女性が未経験からエンジニアへ|入口の職種で変わる働き方と求人票の見方
この記事の要約
IT未経験で、子育てと両立しやすい仕事としてエンジニアを検討している方に向けた記事です。在宅で働けて時間の融通が利くという説明はよく見かけますが、それがどの範囲まで当てはまるのかは、入口に選ぶ職種によって変わります。公的な職業情報で2つのIT職種を並べると、未経験から入りやすい側には客先常駐という形があり、雇用形態にも偏りがあることが数字に出ます。その違いを確認したうえで、求人票のどこを見て入口を選ぶかを整理します。
「エンジニアなら両立できる」の前に
この記事が想定しているのは、IT分野の実務経験がない状態から、子育てと両立できる仕事としてエンジニアを検討している方です。
エンジニアは在宅で働けて時間の融通が利く。子育てとの両立を考えるとき、そう説明されることがあります。実際にそういう働き方をしている人はいます。
ただ、その前提を数字で見ておきたいところです。総務省の情報通信白書によれば、テレワークを導入している企業の割合は47.3%です。半分に届いていません。これは全業種をあわせた値です。
もうひとつ押さえておきたいのが、エンジニアという職種名の幅です。同じ「エンジニア」でも、扱う仕事の中身と働き方は職種ごとに違います。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、IT関連の職業が細かく分けて登録されており、それぞれに別の統計が付いています。
つまり、両立できるかどうかは「エンジニアかどうか」では決まりません。どの職種を入口にするかで決まる部分が大きいということです。
子育てと両立しやすい仕事にどんな選択肢があるか、そして正社員で働き続けるための求人の探し方は、以下の記事で整理しています。
同じ「エンジニア」でも入口が違う

job tag に登録されているIT職種のうち、2つを並べてみます。設計・開発を担うシステムエンジニア(基盤システム)と、利用者のトラブル対応を担うヘルプデスク(IT)です。
| システムエンジニア(基盤システム) | ヘルプデスク(IT) | |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | ITインフラを設計・開発する | システムやIT機器のトラブル対応 |
| 学歴構成 | 大卒84.1% | 大卒60.8%/高卒13.7% |
| 必要な資格 | 必須資格なし | 学歴・資格は不要。IT関連知識が必須 |
| 就業形態 | 正規職員90.9% | 正規職員62.7%/契約社員21.6%/派遣社員17.6% |
| 就業者数 | 656,770人 | 207,400人 |
| 平均年齢 | 38.3歳 | 42.2歳 |
| 平均年収 | 889万円 | 609.8万円 |
| 労働時間 | 173時間/月 | 160時間/月 |
| 有効求人倍率 | 2.28 | 1.79 |
| 求人賃金 | 34.4万円/月 | 28.3万円/月 |
(出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag。就業者数は令和2年国勢調査、平均年齢・年収・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査、有効求人倍率と求人賃金は令和6年度)
未経験から入る側から見ると、右の列のほうが入口として現実的です。job tag はヘルプデスクについて、就業するにあたり特に学歴や資格は不要としています。一方の基盤システムのエンジニアは大卒が84.1%を占めており、資格が必須でないとはいえ、未経験からすぐに届く職種ではありません。
ここで注目したいのが、ヘルプデスクの仕事の内容に書かれている一文です。
システムやIT機器のトラブル対応を電話・メール・訪問で行う仕事として説明されており、そのなかに「客先に常駐するケースもある」と記載されています。
(出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「ヘルプデスク(IT)」)
つまり、未経験から入りやすい側の職種には、自社ではなく取引先の事業所で働く形が制度上ありうるということです。「エンジニアになれば在宅」という話とは、前提が違ってきます。
就業形態も対照的です。基盤システムのエンジニアは正規職員が90.9%を占めますが、ヘルプデスクは正規職員62.7%で、契約社員が21.6%、派遣社員が17.6%です。
就業形態の各値は合計が100%を超えます(区分の重複によるもの)。読み取ってほしいのは正確な内訳ではなく、正規職員の比重が両者で大きく違うという点です。また平均年収は職業単位の平均で、平均年齢38.3歳・42.2歳の層を含む値です。未経験で入った初年度の水準ではありません。
労働時間の差にも触れておきます。基盤システムのエンジニアが月173時間、ヘルプデスクが月160時間です。設計・開発側のほうが長い平均になっています。年収が高い側は時間も長い、という関係がここに出ています。
常駐と契約期間が両立に効く理由
前の節で出てきた客先常駐と、契約社員・派遣社員の比重。この2つは、両立を考えるときに直接効いてきます。
まず客先常駐です。働く場所が取引先の事業所になると、始業と終業の時間、在宅勤務の可否、休憩の取り方といった日々の運用が、自社の制度だけでは決まらなくなります。自社に在宅勤務の制度があっても、常駐先の運用がそれを前提にしていなければ、実際に使える範囲は変わります。子どもの急な発熱で早退や在宅対応が必要になったとき、誰に連絡してどう調整するのかも、自社勤務とは違う経路になります。
常駐という形そのものが両立を妨げるわけではありません。常駐先の環境が整っている場合もあります。確認しておきたいのは、その求人が自社勤務なのか常駐なのか、そして常駐ならその先の運用がどうなっているのかです。求人票の勤務地の欄が「プロジェクトにより異なる」「首都圏各所」のような書き方になっている場合、常駐の可能性があります。
次に契約期間です。ヘルプデスクでは契約社員と派遣社員をあわせた比重が正規職員に迫ります。契約に期間がある働き方では、更新の見通しが生活設計に直結します。保育園の継続利用や住居の契約と、雇用契約の期間が噛み合うかという問題が出てきます。
ここで扱っているのは制度が足りないという話ではありません。時短勤務や在宅勤務の制度が使えるかどうかは、それを使う前提が職場の側で揃っているかに左右されるという話です。制度の内容ではなく、その制度が機能する条件を求人の段階で見る、という視点になります。
正社員以外の働き方も含めて選択肢を比べたい場合は、以下の記事で整理しています。
未経験から入るときの順序
ここまでの内容を、未経験から入る場合の順序として整理します。
job tag が挙げている役立つ資格を見ると、ヘルプデスクではITパスポート、MOS、基本情報技術者が示されています。基盤システムのエンジニアでは基本情報技術者、応用情報技術者、システムアーキテクト、ネットワークスペシャリストです。前者は入口の知識を示すもの、後者は設計・開発の専門性を示すものという違いがあります。
現実的な順序としては、まずヘルプデスクや運用の側で機器やネットワークの実物に触れながら知識を積み、そのあとで設計・開発側に移るという道筋があります。job tag のデータでも、ヘルプデスクの平均年齢は42.2歳で、若手だけが就く職種ではありません。年齢を重ねてから入る人が一定数いる職種だと読めます。
一方で、この順序には時間がかかります。未経験からいきなり在宅で開発の仕事に就く、という筋道を示す材料はありません。学習の段階で在宅の求人だけに絞ると、応募できる候補がかなり狭くなる可能性があります。
入口の職種と、その先に移りたい職種を分けて考えておくと、求人の見方が変わります。入口では働き方の条件を優先し、移った先で在宅の比重を上げていく、という組み方もできます。逆に、最初から在宅を最優先にするなら、入口の候補が狭くなることを前提に探すことになります。
求人票で確認する項目

ここまで見てきた入口の違い、常駐と契約期間の影響をふまえて、応募前に確かめる項目をまとめます。
| 確認すること | 見る場所と理由 |
|---|---|
| 自社勤務か客先常駐か | 勤務地の欄。「プロジェクトにより異なる」「首都圏各所」は常駐の可能性がある |
| 常駐先での運用 | 面接で確認。在宅勤務や時間の調整が常駐先でも使えるか |
| 雇用形態と契約期間 | 雇用形態の欄。契約に期間がある場合、更新の条件と実績 |
| 在宅勤務の対象範囲 | 待遇欄。全社で使えるのか、特定の職種・等級に限られるのか |
| 在宅の頻度と連絡の前提 | 週何日か、コアタイムに即応が求められるか |
| 未経験者向けの研修 | 教育欄。入職後に何をどのくらいの期間で学ぶのか |
| 産育休の実績 | 制度の有無ではなく、取得と復帰の実績があるか |
このうち最初に見たいのは、自社勤務か客先常駐かです。ここが決まると、他の項目の意味も変わります。常駐なら、在宅勤務の制度があっても実際に使えるかは常駐先次第という前提で残りを読むことになります。
条件から求人を絞り込む段階では、女性向けの転職サイトを使う方法もあります。女の転職typeは、株式会社キャリアデザインセンターが運営する、長く正社員で働きたい女性を対象とした転職サイトです。求人の絞り込み条件に「リモートワークOK」「育児と両立しやすい」「月残業20時間以内」「産育休活用有」「時短勤務あり」があり、上の表の項目とそのまま対応します。扱う職種は営業・企画、サービス・販売、クリエイティブ、事務・経理・人事、技術・専門職、ITエンジニア、介護・医療・福祉の7区分で、ITエンジニアが含まれます。利用は無料です。
条件を組み合わせて候補を絞れる点が使いどころになります。ただし絞り込みの結果が少ない場合は、条件のどれを優先するかを決め直す必要があります。
よくある質問
Q. 未経験の女性でもエンジニアになれますか?
入口になる職種があります。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)はヘルプデスク(IT)について、就業するにあたり特に学歴や資格は不要としています(IT関連知識は必須)。学歴構成も大卒60.8%、高卒13.7%と幅があります。一方、設計・開発を担うシステムエンジニア(基盤システム)は大卒が84.1%を占めており、未経験からすぐに届く職種ではありません。入口とその先を分けて考えるほうが現実的です。
Q. エンジニアなら在宅で働けますか?
職種と配属によります。総務省の情報通信白書によれば、テレワークを導入している企業は47.3%で半数に届いていません。加えて、job tag はヘルプデスクの仕事の内容に「客先に常駐するケースもある」と記載しています。常駐の場合、自社に在宅勤務の制度があっても、実際に使える範囲は常駐先の運用に左右されます。求人票の勤務地の欄で自社勤務か常駐かを確認してください。
Q. 客先常駐だと何が変わりますか?
働く場所が取引先の事業所になるため、始業と終業の時間、在宅勤務の可否、休憩の取り方といった日々の運用が自社の制度だけでは決まらなくなります。子どもの急な発熱で調整が必要になったときの連絡経路も、自社勤務とは違います。常駐そのものが両立を妨げるわけではありませんが、確認する項目が増えます。
Q. 資格は必要ですか?
job tag では、どちらの職種も必須資格はないとされています。役立つ資格として、ヘルプデスクではITパスポート、MOS、基本情報技術者、システムエンジニア(基盤システム)では基本情報技術者、応用情報技術者、システムアーキテクト、ネットワークスペシャリストが挙げられています。入口の知識を示すものと、設計・開発の専門性を示すものという違いがあります。
Q. ヘルプデスクから開発に移れますか?
そういう順序で進む道筋はあります。ただし時間がかかります。job tag のデータでは、ヘルプデスクの平均年齢は42.2歳、システムエンジニア(基盤システム)は38.3歳です。ヘルプデスクは若手だけが就く職種ではなく、年齢を重ねてから入る人も一定数いると読めます。移った先で働き方の条件がどう変わるかは、その会社の制度と配属によります。
まとめ
エンジニアを子育てとの両立の選択肢として考えるうえで押さえておきたいのは、次の3点です。
第一に、両立できるかどうかは「エンジニアかどうか」では決まりません。テレワークを導入している企業は47.3%で半数に届いておらず、エンジニアという職種名の中にも働き方の違う職種が並んでいます。決まるのは入口に選ぶ職種のほうです。
第二に、未経験から入りやすい側には客先常駐と非正規の比重があります。job tag はヘルプデスク(IT)について学歴・資格は不要としつつ、仕事の内容に「客先に常駐するケースもある」と記載しています。就業形態は正規職員62.7%で、契約社員21.6%と派遣社員17.6%を含みます。設計・開発を担うシステムエンジニア(基盤システム)は正規職員90.9%ですが、大卒が84.1%を占めます。
第三に、制度の有無より制度が機能する条件を見てください。在宅勤務の制度があっても、常駐先の運用がそれを前提にしていなければ使える範囲は変わります。契約に期間がある場合は、更新の見通しが生活設計に関わります。
応募前にできることを1つ挙げるなら、求人票の勤務地の欄を読んで、自社勤務なのか客先常駐なのかを確かめることです。ここが決まると、在宅勤務や時間の調整について何を聞けばよいかも決まります。