建築設計への転職|資格で変わる担当範囲と設計事務所の求人の探し方
この記事の要約
建築設計の求人は、資格が担当できる範囲を法律で区切っている職種です。一級・二級・木造の建築士でそれぞれ設計や工事監理を行わなければならない建築物が定められており、そこから応募できる求人も変わります。またアトリエ系や組織系と呼ばれる設計事務所も、ゼネコンの設計部門も、建築士法上は同じ登録の枠組みの中にあります。この記事では、資格による業務範囲の違い、建築士事務所の登録制度と管理建築士の要件、意匠・構造・設備という3分野の分かれ方、そして求人票で確かめる項目までを整理します。
設計職の求人は何が違うか
求人を検索すると、「建築設計」「意匠設計」「設計職」「設計事務所」といった名前が並びます。どれも設計の仕事のようですが、それらがどう関係しているのかは、一覧を眺めているだけでは見えてきません。
判断に詰まるのは、次の2点です。
1つは、応募に資格が要るのかどうかが求人票から読み取りにくいことです。応募資格に「一級建築士」と書かれた募集もあれば、資格に触れていない募集もあります。資格がない状態で入れるのか、入れたとして何を担当することになるのかが分かりません。もう1つは、事務所の呼び方です。「アトリエ」「組織系」「ゼネコンの設計部」といった言い方が並びますが、それが会社の規模の違いなのか、仕事の中身の違いなのか、あるいは制度上の違いなのかが判別できません。
建築系の学科を出ている、あるいは建築・建設の業界で働いた経験がある。そして設計に移りたいが、持っている資格は二級建築士か木造建築士で、あるいはまだ何も持っていない。一級建築士でなければ設計の仕事に就けない、ということはありません。ただ、自らの責任で設計や工事監理を担当できる建築物の範囲は、持っている資格で変わります。この状態で先に押さえておきたいのは、その資格と業務範囲の関係です。この職種は、資格が担当できる範囲を法律で区切っているためです。
求人票の読み方は、次の3つを順に押さえると定まります。まず資格が担当できる範囲を知ると、応募資格の欄に書かれた資格名が何を意味しているのかが読めるようになります。次に応募先がどういう枠組みの事業所なのかを見ると、アトリエ・組織系・ゼネコンの設計部という呼び分けが何を指しているのかが分かります。そのうえで自分が狙う設計の分野を決めると、募集の職種名が自分の狙いと合っているかを判断できます。
ただし、CADで図面を描く作業そのものを担う仕事や、現場で工程を管理する仕事を主に考えているなら、この3つの順番は当てはまりません。担当できる範囲を決めるのが建築士の資格ではないため、先に確かめるのは担当する工程と現場に出る頻度になります。
建築・建設業界にどんな職種があり、未経験からどう入るのかという全体像から見たい場合は、以下の記事が職種別の仕事内容と求人サービスまでまとめています。
資格で変わる担当範囲

建築士の資格は一級・二級・木造の3つに分かれており、設計や工事監理を行える建築物の範囲が資格ごとに違います。だから応募できる求人も、資格によって変わります。
建築士法は昭和25年7月1日に施行された法律で、建築物の設計・工事監理等を行う技術者の資格を定め、業務の適正化をはかって建築物の質の向上に寄与することを目的としています。東京建築士会の資料によると、建築士は建物の規模・用途・構造に応じて取り扱うことのできる業務範囲が定められています。
| 資格 | 免許を出す主体 | 設計・工事監理を行わなければならない建築物の例 |
|---|---|---|
| 一級建築士 | 国土交通大臣 | 高さが13mまたは軒の高さが9mを超えるもの/鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300㎡を超えるもの |
| 二級建築士 | 都道府県知事 | 鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30㎡を超え300㎡以内のもの(一級・二級建築士が対象) |
| 木造建築士 | 都道府県知事 | 2階建までの木造建築物で延べ面積が100㎡を超え300㎡以内のもの(一級・二級・木造建築士が対象) |
表に挙げたのは資料が示している例で、業務範囲の条件をすべて網羅したものではありません。読み方として押さえておきたいのは、上位の資格が下位の範囲も含むという入れ子の関係です。二級の行に「一級・二級建築士が対象」と書かれているのは、その範囲を一級建築士も担当できるという意味になります。この表は逆からも読めます。狙う建物の種類が決まれば、必要な資格も決まるということです。木造2階建で延べ面積300㎡以内の住宅であれば木造建築士や二級建築士の範囲に入りますが、高さが13mを超える建物や、鉄筋コンクリート造・鉄骨造で延べ面積が300㎡を超える建物は一級建築士が設計・工事監理を行わなければなりません。求人票の応募資格に一級建築士と書かれている場合、その理由は応募者の側ではなく、その会社が扱う建物の規模や構造の側にあります。
では資格がない場合はどうなるのか。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、建築設計技術者について「就職後に『建築士(1級・2級・木造)』の資格を取得しないと自らの責任で一定規模以上の建築物を設計することができない」と記しています。つまり、資格がなくても設計の職に就くことはありますが、自らの責任で担当できる範囲に線が引かれます。募集の名称が「設計」と「設計補助」で分かれていることがあるのは、この線が関わっている場合があります。
実務経験は登録のときの要件になった
資格を取る側の制度も変わっています。日本建築士会連合会の登録部によると、建築士法の改正(施行日 令和2年3月1日)により、改正前は建築士試験の受験時の要件だった実務経験が、免許登録の要件に改められました。原則として試験の前後を問わず、免許登録の際までに実務経験を積んでいればよいことになっています。
これは「試験を先に受けられるようになった」という意味であって、必要な実務経験そのものが無くなったわけではありません。学歴によって必要な年数が変わるので、自分の場合の要件は、指定試験機関である建築技術教育普及センターと、免許登録を扱う窓口で確認してください。実務経験として認められる業務も「対象実務のコード表」で定められており、施行日より前に行った追加の実務はカウントされない扱いになっています。
設計事務所の呼び方と登録制
資格でどこまで担当できるかが分かったら、次は応募先の会社の側を見ます。ここで解けるのが、判断に詰まる2つめとして挙げた事務所の呼び方です。アトリエ、組織系、ゼネコンの設計部という呼び分けが何の違いなのか。この呼び方は、制度上の区分ではありません。設計事務所は、看板に書かれた名前ではなく、建築士法上の登録を受けた事業所です。そしてこの登録の枠組みは、ゼネコンの設計部門にも及びます。
建築士法第23条により、他人の求めに応じ報酬を得て設計等を業として行おうとする建築士、または建築士を使用して同じ業務を行おうとする者は、建築士事務所について都道府県知事の登録を受けなければなりません。無登録で他人の求めに応じ報酬を得て設計等を業として行った場合は、同法第23条の10に反し、第38条により懲役または罰金に処されます。
ここで言う「設計等」には、6つの業務が含まれます。
- 建築物の設計
- 建築物の工事監理
- 建築工事契約に関する事務
- 建築工事の指導監督
- 建築物に関する調査または鑑定
- 建築に関する法令または条例に基づく手続きの代理
求人票の業務内容の欄を見るとき、この6つのどれに当たるのかを読み分けられると、募集の性格がつかめます。設計と工事監理の両方が書かれているのか、法令に基づく手続きの代理まで含むのか。同じ「設計」の募集でも、扱う業務の幅は変わります。
そして重要なのが、建設業者の扱いです。東京都建築士事務所協会の手引きは、「建設業者が請負の一環として事実上の設計等を業として行う場合は、建設業の許可のほかに、建築士事務所の登録が必要です」と記しています。つまり、求人上で「設計事務所」と呼ばれる会社と、「ゼネコンの設計部」と呼ばれる部門は、法的には同じ登録の枠組みの中にあります。違いは、その会社の主たる事業が設計にあるのか施工にあるのかという点です。
管理建築士という要件
建築士事務所には、建築士法第24条第1項の規定により、事務所を管理する専任の建築士(管理建築士)を置かなければなりません。一級建築士事務所は専任の一級建築士が管理し、二級建築士事務所は専任の二級建築士が、木造建築士事務所は専任の木造建築士が管理します。
管理建築士になるには、同法第24条第2項により、建築士として3年以上の設計等の業務に従事した後、登録講習機関が行う管理建築士講習の課程を修了する必要があります。ここでいう専任は、事務所に常勤して専らその職務を行うことを意味し、雇用契約等により事業主体と継続的な関係を持ち、休業日を除く通常の勤務時間中はその事務所に勤務していることが求められます。
制度上の制約もいくつかあります。1人の建築士が複数の建築士事務所の管理建築士になることはできません。1つの登録に複数の管理建築士を置くこともできません。派遣労働者は管理建築士になれません。退職や異動で管理建築士が不在になった場合は廃業事由に当たり、30日以内に廃業等の届出が必要です。
管理建築士は事務所の管理者の要件であって、「管理建築士でなければ設計を担当できない」という意味ではありません。ただし、建築士として3年以上の設計等の業務という要件があることは、求人票の「設計補助」から「設計担当」への段差がどこにあるかを推し量る材料になります。また、小規模な事務所では管理建築士が1人しかいないため、その人が抜けると事業が続かない構造になっています。組織の安定を見るときに知っておくと、面接で聞くことが変わります。
意匠・構造・設備で分かれる
資格と会社の枠組みが分かったら、最後に自分が担当する分野を決めます。設計の分野が意匠・構造・設備に分かれているのは、作る図面が3種類あるからです。求人の職種名がこの3つで分かれているのも、成果物の違いがそのまま担当の違いになっているためです。
job tag の「建築設計技術者」のページによると、この職種は住宅・学校・オフィスビル・工場・ホテルなどの建築物について調査・設計を行います。まず顧客がどのような建物を建てたいのか、建築物の用途、規模、デザイン、構造、設備、予算、工期、立地条件、法的条件などを詳しく調査して打ち合わせをします。次に顧客の要求を採り入れながら、建物の用途や規模に応じて構造や材料、設備を決め、意匠設計図、構造設計図、設備設計図等の設計図を作成します。建築物の建設は建築基準法等の法的規制を受けるため関連する法手続を行い、工事中は設計図どおり施工されているかについて工事監理の業務を行います。
この3種類の図面が、そのまま分野の分かれ目です。意匠は建物の見え方と空間の構成を、構造は建物が力に耐える仕組みを、設備は電気・給排水・空調などの仕組みを扱います。求人の職種名に「意匠設計」のような分野名が付いて出てくるのは、この3つが別の担当として分かれているからです。
進め方の面では、大手・準大手のゼネコンや設計事務所でBIMの導入が進み、3次元の図面情報をはじめ設計から施工、メンテナンスに至るまでの情報を一括管理できるようになっています(job tag 同ページ)。図面を平面で仕上げる作業から、建物の情報を3次元で持つ作業へ、道具の側が動いている領域です。
現場との分業の線も引かれています。建築工事の分野が多様化して分業が進んだため、建築設計技術者は調査・設計の仕事を行い、現場での監督・指揮は建築施工管理技術者が行うのが一般的です(job tag 同ページ)。設計の求人に応募するとき、現場の工程管理まで担当するのかどうかは、この線がどこに引かれている会社なのかで変わります。
入職と求められるもの
入職の経路は、高校や専門学校、大学の建築系学科で構造力学、建築材料、関係法令といった専門知識や技術を学んでからが一般的で、専門技術を習得して仕事をこなせるようになるまでにはかなりの経験を要します(job tag 同ページ)。設計用ソフト(CADのソフトウェア等)を使うためコンピュータについての知識が求められ、デッサンの能力や美的感覚も必要とされます。
学歴の分布も出ています。job tag の同ページが「この職業で実際に働いている人が多いと感じる学歴」を尋ねた結果では、大卒が80.0%、専門学校卒が13.3%、修士課程卒と高卒がそれぞれ8.9%、短大卒と高専卒がそれぞれ6.7%です。これは複数回答なので合計は100%を超えます。応募の要件を示したものではありませんが、建築系の教育を受けた人が中心である実態は読み取れます。
勤務先は、建築士事務所、建設会社、ハウスメーカーなどの専門企業のほか、国土交通省、地方公共団体、民間企業の建築や施設管理に携わる部門まで幅があります(job tag 同ページ)。労働条件の面では、仕事が工期に関係するため、忙しい時期には残業や休日出勤をすることもあります。
図面を描く作業そのものを担う職としては、CADオペレーターがあります。設計の担当として応募するのか、図面の作成を担う立場から入るのかで、確認する項目も媒体も変わってきます。
求人の探し方と相談先

求人の水準を数字で押さえたうえで、業界に特化した相談先から入ると、条件の比較が早くなります。
job tag のハローワーク求人統計の欄には、建築設計技術者の求人賃金(月額)として33.8万円、有効求人倍率として2.83という数値が、いずれも令和7年度のものとして掲載されています。有効求人倍率は求職者1人あたりの求人の件数を示す数値なので、2.83は求職者1人に対して2件を上回る求人がある状態にあたります。応募先を選ぶ余地が生まれやすい水準だと言えます。同じページには賃金(年収)679.1万円という数値もあります。
ただし、この数値の読み方には注意が要ります。job tag は統計データについて、必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではなく、各統計で使用されている職業分類に対応するものだと注記しています。つまり建築設計技術者そのものの平均ではなく、この職業が属する職業分類の数値です。事務所の規模や地域による差も読み取れません。求人票の金額と比べるときは、目安として扱ってください。
相談先は業界に特化したところから当たると、設計職の募集を扱っているかどうかを先に確かめられます。
RSG建設転職は、株式会社RSGが運営する人材紹介・転職支援のサービスです。建設・不動産業界を対象とし、施工管理や建築設計といった職種に対応しています。同社は建設向けと不動産向けの2つのブランドを展開しています。担当者に条件を伝えるときは、資格の区分と担当したい設計の分野をあわせて伝えると、紹介の精度が変わります。
建職バンクは、建設業界の転職・求人の専門サイトで、求職者は無料で利用できます。登録時に選ぶ経験の区分に「設計経験がある」が含まれており、求人の検索の入口として「職種から探す」「工事の種類から探す」「資格から探す」「勤務地から探す」「こだわり条件から探す」の5つが用意されています。手元にある資格を起点に探せるので、二級建築士まで持っている段階で応募先の幅を見たい場合に向きます。なお、職人への転職を希望する場合の職業紹介は行っておらず、直接応募での利用になるという注記があります。
応募の前に確認する項目は4つです。募集が求める資格の区分は一級か二級か、それとも資格を問わないのか。担当する設計の分野は意匠・構造・設備のどれか。業務内容が「設計等」の6つのうちどこまでを含むのか。勤務先は建築士事務所なのか建設会社の設計部門なのか。この順に見れば、応募できるかどうかと、入った後に何を担当するのかが同時に見えてきます。
よくある質問
Q. 建築設計の給料はいくらですか?
job tag のハローワーク求人統計の欄には、建築設計技術者の求人賃金(月額)として令和7年度の33.8万円が掲載されています。同じページには賃金(年収)679.1万円という数値もあります。ただし job tag は、統計データが必ずしもその職業のみを表すものではなく、各統計で使用されている職業分類に対応するものだと注記しています。事務所の規模や地域、担当する分野による差はこの数値から読み取れません。
Q. 建築設計職はきついですか?
「きつい」が指しているものを分けると、時間、覚えることの量、責任の3つになります。時間については、job tag が「仕事が工期にも関係するため、忙しい時期には残業や休日出勤をすることもある」と記しています。覚えることの量については、専門技術を習得して仕事をこなせるようになるまでにかなりの経験を必要とするとあります。責任については、資格が担当できる範囲を区切っており、資格を取らないと自らの責任で一定規模以上の建築物を設計できません。この3つのどれが自分にとって重いかで、感じ方は変わります。
Q. 未経験から設計事務所に入れますか?
資格がなくても設計の職に就くことはありますが、自らの責任で担当できる範囲に線があります。job tag は、高校や専門学校、大学の建築系学科で構造力学、建築材料、関係法令といった専門知識や技術を学んでから入職するのが一般的だとしています。学歴の分布でも大卒が80.0%と中心です。建築系の教育を受けていない場合は、まず何を担当する募集なのかを求人票で確かめることになります。
Q. 設計事務所とゼネコンの設計部門は何が違いますか?
どちらも建築士法上の登録の枠組みの中にあります。建設業者が請負の一環として事実上の設計等を業として行う場合は、建設業の許可のほかに建築士事務所の登録が必要とされているためです。違いは、その会社の主たる事業が設計にあるのか施工にあるのかという点になります。求人票で見るなら、勤務先が建築士事務所なのか建設会社の設計部門なのかを確認してください。
まとめ
建築設計への転職を考えるときは、次の4点の順に確かめると迷いにくくなります。
- 資格で担当できる範囲を確かめる
- 一級・二級・木造で設計や工事監理を行わなければならない建築物が違い、上位の資格が下位の範囲も含みます。
- 事務所が登録制であることを押さえる
- 建築士法第23条の登録が必要で、その枠組みはゼネコンの設計部門にも及びます。管理建築士には3年以上の設計等の業務と講習の修了という要件があります。
- 意匠・構造・設備のどれを狙うか決める
- 設計図が3種類あることが、そのまま分野の分かれ目になっています。
- 求人票の4項目を上から見る
- 求める資格の区分、担当する分野、業務が「設計等」のどこまでか、勤務先の種類の順です。
まずは気になっている求人の応募資格の欄を開いて、求めているのが一級か二級か、それとも資格を問わないのかを確かめてみてください。そこが決まると、次に見るべき欄が業務内容と勤務先に絞られます。