務の遂行方法に関する指示や、業務の遂行に関する評価を誰が行うか
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇に関する指示や管理を誰が行うか
- 服務上の規律に関する指示や、配置の決定・変更を誰が行うか
この3つを、求人票の語からは判別できません。判別できないからこそ、面接で確認する項目になります。告示は事業主が満たすべき基準を定めたもので、個別の会社の適否を応募者が判定する材料ではありません。あくまで「自分は誰から指示を受けて働くのか」を確かめるための観点として使います。
開発体制の記載の粒度を見る
チームの人数、開発の進め方、コードレビューやテストの扱い、使用技術がバージョンまで書かれているか単なる名前の羅列か。記載の粒度そのものが情報になります。自社でプロダクトを持ち、開発の体制が決まっていれば、募集の時点で書ける中身があります。逆に、配属先が決まってから業務内容が決まる募集では、応募の時点で書ける中身がありません。記載が抽象的なときは、まだ決まっていない部分が残っていると考えて、面接でそこを埋めることになります。
「自社サービス」と書かれていても、業務の一部が客先常駐であることはあります。求人票の語だけで決めきらず、面接で3つ確認してください。配属先はどこか、業務の指示は誰から受けるか、作るのは自社のプロダクトか受託した案件か。この3つが揃えば、事業モデルはほぼ確定します。未経験歓迎の募集では、勤務地・契約・開発体制の3つの記載が省かれている場合があるので、ITベンチャーをIT業界への入口として見ているなら、この確認はとくに効きます。
会社の事実を自分で調べる
設立年や所在地の変遷は、求人票に書かれていなくても公的なサイトで確認できます。起点になるのは法人番号です。
まず国税庁の法人番号公表サイトで、商号から会社を検索します。公表されているのは基本3情報、つまり商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、そして13桁の法人番号です。あわせて法人種別と英語表記、そして変更履歴が閲覧できます。「公表以後の変更履歴を検索対象に含める」オプションがあり、変更年月日での検索にも対応しているので、本店の所在地がいつ変わったかを外形として追えます。ただし変更の理由までは分かりません。
ここで分からないのは、設立年月日・資本金・役員です。これらは登記事項なので、必要なら登記情報提供サービスに進みます。「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」に基づき、一般財団法人民事法務協会が同法第3条の指定法人として実施しているサービスで、登記所が保有する登記情報をインターネットで取得できます。有料なので、料金と利用方法はサービスのサイトで確認してください。無料で商号と所在地の履歴まで、有料で設立年月日と資本金まで、という2段の使い分けになります。
資金調達の段階は、会社や投資家が公表したプレスリリースで分かる範囲に限られます。公表されていない調達もあるため、情報が出てこないことをもって「調達していない」と判断はできません。
起業した会社の生存率について、根拠のはっきりしない数値が流通しています。国立国会図書館のレファレンス協同データベースに登録された調査事例では、企業生存率が創業から10年後に6.3%になるという記載について、根拠となるデータが確認できなかったと記録されています。同じ事例で図書館が紙面を確認した公的な数値は、中小企業白書の2023年版で起業後5年の生存率が80.7%、2016年版で起業後10年の生存率が72%というものでした。ただし2023年版の数値には、参照した企業データベースの性質上、実際の生存率よりも高めに算出されている可能性があるという注記が付いています。いずれも全業種の数値で、IT業界やベンチャー企業に限ったものではありません。
公的なサイトで分かるのは、こうした外形の事実だけです。労働時間、開発の進め方、人の入れ替わりといった働く環境そのものは出てきません。そこから先は求人票と面接で確かめるか、企業の情報を持っている第三者に聞くことになります。求人の紹介と企業の情報収集をまとめて任せる選び方をするなら、経験者向けにエージェントを目的別に比較した記事があります。
ITベンチャーの求人が載る媒体
媒体は、指名を待つ型・企業に直接応募する型・業種を問わず横断して拾う型の3つに分かれます。どの型を使うかで、応募の起点が自分か企業かが変わり、給与が分かるタイミングも変わります。
| 媒体 | 型 | 応募の起点 | 給与が分かる時点 | 向く使い方 |
|---|---|---|---|---|
| 転職ドラフト | 指名を待つ | 企業からの指名 | 指名の時点で企業が提示 | 市場からの評価を先に知りたい |
| AMBI(アンビ) | 指名を待つ | 企業・ヘッドハンターからのスカウト | 求人情報の記載 | 応募前に見込みを確かめたい |
| Green(グリーン) | 直接応募する | 自分の応募または「気になる」 | 求人情報の記載 | IT職を軸に自分で探したい |
| Wantedly(ウォンテッドリー) | 直接応募する | 「話を聞きに行きたい」 | 会社訪問の後、初回の採用面談まで | 会社の考え方を先に知りたい |
| リクナビNEXT | 横断して拾う | 自分の応募またはオファー | 求人情報の記載 | 選択肢の幅を先に見たい |
指名を待つ
自分で応募先を探す前に、企業からの提示を受け取る型です。市場が自分の経験をどう値付けするかが先に分かります。
転職ドラフト
株式会社リブセンスが運営するITエンジニア向けのサービスです。企業が年収とミッションを提示した「指名」を送る形をとり、現年収は非公開のまま、技術や経験から企業側が年収を提示します。公式サイトはテンプレート文や一括のスカウト送信をシステムで禁止していると記載しています。レジュメの添削とフィードバックのほか、エンジニアのキャリアに詳しい担当者に相談できる機能もあります。
登録してから指名が届くまでの流れは、レジュメを書く、審査を通る、指名を受け取る、という順です。レジュメには担当した開発の背景と自分の判断を書くことになるので、職務経歴書を作り直す作業にもなります。年収の交渉を自分で切り出すのが苦手な場合、提示が先に来るこの型は負担が軽くなります。
AMBI(アンビ)
エン・ジャパンが運営するスカウト型のサービスで、若手の経験者層を対象にしています。特徴として挙げられているのは、企業やヘッドハンターから「合格可能性判定」が届くことです。応募する前に見込みが分かるため、書類で落ちる回数を減らしたい場合に向きます。適性を見る診断ツールや、閲覧履歴に基づく求人の提示もあります。求職者の登録・利用は無料です。サービス側は年収500万円以上の求人を想定した対象層としており、ベンチャー企業の職種別のページも用意しています。
企業に直接応募する
エージェントを間に挟まず、企業と直接やり取りする型です。応募の起点が自分にある分、候補を自分で判断していくことになります。
Green(グリーン)
株式会社アトラエが運営する、IT業界に特化した求人サイトです。エンジニアやデザイナーに加えて、マーケティング、営業、人事・経理・法務などの管理部門の募集も掲載しています。掲載企業はスタートアップから上場企業まで幅があります。
機能は「気になる」、企業との直接メッセージ、カジュアル面談の相談、スカウトの受信です。職種や勤務地だけでなく、働き方や企業の特徴といった切り口でも絞り込めるので、置き換えた4つの事実のうち従業員規模や事業モデルに近い条件を検索に反映しやすくなります。求人の閲覧・応募・スカウト受信・メッセージはすべて無料です。
Wantedly(ウォンテッドリー)
企業のビジョンやミッションに納得できるかどうかを軸に、募集やストーリーを読んで「話を聞きに行きたい」と会社を訪問する形のサービスです。ここで押さえておきたいのは掲載の形です。公式のヘルプは、Wantedly Visit が共感ややりがいを軸に採用活動をするためのサービスであるため、募集には給与・福利厚生等の労働条件は記載されないと明記しています。
そのうえで Wantedly は、職業安定法の規定および募集情報等提供事業の業務運営要領の記載をふまえ、企業に対し、会社訪問が終わった後、遅くとも正式な選考過程に入って候補者と最初に接触する時点、つまり初回の採用面談までに労働条件を明示するよう依頼しています。適正な明示がなされていない場合は問い合わせフォームから連絡するよう案内もあります。
したがってこの媒体は、条件を先に並べて絞り込む段階には向きません。会社が何をやろうとしているかを先に読んで、合いそうなら話を聞きに行く、という順序で使うことになります。求職者の登録・利用は無料です。
横断して拾う
業種や職種を限定しない大手の求人サイトです。ベンチャーに絞った媒体ではないため、設立年・従業員規模・資金調達の段階・事業モデルという4つの事実を、そのまま検索の条件に置き換えて使うことになります。
リクナビNEXT
株式会社リクルートが運営する転職サイトです。勤務地・職種・スキル・資格などから全国の求人を検索できます。職務経歴や希望条件を匿名で登録しておくと、求人企業から直接オファーが届くスカウトの仕組みがあります。自己分析ツールの「グッドポイント診断」を無料で使え、18種類の性格のうちから強みを5つ提示します。応募の前に自分の言葉を整理したい場合の材料になります。
媒体を1つ選ぶなら、何を先に知りたいかで決めるのが早くなります。自分の経験がいくらで評価されるかを先に知りたいなら指名を待つ型、会社の考え方を先に知りたいなら Wantedly、条件で絞って選択肢の幅を見たいなら Green やリクナビNEXT、という分け方です。
よくある質問
Q. ベンチャー企業はやめたほうがいいですか?
その問いは、会社ごとの事実に分解しないと答えが出ません。「ベンチャー」に共通の定義が無い以上、この語でくくられた会社に共通の答えは存在しないためです。判断の材料になるのは、設立年、従業員規模、資金調達の段階、事業モデルの4つです。この4つが自分の想定と合っているかを確かめてから応募先を決めることになります。
Q. ベンチャー企業は何がやばいと言われるのですか?
「やばい」という言葉が指しているものを分けると、会社が続くかどうか、労働時間、給与の変動、社内の体制が整っているか、の4つに整理できます。このうち会社が続くかどうかについては、中小企業白書で起業後5年の生存率が80.7%(2023年版)という数値が示されています。ただしこれは全業種の数値で、参照した企業データベースの性質上、実際より高めに算出されている可能性があるという注記が付いています。労働時間と体制については公的な統計で会社ごとの答えは出ないため、求人票の開発体制の記載と面接で確認する項目になります。
Q. 未経験からベンチャーのIT求人に応募できますか?
募集ごとに違うため、求人票の3つの記載で判別します。勤務地の欄に常駐を示す語があるか、契約に準委任や二次請けという語が出ているか、開発体制がどこまで具体的に書かれているか。未経験歓迎の募集ではこの3点の記載が薄くなりやすいので、面接で配属先と指示の出どころと担当工程を確認してください。
Q. ITベンチャーの平均年収はいくらですか?
公的統計に「ITベンチャー」という業種や職種の区分が無いため、平均を示すことはできません。代わりの手がかりになるのは、媒体が出す提示額です。転職ドラフトのように企業が指名の時点で年収を提示する仕組みなら、自分の経験に対する提示額を実額で受け取れます。
Q. ベンチャー企業に就職するのは難しいですか?
難易度そのものを示す公的な統計はありません。応募のしやすさという意味では、媒体の型によって入口が変わります。指名を待つ型は企業側から声がかかるまで応募が始まらず、直接応募する型は自分のタイミングで動けます。書類で落ちる回数を減らしたい場合は、応募前に見込みが分かる仕組みを持つ媒体から始める方法があります。
まとめ
ITベンチャーの求人を探すときの順序は、次の4点です。
- 「ベンチャー」を4つの事実に置き換える
- 設立年、従業員規模、資金調達の段階、事業モデル。この語のままでは絞り込みに使えません。
- 求人票の3つの記載から事業モデルを推定する
- 勤務地の欄、契約と指揮命令、開発体制の粒度。面接では配属先と指示の出どころと担当工程を確認します。
- 公的サイトで外形の事実を確かめる
- 国税庁の法人番号公表サイトで商号と所在地の履歴まで、登記情報提供サービスで設立年月日と資本金まで。
- 媒体は給与が分かるタイミングで選ぶ
- 指名の時点で提示される型、求人情報に書かれている型、初回の採用面談まで分からない型があります。
まずは気になっている求人の勤務地の欄を開いて、常駐先や就業先という語が入っていないかを確かめてみてください。そこが入口です。