会計事務所の求人を未経験から探す|職種名の違いと繁忙期の理由
この記事の要約
会計事務所の求人に並ぶ「税務会計スタッフ」「税理士補助」「会計事務所スタッフ」といった職種名は、表記の揺れではなく担当する範囲の違いを表しています。この記事では、その線引きがどこから来るのかを税理士の業務範囲から整理したうえで、きついと言われる理由を申告期限という制度から説明し、未経験で見られる要件、求人の探し方、入所後に後悔につながる3つの確認漏れまで扱います。
会計事務所を選択肢に入れたら
事務職への転職を考えるなかで、会計事務所という選択肢が視界に入ってきた。そこから先で足が止まる場所は、だいたい決まっています。
求人サイトを開くと、「税務会計スタッフ」「税理士補助」「会計事務所スタッフ」「データ入力事務」といった名前が並びます。どれも会計事務所の募集なのに、名前が違う。同じ仕事に別の名前が付いているのか、それとも違う仕事なのかが、求人票を眺めているだけでは判断できません。
さらに検索窓に「会計事務所」と入れると、候補に「未経験 きつい」「激務」が続けて出てきます。応募してみたい気持ちと、入ってから続かなかったらどうしようという気持ちが両方あって、決めきれない。簿記3級は持っている、あるいはこれから学ぼうとしている段階で、それで足りるのかも分かりません。
事務職の正社員求人を20代未経験から探す進め方や、使う転職サイトの選び方そのものは、以下の記事にまとまっています。
求人の職種名と担当範囲
求人票に並ぶ職種名は表記の揺れではなく、担当する範囲の違いを表しています。その線引きの根拠は、税理士という資格の制度にあります。
まず用語を整理します。会計事務所、税理士事務所という呼び名は、いずれも税理士が開設した事務所を指して使われます。税理士法人は、これを法人の形にしたものです。求人サイトの検索では「会計事務所」と「税理士事務所」で別の結果が出ることがあるため、両方の語で探すほうが取りこぼしが減ります。
そのうえで、事務所の仕事がどう分かれるのかを見ていきます。日本税理士会連合会は税理士の仕事として、税務代理(依頼者を代理して確定申告や税務調査の立会いなどを行う)、税務書類の作成(確定申告書や相続税申告書などを依頼者に代わって作成する)、税務相談(税金について相談に応じる)を挙げています。そして、これらの税理士業務に付随して財務書類の作成や会計帳簿の記帳代行といった会計業務を行う、と説明しています。
制度上、税理士業務を行おうとする者は税理士登録を行い、税理士会に入会しなければ原則として業務を行えません。1956年(昭和31年)の税理士法改正で定められた仕組みです。ここから導かれるのは、無資格の職員が担当するのは、税理士の確認を前提とした補助と、付随する会計業務が中心になるということです。求人票の職種名は、このどのあたりを担当するかを表しています。
税務会計スタッフ・税理士補助
顧問先の記帳内容の確認、試算表の作成、申告書作成の補助、顧問先への訪問などを担当します。求人票では訪問業務を「巡回監査」と呼んでいることがあります。
この職種で扱う書類は、最終的に税理士が確認して提出するものです。判断を伴う工程には税理士が入るため、職員が単独で税務の判断を完結させることはありません。そのぶん、未経験で入っても税務の実務に触れる機会が生まれやすい職種でもあります。
会計事務所スタッフ・一般事務
顧問先からの資料の受け渡し、電話や来客の対応、書類の整理と保管、提出書類の準備といった事務を担当します。
税務の判断そのものには関わらない範囲です。事務職としての経験は積めますが、税務の実務がどこまで身につくかは事務所によって差があります。募集要項に業務内容がどこまで細かく書かれているかを見てください。
データ入力・記帳代行
顧問先から預かった領収書や通帳のコピーなどをもとに、事務所が使用する会計ソフトへ入力する業務です。未経験の入口として募集されることが多い職種になります。
もしあなたが求人票の業務内容に「入力」「データ入力」としか書かれていない事務所を見ているなら、その求人は税務の実務に触れる範囲が限られている可能性があります。数年後に何を担当できるようになるのかを、面接で確認する価値があります。
きつい・激務と言われる理由

会計事務所がきついと言われるのは、仕事量が年間で均されておらず、期限が特定の時期に重なるためです。この構造は制度から説明できます。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、税理士の労働条件の特徴として「2月中旬から3月中旬の所得税の確定申告の時期と、法人税の申告が集中する5月が最も忙しい」と記しています。つまり繁忙期が年に2回来ます。これは税理士についての記述ですが、事務所の仕事が同じ期限に従って動く以上、職員の忙しさも同じ周期になります。
なぜ5月なのかは、法人税の申告期限から分かります。国税庁の手続案内によると、法人税の確定申告書の提出期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。決算日が3月31日の法人であれば、5月末が期限になります。所得税の確定申告のほうは、毎年2月中旬から3月中旬が申告の時期です。
この2つの山が重い理由は、期限そのものよりも仕事の集まり方にあります。
1つめは、1人が顧問先を複数担当することです。同じ期限が担当する会社の数だけ同時に来るため、1件あたりの作業時間が短くても総量が積み上がります。
2つめは、資料の到着が自分で管理できないことです。顧問先から領収書や通帳のコピーが届かなければ作業を始められず、遅れた分は後ろの工程に寄っていきます。
3つめは、期限が動かせないことです。国税庁の案内にも、提出期限が土日祝に当たる場合は翌日が期限になるという例外はあっても、事務所の都合で延ばせるものではありません。
ただし、負荷の程度は事務所によって違います。顧問先の件数、職員1人あたりの担当数、繁忙期の人員体制はそれぞれです。応募の段階で「繁忙期の残業は月あたりどのくらいですか」「担当は1人何件くらいですか」と聞いておくと、入る前に見積もりが立ちます。
未経験で評価される要件
未経験の応募では、次の3つの要素を組み合わせて判断されます。
1つめは簿記です。日本商工会議所の簿記検定は1級・2級・3級と簿記初級・原価計算初級で構成されています。公式のレベル定義では、3級は業種・職種を問わずビジネスパーソンが身に付けておくべき必須の基本知識で、基本的な商業簿記を修得するレベル。2級は高度な商業簿記・工業簿記を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるレベルとされています。1級は、会計基準や会社法などの企業会計に関する法規を踏まえて経営管理や経営分析を行うために求められるレベルとされ、合格すると税理士試験の受験資格が得られます。
ここで大事なのは、級そのものより求人票のどこに書かれているかです。応募資格(必須要件)に「日商簿記2級以上」とあるのか、歓迎要件として挙げられているのかで意味が変わります。歓迎要件であれば、3級でも応募の対象に入ります。「2級がないと会計事務所に入れない」という一般化はできません。
2つめはPCスキルです。記帳代行では会計ソフトへの入力が業務の中心になるため、入力の速さと正確さが直接評価されます。応募前に、Excelで何ができるか(関数をどこまで使えるか、表をどう整えられるか)を言葉にしておいてください。会計ソフトの使用経験があれば、ソフト名と何の入力をしていたかまで書けると伝わり方が変わります。
3つめは顧問先とのやり取りです。訪問や電話での応対が発生する事務所では、事務処理の力だけでなく、相手から必要な資料を期限までに出してもらう働きかけも仕事のうちになります。前職が接客や営業であれば、この部分は接続します。
この3つに加えて、面接で税理士試験を受験する意思があるかを聞かれることがあります。背景には試験の制度があります。国税庁によると、税理士試験は会計学に属する科目2科目と税法に属する科目3科目の計5科目で構成され、合格した科目は生涯有効です。5科目を一度に受験する必要はなく、1科目から始められます。job tag も、税理士試験は科目ごとに合格していけばよいため、受験のために専門学校で勉強し数年かけて資格取得に至る、という進み方を紹介しています。働きながら1科目ずつ受験している職員がいるのは、この仕組みがあるためです。
受験しない場合でも、応募そのものに支障はありません。ただし聞かれたときに黙り込まずに済むよう、受験しない代わりに何で貢献するのか(入力の正確さ、顧問先対応、事務の効率化など)を用意しておくと話が進みます。
求人の探し方と相談先

会計事務所の求人は、総合型の求人サイトだけを見ていると、事務所の規模や担当範囲が分からないまま応募することになります。母数を見る動線と、事務所ごとの内情を聞ける動線を併走させてください。ここでは3つのサービスを挙げます。
| サービス | 運営形態 | 確認しやすいこと |
|---|---|---|
| MS-Japan | 転職エージェント(管理部門・士業特化) | 会計事務所と事業会社の管理部門の比較 |
| ヒュープロ | 求人メディア+エージェント(士業・管理部門特化) | 事務所単位の情報と自分での検索 |
| マイナビ転職エージェント | 転職エージェント(総合型) | 会計事務所以外の事務職との比較 |
MS-Japan
株式会社MS-Japanが運営する、管理部門と士業に特化した転職エージェントです。対象職種は、経理・財務・人事・総務・法務・経営企画・内部監査・情報システムなどの管理部門と、弁護士・公認会計士・税理士などの士業。求人紹介、応募書類の添削、面接対策、キャリア相談、年収交渉の支援を提供しています。利用は無料です。
管理部門と士業の両方を扱っているため、会計事務所と事業会社の経理を横に並べて比べられます。会計事務所に絞りきれていない段階で相談する先として使えます。
ヒュープロ
株式会社ヒュープロが運営する、士業・管理部門に特化した転職サービスです。求人メディアとキャリアエージェントの両方の機能を持ち、税理士・公認会計士・社会保険労務士・弁護士などの士業職種と、経理・財務・人事・労務・法務などの管理部門職を扱います。求人情報の検索と閲覧、非公開求人へのアクセス、専任エージェントによる転職サポートを提供しており、会員登録から転職サポートまで無料です。
自分で求人を検索する機能を持っている点が、この記事の趣旨からいうと使いどころです。求人票の業務内容の欄を自分の目で読み比べ、判断を伴う工程が書かれているかを確かめる作業に向いています。
マイナビ転職エージェント
株式会社マイナビが運営する総合型の転職エージェントです。対象層として、はじめての転職者、20代〜30代、第二新卒が挙げられています。キャリア相談、公開求人と非公開求人の紹介、応募書類の添削、面接対策、企業との日程調整、年収交渉、入社後のフォローまで対応します。利用は無料で、企業から支払われる紹介手数料によって運営されています。
会計事務所だけに絞らず、一般事務や営業事務も含めて比べたい場合の相談先です。会計事務所が自分に合うかを決めきれていないなら、こちらで事務職全体の求人を見てから絞るという順序もあります。
後悔につながる3つの確認漏れ
入ってから合わなかったと感じる理由は、事前に確認できたはずのところに集中しています。3つ挙げます。
1つめは、繁忙期の残業が生活の前提を変えることです。前の章で見たとおり、2月中旬から3月中旬と5月に山が来ます。育児や介護など時間の制約がある場合、この時期の勤務がどうなるかを確認せずに入ると齟齬が出ます。「繁忙期の残業実績」と「その時期の休日出勤の有無」を、面接で数字として聞いておいてください。
2つめは、事務所の規模で担当範囲が大きく変わることです。少人数の事務所では1人が記帳から申告書の補助まで幅広く担当するため、覚えることは多いものの経験は早く積み上がります。規模の大きい税理士法人では担当が細分化され、特定の工程を長く担当することがあります。どちらが良いという話ではなく、自分が求めるものと合うかどうかです。応募先の職員数と、入社後1年目に担当する範囲を確認してください。
3つめは、目指す方向が事務所の育て方と噛み合わないことです。資格取得を前提に人を育てる事務所では、担当範囲も研修も税理士を目指す前提で組まれます。事務職として腰を据えて働きたい人がここに入ると、期待されるものと自分が望むものがずれていきます。逆に、入力中心の求人に専門職志向で入れば物足りなくなります。事務職として長く働きたいのか、資格を取って専門職に進みたいのかを応募前に決めておくと、事務所選びの基準がひとつ定まります。
もう1つ、求人票の読み方として付け加えておきます。「未経験歓迎」と書かれていても、業務内容が入力補助に限られている求人があります。この場合、事務の経験にはなりますが、税務の実務としては積み上がりにくくなります。業務内容の欄に、判断を伴う工程(試算表の作成、申告書作成の補助、顧問先への説明など)が書かれているかを見てください。書かれていなければ、面接で「1年目、3年目にそれぞれ何を担当しますか」と聞くと輪郭が見えます。
よくある質問
Q. 会計事務所で数年働いた後、どんな進路がありますか?
大きく2つに分かれます。1つは税理士を目指す道で、job tag によると税理士になるには税理士試験に合格したうえで2年間の実務経験(合格前の経験でも可)を経て、日本税理士会連合会への登録と税理士会への入会が必要です。事務所での勤務期間はこの実務経験に充てられます。もう1つは事業会社の経理や管理部門へ移る道で、複数の顧問先を見てきた経験が判断材料になります。どちらを選ぶかで、在職中に何を担当しておくべきかが変わります。
Q. 会計事務所のパートは未経験でも務まりますか?
担当範囲によります。入力や資料整理に限定された募集であれば、未経験からでも始めやすい内容です。確認しておきたいのは繁忙期の勤務時間で、2月から3月と5月に勤務日数や時間の増加を求められる場合があります。募集要項に記載がなければ、面接で繁忙期の勤務条件を聞いてください。
Q. 事業会社の経理と会計事務所は何が違いますか?
見る対象が違います。事業会社の経理は自社の数字を扱い、会計事務所は複数の顧問先の数字を扱います。顧問先ごとに業種も会計ソフトの使い方も変わるため、担当件数のぶんだけ覚える範囲が広がる一方、幅広い業種の帳簿に触れられます。
まとめ
会計事務所の求人を未経験から探すときに押さえておきたいのは、次の3点です。
- 職種名は担当範囲を表している
- 税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務であり、無資格の職員が担当するのは補助と付随する会計業務が中心になります。求人票の職種名と業務内容の欄で、どこまで担当するのかを読み取ってください。
- 繁忙期は年に2回来る
- 2月中旬から3月中旬の所得税の確定申告と、法人税の申告が集中する5月です。期限は動かせないため、繁忙期の残業実績を応募前に確認しておきます。
- 見られるのは簿記の級だけではない
- 級が必須要件か歓迎要件かで意味が変わります。あわせて、会計ソフトやExcelで何ができるか、顧問先とのやり取りに対応できるかも判断材料になります。
まずは気になる求人を1件開いて、業務内容の欄に判断を伴う工程が書かれているかを確認してみてください。入力だけで終わっているのか、試算表の作成や申告書の補助まで書かれているのかで、数年後に手元に残るものが変わります。