診療情報管理士と健診センター事務|医療事務との違いと求人の見分け方
この記事の要約
医療事務と診療情報管理士の違いは、印象ではなく診療報酬の施設基準に書かれています。診療録管理体制加算の基準は、診療記録管理者の業務を「診療情報の管理、入院患者についての疾病統計」とし、診療報酬の請求事務と窓口の受付業務については診療記録管理者の業務としない、と明記しています。つまり、いま医療事務として担当しているレセプトと受付は、制度上この職種の業務から外れています。ここでは、その切り分けと、求人が出る病院の条件、診療情報管理士という資格の性格、そして健診センター事務が外来の受付と何が違うのかを、条文をもとに整理します。
2つの仕事は制度の根拠が違う

診療情報管理士と健診センターの事務は、どちらも医療機関の事務の仕事です。ただし業務の根拠になる制度が別々で、前者は診療報酬の施設基準、後者は労働安全衛生規則にもとづく事業者の義務が土台になっています。
医療事務との違いも、この制度の側に線が引かれています。どこまでが医療事務の仕事で、どこからが別の職種の仕事なのかは、求人票の職種名や仕事内容の欄からは読み取れません。応募先が何を任せようとしているのかを判断するにも、資格を取ったあとに何が変わるのかを考えるにも、制度の側を見ることになります。
なお、医療系の職種にどういうものがあるか、職種ごとに求人をどう探すかという全体像は、次の記事にまとめています。
診療報酬が業務を分けている
先に用語を整理します。診療情報管理士は資格の名前で、この資格を持つ人だけができると法令で決められた業務はありません。一方、病院が診療記録の管理に人を置く根拠としては、診療報酬に「診療録管理体制加算」という仕組みがあり、そこに置かれる職が「診療記録管理者」と呼ばれます。診療情報管理士の求人が病院から出る背景にはこの仕組みがあるため、業務の範囲はこちらの側に書かれています。
その診療記録管理者の業務範囲は、診療報酬の施設基準に定めがあります。厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第7号)の診療録管理体制加算の項に、次の記載があります。
「診療記録管理者は、診療情報の管理、入院患者についての疾病統計(ICD10 による疾病分類等)を行うものであり、診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに係る業務を除く。)、窓口の受付業務、医療機関の経営・運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助及び物品運搬業務等については診療記録管理者の業務としない。」
一方、医療事務の仕事は厚生労働省の職業情報提供サイトで次のように説明されています。「医療機関において、診療報酬を請求するための書類の作成を行ったり、窓口において、外来の受付、医療費の請求、入退院の手続などを行う。」
並べると対応が見えます。
| 医療事務 | 診療記録管理者 | |
|---|---|---|
| 中心の業務 | レセプト(診療報酬請求明細書)の作成とチェック、窓口の受付・会計 | 診療情報の管理、入院患者についての疾病統計 |
| 診療報酬の請求事務 | 中心の業務 | 業務としない(DPCのコーディングに係る業務を除く) |
| 窓口の受付業務 | 中心の業務 | 業務としない |
| 扱う対象 | 外来患者・入院患者の会計と手続 | 退院患者の診療記録と疾病分類 |
医療事務の中心にあるレセプトと窓口が、診療記録管理者の側では業務から外れています。同じ事務職でも、日々向き合う対象が違うということです。
これは「加算を届け出ている病院で、専任の診療記録管理者として数えられる人が何をするか」の規定です。診療情報管理士の資格を持つ人が請求事務をしてはいけない、という意味ではありません。届出上、診療記録管理者の業務として数えられないものが決まっている、と読むのが正確です。
もし診療記録の分析やコーディングに関心があるなら、この職種は方向として合っています。もしレセプトの精度や患者対応にやりがいを感じているなら、医療事務の側で経験を深めるほうが噛み合います。どちらが上ということではなく、向き合う対象が違います。
求人が出る病院の条件
病院が診療記録管理者を置くのは、診療録管理体制加算の施設基準を満たすためです。配置する人数は退院患者数で決まります。
同じ通知の加算1の基準には「年間の退院患者数 2,000 名ごとに1名以上の専任の常勤診療記録管理者が配置されており、うち1名以上が専従であること」と書かれています。退院患者が多い病院ほど、置くべき人数が増えるという構造です。
加算には1と2があり、要件が違います。
| 診療録管理体制加算1 | 診療録管理体制加算2 | |
|---|---|---|
| 診療記録管理者の配置 | 年間の退院患者数2,000名ごとに1名以上の専任の常勤。うち1名以上が専従 | 1名以上の専任(常勤・専従の指定なし) |
| 疾病統計の細かさ | ICDの4桁または5桁の細分類項目に沿って分類 | ICD大分類程度以上 |
| 退院時要約 | 全診療科で全患者について作成。前月退院者のうち14日以内に作成・提出された者の割合が毎月9割以上 | 全診療科で全患者について作成 |
加算1のほうが求められる体制が厚く、専従の担当者を置くことが前提になっています。募集の中身も、加算1を届け出ている病院と加算2の病院とでは変わってきます。
母数の目安としては、厚生労働省の令和5年医療施設調査で病院は8,122施設です。この加算は入院基本料の加算なので、届出をするのは入院患者を受け入れている病院になります。
応募先がどちらの加算を届け出ているかは、求人票には通常書かれていません。専従なのか専任なのか、退院患者数がどのくらいの規模なのかは、面接で聞くことになります。ここが分かると、1人で担当するのか複数人の体制なのかの見当がつきます。
資格は国家資格ではない
診療情報管理士は国家資格ではありません。日本病院会の診療情報管理士通信教育のサイトによれば、「四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)および医療研究推進財団の共同で認定された資格」です。
認定を受けるルートは2つあります。日本病院会の診療情報管理士通信教育を修了する方法と、日本病院会の指定大学および指定専門学校の指定科目で指定単位を取得して卒業する方法です。
通信教育は「基礎課程1年、専門課程1年で計2年」という構成で、受講期間は通算6年とされています。基礎課程の受講要件は原則として2年制以上の短期大学または専門学校卒以上の学歴を有する者で、病院勤務者は高卒でも受講できるとされています。医師、歯科医師、看護師など特定の医療系国家資格を持つ人は専門課程から編入する形になります。
認定者数は、同サイトに「2026年現在、49,802人を超え」と記載されています。
働きながら目指せるかどうかは、この2年という期間と課程の構成から判断することになります。通信教育の形なので勤務を続けながら進められる設計ですが、通算6年の受講期間が設けられているのは、途中で時間が取れなくなる場合を想定した仕組みだと読めます。
診療録管理体制加算の施設基準は「診療記録管理者」の配置を求めていますが、その人が診療情報管理士の資格を持つことを要件として書いてはいません。届出様式にも職種を記入する欄があるだけです。したがって、資格が応募の必須条件かどうかは病院ごとの募集条件によります。求人票の応募要件の欄で確かめてください。
なお、医療事務の側では資格の位置づけが違います。資格がなくても始められるのか、どういう資格があるのかは次の記事で整理しています。
健診センターは相手が違う

冒頭で挙げた2つのうち、ここからがもうひとつの健診センターの事務です。こちらは根拠になる制度が別で、診療報酬ではなく、事業者に健康診断を義務づける労働安全衛生規則が仕事の土台にあります。
健診センターの事務が外来の受付と違うのは、来る人が症状を抱えた患者ではなく、事業者の義務にもとづいて受診する人だという点です。
労働安全衛生規則44条1項は「事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない」と定めています。続けて、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、身長・体重・腹囲・視力及び聴力の検査、胸部エックス線検査及び喀痰検査、血圧の測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心電図検査という11の項目が列挙されています。
また同規則43条は、常時使用する労働者を雇い入れるときにも健康診断を行わなければならないと定めています。
ここから読み取れるのは2つです。
ひとつは、受診の理由が本人の症状ではなく事業者の義務にあることです。
もうひとつは、実施する項目が法令に定型で列挙されていることです。外来のように、その日の症状に応じて診療科や検査が変わる形とは、業務の組み立て方が変わってきます。
労働安全衛生規則が定めているのは事業者の義務であって、健診センターの業務内容そのものではありません。この条文から「予約と受付と結果送付が中心になる」「繁忙期が特定の月に集中する」といった業務の詳細を導くことはできません。実際の担当範囲は募集ごとに違うので、求人票と面接で確かめる項目になります。
医療事務の経験がどこまで活きるかも、この違いから見当がつきます。受付と会計、書類の作成という事務の流れは共通しますが、診療報酬の請求事務が業務の中心にあるかどうかは、その健診センターが保険診療を併せて行っているかで変わります。
求人の見分け方と確かめること
確かめる事項は4つです。募集がどちらの枠なのか、資格が応募要件か歓迎要件か、加算の届出区分、そして健診センターなら受診者への対応がどこまで含まれるかです。
順に、どこを見て何を聞くのかを見ていきます。
1つめは、募集が診療記録管理者の枠なのか医療事務の枠なのかを見ることです。求人票の職種名と業務内容の欄を読み、疾病統計やコーディング、退院時要約の管理といった語が出てくれば前者、レセプトや窓口・会計が中心なら後者です。「医療事務(診療情報管理士資格歓迎)」のような書き方の場合は、実際に担当するのがどちらなのかを聞く必要があります。
2つめは、応募要件の欄で資格が必須と書かれているか歓迎と書かれているかです。ここが未経験から応募できるかどうかの分かれ目になります。必須になっている募集には資格を取ってからでないと応募できないので、先に医療事務の枠で入って在職中に取得する順序になります。
3つめが、加算の届出区分です。前のセクションで見たとおり、加算1と加算2では求められる体制が違います。求人票には書かれていないので、面接で「診療録管理体制加算はどちらを届け出ていますか」「専従の担当者は何名ですか」と聞きます。
4つめは、健診センターの募集の場合に、受診者への対応がどこまで含まれるかです。予約の受付だけなのか、当日の案内や検査の誘導まで入るのか、結果の作成と送付を担当するのか。健診センターによって範囲が変わるので、業務内容の欄に書かれていなければ確かめます。
この4つのうち、求人票で分かるのは募集の枠と応募要件までです。加算の届出区分と、健診センターでの担当範囲は面接で聞くことになります。掲載されていない条件を応募前に確かめたい場合は、医療機関の求人を扱うサービスを使う方法もあります。
よくある質問
Q. 診療情報管理士は国家資格ですか?
国家資格ではありません。日本病院会の診療情報管理士通信教育のサイトによれば、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)および医療研究推進財団の共同で認定された資格です。認定を受けるには、日本病院会の通信教育を修了するか、指定大学・指定専門学校の指定科目で指定単位を取得して卒業する必要があります。
Q. 医療事務と診療情報管理士は何が違いますか?
診療報酬の施設基準が業務を分けています。診療録管理体制加算の基準は、診療記録管理者の業務を診療情報の管理と入院患者についての疾病統計とし、診療報酬の請求事務や窓口の受付業務については業務としないと明記しています。医療事務の中心にあるレセプト作成と窓口業務が、制度上こちらの職種の業務から外れているということです。
Q. 未経験から診療情報管理士の求人に応募できますか?
求人票の応募要件が必須か歓迎かによります。資格が必須の募集には、資格を取得してからでないと応募できません。歓迎要件であれば、医療事務の経験を持って応募できる場合があります。まず医療事務の枠で入り、在職中に資格を取る順序を取る人もいます。
Q. 診療情報管理士の資格は働きながら取れますか?
日本病院会の通信教育は基礎課程1年、専門課程1年の計2年という構成で、受講期間は通算6年とされています。通信教育の形なので勤務を続けながら進められる設計です。ただし基礎課程の受講要件は原則として2年制以上の短期大学または専門学校卒以上の学歴で、病院勤務者は高卒でも受講できるとされているので、自分が要件に当てはまるかを先に確認することになります。
Q. 健診センターの事務は医療事務の経験が活かせますか?
受付と会計、書類の作成という事務の流れは共通します。ただし健診センターに来るのは症状のある患者ではなく、労働安全衛生規則にもとづいて事業者が実施する健康診断を受ける人です。診療報酬の請求事務が業務に入るかどうかは、その施設が保険診療を併せて行っているかで変わるので、業務内容の欄で確かめてください。
まとめ
医療事務の隣にある2つの専門枠は、どちらも制度の側に手がかりがあります。診療記録管理者は診療報酬の施設基準が業務の範囲を定めており、健診センターの事務は労働安全衛生規則にもとづく事業者の義務が需要の土台になっています。
押さえておきたいのは次の3点です。
- 診療報酬の施設基準は、診療記録管理者の業務から請求事務と窓口受付を明示的に除いている
- 加算1は年間の退院患者数2,000名ごとに1名以上という配置の基準があり、求人が出る病院の規模に関わる
- 診療情報管理士は国家資格ではなく、四病院団体協議会と医療研究推進財団の共同認定で、通信教育は2年の課程
今日できることとして、気になっている求人票を1件開いて、応募要件の欄に資格が必須と書かれているか歓迎と書かれているかを見てみてください。ここが分かれば、資格を取ってから動くのか、いまの経験で応募できるのかが決まります。