北海道・北陸・沖縄電力の年収比較|数字が食い違う理由と転職事情
この記事の要約
北海道電力・北陸電力・沖縄電力の3社について、有価証券報告書に記載された平均年間給与と直近3期の推移を、同じ定義で横並びに整理します。検索すると同じ会社でも800万円台と500万円台という数字が並んで出てきますが、これは母集団が違うためで、その内訳も説明します。あわせて、3社で異なる事業環境とキャリア採用の募集分野、応募前に募集要項で確認したい項目まで扱います。
3社を同じ物差しで見る

北海道、北陸3県、沖縄。それぞれの地域で「地元では規模の大きい会社」として名前が挙がるのが、その地域の電力会社です。今の勤め先の待遇と比べてみたい、いずれ地元に戻るなら候補に入れたい、といった理由で年収を調べ始めた方もいるでしょう。
ところが調べ始めると、すぐに壁にぶつかります。同じ会社なのに、企業情報サイトでは800万円台、転職クチコミサイトでは500万円台と、200万円以上も違う数字が並んでいるからです。どちらかが間違っているように見えて、どちらを信じればよいのか判断がつきません。
もうひとつ困るのが、比較の相手がいないことです。1社だけを詳しく扱った情報は見つかっても、同じくらいの規模の地方電力どうしを、同じ物差しで並べたものはなかなか出てきません。地域が違えば事業の中身も採用の仕方も変わるため、1社の数字だけを眺めても、それが高いのか低いのか判断しづらいのが実際のところです。
1社の数字が高いのか低いのかは、比べる相手がいて初めて分かります。大手10社を同じ基準で並べた記事があるので、業界全体のなかでどのあたりに位置するのかを先に押さえておくと、個々の会社の数字も読み解きやすくなります。
3社の平均年収と推移
3社の平均年間給与は、いずれも800万円台前半にあります。有価証券報告書の2026年3月期(2025年度)の記載では、北海道電力が8,276,143円、北陸電力が8,260,680円、沖縄電力が8,079,519円です。3社の差は最大でも20万円ほどで、金額そのものには大きな開きがありません。
ただし、この数字は「誰の平均か」を添えないと比較になりません。同じ有価証券報告書に併記されている平均年齢と平均勤続年数を並べると、次のようになります。
| 会社 | 平均年間給与 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 8,276,143円 | 41.3歳 | 18.2年 | 2,400人 |
| 北陸電力 | 8,260,680円 | 41.4歳 | 20.1年 | 2,301人 |
| 沖縄電力 | 8,079,519円 | 43.9歳 | 21.2年 | 1,511人 |
(各社の有価証券報告書、2026年3月期)
沖縄電力は3社のなかで平均年間給与がもっとも低い一方、平均年齢は北海道電力より2.6歳高く、平均勤続年数も3年長くなっています。年功的な給与体系では勤続年数が長いほど平均は押し上げられるため、同じ年齢・同じ勤続年数の人どうしで比べたら差はもう少し広がる可能性があります。逆に北海道電力は、3社でもっとも平均勤続年数が短いのに平均年間給与が最も高い、という並びです。
直近3期の平均年間給与を並べると、3社とも右肩上がりで推移しています。
| 会社 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 7,543,900円 | 7,946,355円 | 8,276,143円 |
| 北陸電力 | 7,275,580円 | 8,021,087円 | 8,260,680円 |
| 沖縄電力 | 7,742,549円 | 7,863,882円 | 8,079,519円 |
(各社の有価証券報告書、各期の「従業員の状況」より)
3期での伸び幅は、北海道電力が約73万円、北陸電力が約99万円、沖縄電力が約34万円です。北陸電力は2025年3月期に前期から約75万円上がっていますが、この年の有価証券報告書には「従業員数及び臨時従業員数の区分について見直しを行っている」との注記があり、同時に平均年齢が43.0歳から41.4歳へ、平均勤続年数が21.9年から20.3年へ動いています。つまりこの伸びは、賃上げだけでなく平均を数える対象が変わったことも含んでいるため、そのまま昇給幅として読むことはできません。
年代別・役職別の年収は、3社とも公表していません。検索すると「30歳で〇〇万円」といった数字を載せたページも見つかりますが、出典が示されていない数字は、根拠をたどれないものとして扱ってください。
数字が媒体で食い違う理由
同じ会社の年収が媒体によって200万円以上違うのは、どちらかが間違っているからではなく、数える対象が違うからです。実際に並べてみると、開きの大きさがはっきりします。
| 会社 | 有価証券報告書(2026年3月期) | OpenWorkの回答者集計 | 集計対象 |
|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 約828万円 | 609万円 | 正社員106人 |
| 北陸電力 | 約826万円 | 562万円 | 正社員156人 |
| 沖縄電力 | 約808万円 | 582万円 | 正社員14人 |
(有価証券報告書は2026年3月期。OpenWorkの数値と回答者数は2026年8月時点の掲載内容)
差が生まれる理由は、大きく3つあります。
ひとつめは、集計する母集団の違いです。有価証券報告書の平均年間給与は、提出会社に在籍する従業員全員の平均で、賞与と基準外賃金(時間外手当など)を含みます。一方、クチコミサービスの数字は、そのサイトに投稿した人の自己申告を集計したものです。集計対象は北海道電力で106人、北陸電力で156人、沖縄電力で14人と、いずれも従業員数の1割未満にとどまります。とくに沖縄電力は1,511人に対して14人ですから、平均値としての安定性は高くありません。
ふたつめは、平均年齢と勤続年数です。3社の平均年齢は41〜44歳、平均勤続年数は18〜21年です。つまり有価証券報告書の800万円台という数字は、新卒で入社して20年前後働いている層を含んだ平均であり、20代や30代で中途入社した直後にこの額になるわけではありません。投稿が若手中心に偏れば、クチコミ側の平均が低く出るのは自然なことです。
みっつめは、「提出会社」の範囲が3社で違うことです。北海道電力と北陸電力は、送配電部門をそれぞれ北海道電力ネットワーク株式会社、北陸電力送配電株式会社として分社しています。有価証券報告書の平均年間給与は提出会社の従業員が対象なので、これらの送配電子会社の従業員は含まれません。実際、北海道電力の連結ベースの従業員数は2026年3月末時点で9,239人ですが、そのうち提出会社にあたる「北海道電力」セグメントは2,400人で、北海道電力ネットワークの2,686人は別に数えられています。これに対し沖縄電力は、沖縄地域の電気事業の特殊性を踏まえた例外規定により送配電部門を分社しておらず、同じ「提出会社の平均年間給与」でも含まれる人の範囲が他2社と異なります。
数字を見比べるときは、それが全社員の平均なのか回答者の平均なのか、そしてどの会社の従業員を数えたものなのかを確かめてから並べる。この2点を押さえるだけで、見かけ上の矛盾はほとんど解消します。
3社で違う地域の事情

3社の給与水準が近い一方で、事業環境は大きく異なります。入社後に何を担う会社なのか、そして今後の収支がどんな要因に左右されるのかは、地域ごとに事情が分かれます。
北海道電力
北海道電力は、泊発電所の停止が長く続いてきた点が収支の前提になっています。電気事業連合会がまとめている再稼働に向けた対応状況によると、泊発電所3号機は2025年7月に原子炉設置変更許可を取得し、1号機・2号機は審査中です。3号機については防潮堤の設置工事などが進む段階で、許可を得たことは再稼働そのものを意味しません。
2026年3月期の連結決算は、売上高8,559億円、経常利益613億円で、いずれも前期を下回りました。会社が公表している2027年3月期の予想では、経常利益は300億円と前期比で半減の見通しが示されています。給与が下がると決まっているわけではありませんが、業績の見通しがこう置かれていることは知っておいたほうがよい材料です。
北陸電力
北陸電力は、志賀原子力発電所2号機が審査中、1号機は未申請という状況です。加えて、2024年1月の能登半島地震と同年9月の奥能登豪雨の影響を受けており、有価証券報告書には仮復旧費用に対する災害等扶助交付金が特別利益として計上されています。
同社の連結経常利益は、2021年度がマイナス176億円、2022年度がマイナス937億円と2期続けて赤字でしたが、2023年度に1,079億円へ回復し、2024年度913億円、2025年度850億円と推移しています。平均年間給与が727万円台から802万円台へ上がった時期は、この業績回復の時期と重なります。ただし727万円台から802万円台へ動いた2025年3月期は、従業員数の区分見直しによって集計対象そのものが変わった年でもあるため、業績回復が給与を押し上げたと断定はできません。なお2026年度は、七尾大田火力発電所2号機の停止長期化などにより、連結経常利益を350億円と見込んでいます。
沖縄電力
沖縄電力の際立った特徴は、電力系統が本土とつながっていないことです。同社の説明によれば、他エリアの電力系統と接続していないため広域融通の枠外にあり、高い供給予備力を自社で確保する必要があります。供給しているのは沖縄本島を含む38の有人離島で、11の独立した電力系統を単独で運用しています。
地理的な制約から水力や原子力の開発が難しく、太陽光を設置できる土地も限られるため、電源は化石燃料への依存が避けにくい構造です。需要面では、工場などの産業用より、家庭やホテルといった民生用の比重が大きいという特性があります。設備の保守・運用が地理的に分散した現場で必要になる点は、仕事の中身に直結する違いです。
電力会社の給与は、燃料価格や発電所の稼働状況によって左右されてきた実績があります。3社とも直近3期は上昇していますが、過去の水準がそのまま続く前提で考えないほうが安全です。
中途採用の募集分野
3社とも新卒採用が中心ですが、経験者向けの採用枠は設けられています。ただし募集の出し方は3社で違います。
北海道電力は、新卒採用や高専卒・高卒採用と並べて「経験者採用」を独立した区分として案内しており、募集職種は事務系職と技術系職の2つです。初任給は学歴・年齢・経験などにより決定され、入社日は個別に相談する形になっています。北海道電力ネットワークと共同で実施している点も特徴です。
北陸電力は、キャリア採用の募集分野を電気・電子、機械、情報、化学、土木、建築、原子力、その他理系、事務の9区分に分けています。募集は北陸電力・北陸電力送配電を含むグループ各社ごとに行われ、会社によって募集職種が異なります。技術系の分野が細かく分かれているぶん、自分の専門がどの区分に当たるかを確認しやすい形式です。
沖縄電力の中途採用は、募集職種が技術系総合職と事務系総合職の2つで、前職の経験や希望、業務適性を考慮して配属先が決まります。応募資格には年齢要件があり、原則として基準日時点で30歳未満の既卒者が対象です。給与は25〜30歳のモデルで月給240,000円〜310,000円(賞与を除く、固定残業代なし)と示されています。ただし2026年8月時点では「応募受付期間外」と案内されており、常時募集しているわけではありません。
もしあなたが同じ地域で腰を据えて働きたいのであれば、この3社は主たる勤務地が自社の供給区域内に収まるため、全国転勤のある企業と比べて生活の基盤を動かさずにキャリアを積みやすい環境だといえます。一方で、地方の電力会社は採用の規模自体が大きくないため、希望のタイミングで募集が出ているとは限りません。各社の採用ページを定期的に確認しつつ、転職エージェントに希望条件を登録して募集が出たときに連絡をもらえるようにしておくと、機会を逃しにくくなります。登録と初回の面談は無料で受けられます。
初任給・手当・転勤の違い
応募を考える段階になると、平均年収より募集要項の中身のほうが判断材料になります。3社の公式採用サイトに記載された条件を並べると、次のような違いがあります。
| 項目 | 北海道電力 | 北陸電力 | 沖縄電力 |
|---|---|---|---|
| 初任給(大学卒) | 250,000円 | 250,000円 | 230,000円 |
| 初任給(大学院卒) | 274,000円 | 270,000円 | 235,000円 |
| 昇給 | 年1回(4月) | 年1回(4月) | 年1回(4月) |
| 賞与 | 年2回(6月・12月) | 年2回(6月・12月) | 年2回(6月・12月) |
| 記載のある地域性のある手当 | 燃料手当 | 勤務地手当 | 地域手当 |
| 勤務地 | 北海道、東京都など | 富山・石川・福井・岐阜、東京都内 | 沖縄県内各事業所、東京支社 |
(各社の新卒採用ページの記載。初任給は北海道電力が2026年4月、北陸電力・沖縄電力が2026年度)
昇給と賞与の回数は3社とも同じで、差が出るのは初任給と手当です。大学卒の初任給は、北海道電力と北陸電力が250,000円、沖縄電力が230,000円と2万円の差があります。なお北陸電力は総合職とプロフェッショナル職で初任給が分かれており、上の表は総合職の額です。沖縄電力は高専・短大・専門卒の区分(204,000円)も公表しています。
手当で目を引くのが、北海道電力の募集要項に記載されている燃料手当です。北海道で暮らすなら冬の暖房費は家計に直接効いてくるため、額面の給与表には表れないこの種の手当が、実際の可処分所得を左右します。北陸電力の勤務地手当、沖縄電力の地域手当も同様に、勤務地によって支給の有無や額が変わる性質の手当です。
転勤の範囲は3社とも供給区域内が基本で、加えて東京の事業所・支社が勤務地として挙げられています。北陸電力の勤務地に岐阜県が含まれるのは、同社の供給区域が富山・石川・福井の3県に岐阜県の一部を加えた範囲だからです。「地元から一歩も出ない」と考えるのではなく、供給区域プラス東京、という前提で見ておくのが実態に近い読み方です。
もうひとつ確認したいのが、応募先が親会社なのか、送配電子会社やグループ会社なのかという点です。この記事で扱った平均年間給与はいずれも提出会社(北海道電力株式会社、北陸電力株式会社、沖縄電力株式会社)の数字であり、北海道電力ネットワークや北陸電力送配電に応募する場合は、給与水準も勤務条件も別の会社のものになります。求人票の社名は最初に確かめておいてください。
向いているのは、その地域で長く働きたい人、電力設備の保守・運用や地域のエネルギー事業に関心がある人です。逆に、いずれその地域を離れる可能性がある人や、全国規模で異動しながらキャリアを広げたい人には合いません。その場合は、大手10社の水準を並べた以下の記事で他社も含めて検討したほうが、選択肢を広く取れます。
よくある質問
Q. 北海道電力(北電)の平均年収はいくらですか?
有価証券報告書の2026年3月期の記載では8,276,143円です。この数字は提出会社に在籍する2,400人の平均で、平均年齢41.3歳・平均勤続年数18.2年の集団の平均額にあたります。賞与と基準外賃金を含んだ金額です。
Q. 30歳や35歳ではどのくらいもらえますか?
3社とも年代別の給与は公表していないため、確かな数字は示せません。公表されているのは、新卒の初任給(大学卒で230,000円〜250,000円)、昇給が年1回、賞与が年2回という制度の骨格までです。中途入社の場合は、沖縄電力が25〜30歳のモデルとして月給240,000円〜310,000円を示しており、他2社は学歴・年齢・経験により決定するとしています。
Q. 高卒でも応募できますか?
新卒採用については、沖縄電力が高専・短大・専門卒の初任給を204,000円として公表しており、この区分での採用があることが分かります。北海道電力は新卒採用とは別に高専卒・高卒採用の区分を設けています。中途採用の応募資格は募集ごとに異なるため、その時点の募集要項で確認してください。
Q. 3社のなかでいちばん年収が高いのはどこですか?
2026年3月期の平均年間給与では北海道電力が最上位ですが、差は北陸電力と約2万円、沖縄電力と約20万円です。ただし平均年齢は北海道電力41.3歳に対して沖縄電力43.9歳、平均勤続年数も18.2年に対して21.2年と条件が揃っていません。年齢や勤続年数を揃えて比べた場合の順位は、公表データからは分かりません。
Q. 中途採用の難易度は高いですか?
倍率などの数字は3社とも公表していないため断定はできませんが、採用の規模が大きくない点と、募集分野が限られる点は事実として押さえておく必要があります。沖縄電力は2026年8月時点で応募受付期間外であり、応募資格にも年齢要件が設けられています。募集が出るタイミング自体が限られるという前提で準備を進めるのが現実的です。
まとめ
北海道電力・北陸電力・沖縄電力の平均年間給与は、2026年3月期でいずれも800万円台前半に収まり、3社の差は最大でも20万円ほどでした。差がはっきり出るのは金額よりも、平均年齢と勤続年数、送配電部門を分社しているかどうか、そして各地域の事業環境のほうです。
次にやることは、各社の採用ページで直近の募集要項を開き、応募先の社名と勤務地の範囲、そして手当の記載を3社ぶん見比べることです。沖縄電力のように受付期間が限られる会社もあるため、今すぐ応募しない場合でも、募集が出たときに気づける状態にしておくと動きやすくなります。