建設コンサルタントへの転職|施工との分業と技術士という資格の位置づけ
この記事の要約
建設コンサルタントは工事を施工する会社ではありません。厚生労働省の職業情報提供サイトは、土木設計技術者が調査・計画・設計を行い、現場での監督・指揮は土木施工管理技術者が行うのが一般的だと明記しています。会社の側は、扱う分野ごとに国土交通省の登録を受けています。登録は主に土木に関する21部門に分かれ、部門ごとに技術管理者を置くことが要件です。令和6年度末の登録業者数は3,930業者、技術管理者10,473名のうち86.1パーセントが技術士(および都市計画部門の一級建築士)で、この業界で資格の名前をよく見かける背景になっています。ここでは、この業態の位置づけと未経験の入口を制度と統計で整理します。
施工する会社ではない

建設や土木の実務経験がないまま、インフラに関わる仕事を探しているとします。応募先の候補に建設コンサルタントを入れようとしたとき、2つの点で迷うかもしれません。
ひとつは、ゼネコンや設計事務所と何が違うのかです。どれも土木や建築に関わる会社なので、募集の要項を読んでも、自分が担当する範囲がどこで分かれるのかが見えません。
もうひとつは資格のことです。この業界では技術士という国家資格が関わってくることまでは調べれば分かりますが、入るときに要るのか、入ってから取ればよいのかが分かりません。数年かけて取る前提の仕事なのかどうかで、応募するかどうかの判断が変わります。
どちらも、公的な情報の側に答えがあります。仕事の分かれ目は厚生労働省の職業情報に、資格が効いてくる理由は国土交通省の登録制度に書かれているので、求人票の印象で決める必要はありません。
なお、建設業界にどういう職種があるか、未経験から業界に入る場合の考え方は次の記事にまとめています。
分業の線は職業情報に書かれている
建設コンサルタントが担うのは調査・計画・設計で、現場の監督・指揮は施工側の仕事です。
厚生労働省の職業情報提供サイトには「建設コンサルタント」という職業の項目はありませんが、この業態で働く技術者にあたる職業として「土木設計技術者」が載っています。同サイトはこの職業について次のように記しています。「土木工事の規模が大きくなり、分業化が進んでいるため、所属先により多少の違いはあるが、土木設計技術者は調査・計画・設計の仕事を行い、現場での監督・指揮の仕事は土木施工管理技術者が行うのが一般的である。」
同サイトによれば、土木設計技術者の仕事は「橋、道路、鉄道、ダム、トンネルなど土木工事を進めるにあたって、調査・計画・設計を行う」ものです。工事現場の予定地へ出向いて測量やボーリング調査を行い、地形や地質の状態を調べます。気象条件や周辺環境といった自然条件に加えて、工事による経済効果や関係法令の規制などの社会経済的条件についても情報を集め、構造物の基本設計を立案して細部の設計を行います。
設計ができたら、設計図面や特記仕様書といった施工のために必要な書類を作成します。材料費と人件費を積算して工事費の見積りを行い、周辺の道路条件や周辺住民への影響に配慮しながら工期を設定します。用地の確保、周辺住民への説明、官公庁など関係機関への諸手続といった連絡・調整も業務に入ることがあります。
一方の土木施工管理技術者は、同サイトによれば「橋、道路、鉄道、ダムなどをつくる土木工事において、施工計画を立案し、工事の監督・指導をする」仕事です。
もし図面や報告書をつくる時間が長い働き方を想定しているなら、設計・計画側の募集が合っています。もし現場に立って工程と品質を管理する仕事を考えているなら、施工管理側の募集を見ることになります。求人票の業務内容がどちらを指しているかで、日々の時間の使われ方が変わります。
会社は扱う分野ごとに登録している
建設コンサルタントの会社は、扱う分野ごとに国土交通省の登録を受けています。道路、河川・砂防及び海岸・海洋、下水道、農業土木といった区分で、この登録が、応募先がどのインフラを扱う会社なのかを見分ける手がかりになります。
国土交通省の説明によれば、建設コンサルタント登録制度は「主に土木に関する21の登録部門の全部又は一部について建設コンサルタントを営む者が、一定の要件を満たした場合に、国土交通大臣の登録が受けられる制度」です。そして同省は「登録の有無に関わらず、建設コンサルタントの営業は自由に行うことができる」と明記しています。
登録を受けるための要件には、登録部門ごとに常勤かつ専任の技術管理者を置くこと、資本金と自己資本額が一定以上であることなどがあります。
工事を請け負う建設業には建設業法にもとづく許可の制度がありますが、建設コンサルタント登録はそれとは別で、登録がなくても営業自体はできる仕組みです。応募先が登録を受けているかどうかは、その会社の事業の性格を知る手がかりにはなりますが、登録の有無だけで会社を判断する材料にはなりません。
規模を数字で見ると、国土交通省の建設関連業登録業者数調査では、令和6年度末現在の建設コンサルタントの登録業者数は3,930業者です。当該年度中の新規登録が170業者、登録を消除したのが172業者で、前年度末の3,932業者と比べて2業者の減少となっています。
技術士が効いてくる理由
前のセクションで見たとおり、会社が登録を受けるには登録部門ごとに技術管理者を置く必要があります。その技術管理者を誰が務めているかを見ると、この業界で技術士という資格の名前をよく見かける理由が分かります。
同じ調査によれば、令和6年度末現在の建設コンサルタント登録における技術管理者の総数は10,473名です。資格の内訳は、各部門の技術士および「都市計画及び地方計画部門」の一級建築士が9,021名で86.1パーセント、国土交通大臣の認定を受けた者が1,452名で13.9パーセントとなっています。
| 技術管理者の資格 | 人数(令和6年度末) | 割合 |
|---|---|---|
| 各部門の技術士および都市計画及び地方計画部門の一級建築士 | 9,021名 | 86.1パーセント |
| 国土交通大臣の認定を受けた者 | 1,452名 | 13.9パーセント |
| 合計 | 10,473名 | — |
大臣認定を受けた技術管理者が多いのは、道路部門334名、河川・砂防及び海岸・海洋部門290名、鋼構造及びコンクリート部門185名、農業土木部門173名、下水道部門138名の順です。同調査はこの上位5部門で1,120名となり、大臣認定者全体の4分の3超を占めていると記しています。
その技術士がどういう資格かは、技術士法に定めがあります。同法2条1項は、技術士を「第三十二条第一項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者」と定義しています。登録を受けて名称を用いる仕組みの資格です。
未経験の入口はどこか

未経験から応募するときの枠は、技術管理者ではなく技術者としての採用です。技術管理者は会社が登録を維持するために置く役割で、実務経験を積んだ人が担います。応募の段階で求められるものは、それとは別に見ることになります。
厚生労働省の職業情報提供サイトは、土木設計技術者について「入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされないが、高校や大学で土木工学などを専攻し、構造力学、土質力学、コンクリート工学、水理学などの知識を身につけてから入職するのが一般的である」と記しています。入職の要件として資格が定められているわけではないものの、土木の基礎知識を身につけてから入職するのが一般的だ、という書き方になっています。
同サイトの学歴の分布(この職業で働いている人が多いと感じる学歴。複数回答)では、大卒が72.9パーセント、修士課程卒が18.8パーセント、高卒が14.6パーセント、専門学校卒が12.5パーセントとなっています。
資格については、技術士法が階段の形を定めています。同法4条は「技術士試験は、これを分けて第一次試験及び第二次試験とし、文部科学省令で定める技術の部門ごとに行う」とし、第一次試験に合格した者は技術士補となる資格を有し、第二次試験に合格した者は技術士となる資格を有すると定めています。
第二次試験を受けるには実務が要ります。同法6条2項は、技術士補として技術士を補助した期間が文部科学省令で定める期間を超える者か、監督の下で当該業務に従事した期間が文部科学省令で定める期間を超える者(技術士補となる資格を有する者に限る)が受験できるとしています。
第二次試験の受験に必要な実務経験の期間は、技術士法では「文部科学省令で定める期間」とされており、法律の条文からは年数が分かりません。実際に受験を計画する段階では、試験を実施する機関が公表している要件で確かめてください。
つまり、未経験から入る場合の順序は、まず技術者として採用され、実務に就きながら第一次試験を受け、経験を積んでから第二次試験に進む形になります。職業情報にも「土木設計技術者として経験を積み、『技術士』(建設部門)や『土木施工管理技士』などの関連資格を取得して、設計コンサルタント業として独立・開業する道もある」という記述があります。
求人と収入の見方
公的な統計で確かめられるのは職業単位の水準で、会社ごとの条件ではありません。
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、土木設計技術者の就業者数は263,870人(令和2年国勢調査)です。令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした数値では、労働時間が月162時間、賃金(年収)が625万円、年齢が46歳となっています。1時間あたりの賃金は一般労働者が2,993円、短時間労働者が1,767円です。
求人の側は、令和7年度のハローワーク求人統計で求人賃金(月額)が35.6万円、有効求人倍率が9.87です。土木施工管理技術者の有効求人倍率は15.74で、こちらのほうが高くなっています。
職業情報提供サイトは「統計データは必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています。賃金の数値は職業分類に対応するもので、土木設計技術者と土木施工管理技術者では年収も年齢も同じ値が示されているため、この数字で設計と施工管理の収入を比べることはできません。また年収625万円は残業代と賞与を含む額です。有効求人倍率はハローワークの求人にもとづく数字で、民間の求人媒体は含みません。
会社ごとの条件は、この統計からは分かりません。基本給の額、賞与の算定方法、資格手当の有無と金額は、求人票と面談で確かめることになります。
応募前に確かめること
確かめる事項は4つです。募集が設計・計画側か施工側か、その会社の登録部門、資格取得の支援、そして勤務地と出張の扱いです。
順に、どこを見て何を聞くのかを見ていきます。
1つめは、募集がどちら側かを業務内容の欄で見ることです。調査、計画、設計、報告書、積算といった語が並んでいれば設計・計画側、施工計画、工程管理、品質管理、現場代理人といった語が並んでいれば施工側です。会社名に「コンサルタント」が入っていても、部署によって両方を抱えていることがあるので、配属先の業務で判断します。
2つめは、その会社がどの登録部門を持っているかです。「会社は扱う分野ごとに登録している」で見たとおり登録は21部門に分かれており、道路なのか河川・砂防なのか、下水道なのかで扱うインフラが変わります。国土交通省は建設関連業の登録業者について情報提供システムを公開しているので、応募前に確認できます。
3つめが資格取得の支援です。技術士は実務経験を経て受験する資格なので、在職中に取ることになります。受験費用の負担、講習の受講、合格後の資格手当がどうなっているかを聞いておくと、入社後の見通しが立ちます。
4つめは勤務地と出張の扱いです。調査のために現場へ出向く業務があり、発注元が官公庁の場合は事業の所在地に合わせて動くことになります。拠点がどこにあるか、担当エリアはどう決まるか、宿泊を伴う出張がどれくらいあるかは、募集要項に書かれていなければ面談で確かめる項目です。
このうち登録部門は国土交通省の公開情報で調べられますが、資格取得の支援と出張の実際は、募集要項に書かれていなければ面談で聞くことになります。掲載されていない条件を応募前に確かめたい場合は、建設・土木の求人を扱うサービスを使う方法もあります。
よくある質問
Q. 建設コンサルタントとゼネコンは何が違いますか?
担当する工程が違います。厚生労働省の職業情報提供サイトは「土木設計技術者は調査・計画・設計の仕事を行い、現場での監督・指揮の仕事は土木施工管理技術者が行うのが一般的である」と記しています。建設コンサルタントが関わるのは工事の前段にあたる調査・計画・設計で、実際に工事を施工するのは建設会社の側です。
Q. 未経験から建設コンサルタントに転職できますか?
職業情報提供サイトは土木設計技術者について「入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされない」としています。ただし同じ記述に「高校や大学で土木工学などを専攻し、構造力学、土質力学、コンクリート工学、水理学などの知識を身につけてから入職するのが一般的である」とも書かれています。資格が入職の条件になっているわけではありませんが、土木の基礎知識を身につけてから入職するのが一般的だとされています。
Q. 技術士の資格は必須ですか?
入職の要件と、登録制度の技術管理者の要件は別です。建設コンサルタント登録では登録部門ごとに常勤かつ専任の技術管理者を置くことが求められ、令和6年度末時点でその86.1パーセントを技術士(および都市計画及び地方計画部門の一級建築士)が占めています。ただし13.9パーセントは国土交通大臣の認定を受けた者で、技術士以外のルートも制度上あります。
Q. 技術士はどうやって取りますか?
技術士法によれば、技術士試験は第一次試験と第二次試験に分かれ、文部科学省令で定める技術部門ごとに行われます。第一次試験に合格すると技術士補となる資格を得られます。第二次試験を受けるには、技術士補として補助した期間、または監督の下で業務に従事した期間が必要です。その期間は文部科学省令で定めるとされており、法律の条文には年数が書かれていません。
Q. 建設コンサルタントの年収はどのくらいですか?
職業単位の統計であれば確かめられます。厚生労働省の職業情報提供サイトが令和7年賃金構造基本統計調査をもとに示す土木設計技術者の賃金(年収)は625万円で、これは残業代と賞与を含む額です。ただし同サイトは統計データが必ずしもその職業のみを表すものではないと注記しており、会社ごとの条件は求人票と面談で確かめることになります。
まとめ
建設コンサルタントは工事を施工する会社ではなく、調査・計画・設計を担う業態です。この線は厚生労働省の職業情報に、業態の要件は国土交通省の登録制度に書かれているので、印象で判断する必要がありません。
押さえておきたいのは次の3点です。
- 分業の線は職業情報に明記されており、設計・計画側と施工側で担当する工程が違う
- 会社は扱う分野ごとに21部門の登録を受けており、応募先がどのインフラを扱うかを知る手がかりになる
- 会社が登録に置く技術管理者の86.1パーセントを技術士が占めるが、入職の要件として資格が定められているわけではない
今日できることとして、気になっている求人票を1件開いて、業務内容の欄が調査・計画・設計を指しているのか、現場の監督を指しているのかを見てみてください。ここが分かれば、その会社で自分が何をする日々になるのかの見当が立ちます。