60歳を過ぎてからの仕事|男性の賃金の下がり方と資格で変わる求人
この記事の要約
60歳を過ぎてからの仕事を考えるとき、先に押さえておきたいのは職種の一覧ではなく、収入と雇用形態がどう変わるかです。男性の賃金は55歳から59歳がピークで、60歳から64歳にかけて月額で大きく下がります。働き続けている人の割合は高い一方、雇用形態は非正規に移ります。この記事では、その落差を賃金構造基本統計調査の実数で示したうえで、資格が要る仕事と要らない仕事で求人賃金と有効求人倍率がどう違うかを設備・管理系の2職種で比べ、これまでの経験のうち何が持ち込めるかまでを整理します。
60歳を過ぎて何を選ぶか
60歳を迎えて、この先も働くことは決めた。決めたはいいものの、収入がどこまで落ちるのかが読めないままだと、家計の見通しが立ちません。住宅ローンが残っているか、子どもの学費が終わっているか。人によって前提は違いますが、いくら下がるのかが分からないと、そもそも何を条件に仕事を選べばいいのかも決まりません。
では何を条件に選ぶか。その段になると、次の2つでつまずきます。
1つは、目にした求人票の金額が妥当な水準なのか判断できないことです。自分の給与と求人票の月給を並べれば、その1件でいくら下がるかは出ます。ただ、それが60歳を越えれば誰にでも起きる下がり方なのか、その求人が相場より低いだけなのかは、1件を見ただけでは決められません。もう1つは、「シニア歓迎」と書かれた求人を開いても、これまで自分がやってきた仕事がその募集のどこにつながるのかが判断できないことです。職種名は分かる。でも、自分の30年が評価される部分がどこにあるのかが読み取れません。
60歳前後で、正社員として長く働いてきて、この先も働くと決めている。その状況でまず必要になるのは、職種の候補ではなく、収入と雇用形態がどう変わるかの数字です。いま勤めている会社に残るか外に出るかを制度から比べたい段階であれば、再雇用と再就職の違いや年金との兼ね合いを扱った記事のほうが先に役立ちます。
60代の仕事探しを、職種の全体像や年金による収入の壁、探し方の窓口まで含めて見渡したい場合は、以下の記事がその全体をまとめています。
60歳で賃金はどう下がる

男性の賃金は55歳から59歳がピークで、そこから60歳から64歳にかけて月額で87.1千円下がります。まずこの落差を、自分の給与明細と突き合わせるところから始めます。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」の性・年齢階級別賃金をみると、男性の賃金は55歳から59歳の445.6千円がピークで、その後は下降します。60歳から64歳は358.5千円、65歳から69歳は304.3千円です。
| 年齢階級 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 50歳から54歳 | 437.5千円 | 305.4千円 |
| 55歳から59歳 | 445.6千円 | 305.7千円 |
| 60歳から64歳 | 358.5千円 | 270.8千円 |
| 65歳から69歳 | 304.3千円 | 240.7千円 |
この表から差額を計算すると、男性は55歳から59歳と60歳から64歳のあいだで月87.1千円、率にして19.5%下がります。所定内給与額を12倍した金額で言えば年104.5万円分です。65歳から69歳まで見ると、ピークからの下げ幅は月141.3千円、率にして31.7%になります。
同じ表の女性は、55歳から59歳の305.7千円から60歳から64歳の270.8千円へ、月34.9千円の減にとどまります。率にすると11.4%です。男性のほうがピークの水準が高い分、60歳を越えたときの下げ幅も大きくなります。同じ60歳という節目でも、家計に効いてくる金額は男女で倍以上の開きがあるということです。
ここで1つ、数字の読み方を押さえておいてください。この概況が「賃金」と呼んでいるのは、令和7年6月分として支払われた所定内給与額の平均です。残業代と賞与は含まれていません。集計の対象は、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所です。年収に読み替えると別の数字になるので、賞与の有無や残業の量が変わる場合は、そこも別に見積もる必要があります。
そして、これはあくまで全国の平均です。会社によっても雇用形態によっても差があり、この率がそのまま自分に当てはまるわけではありません。自分の数字を出すには、給与明細のうち基本給と役職手当など毎月決まって支払われる項目を合計し、そこから2割前後を引いた額を目安にします。その額で1か月の家計が回るかどうかが、条件を決めるときの最初の基準になります。
働き方が非正規に変わる
60歳を過ぎても働いている男性は多く、変わるのは働く量ではなく雇用形態です。
内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年の就業率は男性の60歳から64歳で84.0%、65歳から69歳で62.8%、70歳から74歳で43.8%です。女性は同じ年齢階級で65.0%、44.7%、27.3%となっています。60歳から64歳の男性は、10人のうち8人以上が働いている計算になります。
一方で、同じ白書は、非正規の職員・従業員の比率が男性では60歳を境に上昇し、65歳から69歳で67.8%になると示しています。女性は同じ年代で83.2%です。65歳以上の就業者数は21年連続で前年を上回っており、労働力人口全体に占める割合は13.6%です。60歳を過ぎて働くこと自体は、例外的な選択ではなくなっています。
ここから読めるのは、働く場所が無いのではなく、正社員という枠での募集が中心ではなくなるということです。求人検索で雇用形態を正社員だけに絞ると、残る候補の数は減ります。契約社員、パート、派遣を含めて眺めたほうが選択肢は広がります。正社員として働き続けている人もいるので、正社員が無理だという話ではありません。割合の問題として、条件の付け方を変えるという意味です。
雇用形態が変わると、賃金の決まり方も変わります。月給制なのか時給制なのかで、月の収入は勤務日数に左右されるようになります。求人票を見るときは、雇用形態の欄と賃金形態の欄をセットで見てください。ここまでが収入と働き方の前提で、ここから先はどの仕事に入るかの話になります。
資格の有無で入口が変わる
就業者が集まっている産業と、そこに入るための条件は別の話です。同じ設備・管理系の仕事でも、資格が条件になるかどうかで求人賃金と競争の度合いが変わります。
まず全体の位置を確認しておきます。高齢社会白書によると、令和6年に65歳以上の就業者が多い産業は、卸売業・小売業が133万人、医療・福祉が115万人、サービス業(他に分類されないもの)が104万人、農業・林業が93万人です。これは男女を合わせた数字なので、男性だけの内訳ではありません。それでも、働き口が特定の業界に偏っているわけではないことは読み取れます。
次に「人気の職種」という言い方を、数字に置き換えます。ハローワークの有効求人倍率は、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示す数値です。1を下回るのは、求職者に対して求人が少ない状態を意味します。応募が集まりやすい職種ほど倍率は下がるので、人気があることと入りやすいことは別になります。
例として、設備・管理系の2つの職種を並べます。どちらも60歳以降の入口として募集が出る職種で、資格を問うか問わないかがちょうど分かれているので、条件の違いがはっきり見えます。
| 職種 | 必要な資格 | ハローワーク求人賃金(月額) | 有効求人倍率 | 主な雇用形態 |
|---|---|---|---|---|
| マンション管理員 | 不要(関連資格の記載なし) | 20.9万円 | 0.66 | 契約社員・アルバイト・パートが大半 |
| ビル施設管理 | 中途採用では条件になることが多い | 25万円 | 1.03 | ビル管理会社に雇用され契約先へ出向く |
いずれも厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に掲載された令和7年度のハローワーク求人統計の数値です。なお job tag は、この統計データについて、必ずしもその職業のみを表すものではなく、各統計で使用されている職業分類に対応するものだと注記しています。職種の水準を測る目安として読んでください。
マンション管理員
入職にあたって必要な資格や免許はなく、学歴や経験も不問です。job tag は「新卒採用はほぼ無く、定年退職者等が再就職先として選択するケースが大半である」とし、「同職業は求人の年齢設定が60歳代のものが多く、また実際の勤務は70歳代になっても可能であることが一般的である」と記しています。就業者は男性がほとんどで、女性比率は1割程度とみられているとも書かれています。60歳を過ぎてからの入口として、年齢が不利になりにくい職種です。
働き始めるまでにかかる時間も短めです。job tag が「この職業で働いている人が必要と考える入職前の訓練等の期間」として示す数値は、「特に必要ない」が53.8%、「1ヶ月以下」が30.8%です。採用後は各社独自の研修と現場実習を経て勤務に就きます。
働き方は管理方式によって変わります。24時間常駐する常駐管理、通勤して日中のみ管理する日勤管理、定期的に複数のマンションを見回る巡回管理、管理する者を置かない無人管理の4種類があり、常駐にはマンションに住み込むケースや、昼間のみ勤務で夜間は警備員が分担するケースがあります。巡回では曜日や時間帯によって勤務するマンションが変わります。一般的には週休2日制ですが、管理組合の理事会や総会が土日や夕方に開かれることが多く、立会を求められれば出席します。荒天時の見回りや夜間の緊急対応が入ることもあります。
条件面で確認しておきたいのは雇用の形です。job tag は「資格や経験不問で、中高年の再就職がほとんどという事情もあり、正社員雇用はほとんどなく、大半が契約期間が1年以下の契約社員、アルバイト、パートとしての雇用になる」と記しています。賃金形態は契約社員が月給制、アルバイトとパートが時給制です。有効求人倍率が0.66というのは、この入口の広さの裏返しでもあります。
ビル施設管理
オフィスビルや商業ビルで、電力系統・空調系統・給排水系統を運転し管理する仕事です。配電盤を操作してエレベーターや照明へ電力を配分し、電力量計や電圧計を監視し、冷暖房を調整して室内の温度と湿度を保ち、受水槽やポンプ、排水設備を管理します。ビル管理会社に雇用され、契約先のオフィスビル、官公庁ビル、病院、工場、ホテル、学校などに出向いて働きます。
入職そのものに学歴や資格は必須ではありません。ただし job tag は「中途採用の場合は、資格を所持していることが求人の条件になることが多い」と明記しています。60歳を過ぎてからこの職種を狙うなら、ここが分かれ目になります。関連資格として挙げられているのは、第一種・第二種・第三種電気主任技術者、建築物環境衛生管理技術者、1級・2級ビル設備管理技能士、特級・1級・2級ボイラー技士です。工場や施設で設備に関わってきた経験があり、そのときに取った資格が手元にあるなら、条件を満たしている可能性があります。
働き方は交替制です。労働時間は原則8時間ですが、交替制で1時間程度の早出や残業、休日出勤が入る場合があります。ホテルなど24時間動いているビルでは、実働8時間制の交替勤務になります。若年者から中高年齢者まで幅広い年齢層が働いており、60代限定の職種ではありません。
2つを並べると、資格が条件になる側のほうが、求人賃金は月4.1万円高く、有効求人倍率も1.03と1を超えています。求職者に対して求人が相対的に多い状態です。資格が要らない側は入口が広い分、応募が集まって倍率が0.66まで下がります。
つまり選択は、いま持っている資格で入れる仕事を探すか、資格を取ってから入口を変えるか、資格を問わない仕事で早く始めるかの3つになります。どれが正解かは、収入をどこまで確保したいかと、いつから働き始めたいかで変わります。
経験の持ち込み方

持ち込めるのは役職ではなく、作業の中身です。応募書類にも面接にも、この単位で言い換えて持っていくことになります。
管理職として働いてきた場合、次の職場に持ち込めるのは肩書きではなく、その肩書きの下でやってきた作業のほうです。工程の段取りを組む、人を配置する、外部と折衝する、書類を作って報告する。どれも役職が付いていなくても業務として成立するので、こちらは持っていけます。もしあなたが工程の段取りや人の配置を長く担当してきたなら、その経験は役職ではなく、作業の順序を決める仕事として持ち込めます。逆に持ち込めないのは、役職そのものと決裁の権限、そして部下を通じて仕事を進めるという前提です。次の職場では自分の手が最終的な実行部隊になります。
現場の技術者として働いてきた場合、持ち込めるのは、機器の構造の理解、故障の原因を切り分ける手順、安全の手続きです。ビル施設管理は、この延長線上にあります。job tag が中途採用の条件として資格を挙げているのは、この理解の水準を書類で確かめるためでもあります。実務経験と資格が結びついていれば、書類の段階で説明が要らなくなります。
どちらの場合にも共通して起きる変化が2つあります。指示を受ける相手が年下になる場面があること、報告の相手と頻度が変わることです。これは能力の評価ではなく、組織の構造の話です。何十人もの部署と、数人で回す常駐の現場では、そもそも指揮の系統の形が違います。
応募書類では、役職名ではなく、担当した作業と規模で書きます。「製造課長」より「30人の交替勤務の要員配置と工程管理を担当」のほうが、読んだ側が業務に置き換えられます。
相談先の選び方
入口は2つあります。担当者が付いて求人を探してもらう型と、自分で条件を指定して検索する型です。
シニアジョブエージェントは、株式会社シニアジョブが運営する人材紹介のサービスです。50代・60代・70代以上を対象としており、サイトには登録者の平均年齢が62歳と記載され、70歳以上の転職支援の実績もあるとしています。シニア専門のキャリアアドバイザーが、応募書類の提出や面接日程の調整を担当します。得意な領域として挙げられているのは、会計事務所、施工管理、建設コンサル、設計事務所・建築士、医療職、介護、調理、自動車整備士、法律関連職といった専門職です。求職者の利用は無料で、求人企業から受け取る採用代行費用によって運営していると明記されています。専門職として長く働いてきて、その経験を条件に探したい場合の入口になります。
マイナビミドルシニアは、株式会社マイナビが運営する中高年向けの求人サイトです。40代・50代・60代を対象とし、転職だけでなくアルバイト・パート・派遣の募集も扱います。求人の探し方の入口として、エリア、駅・路線、働く時間、活かせるスキル・資格、活躍中の年代という切り口が並んでいます。このうち「活かせるスキル・資格から探す」は、資格の有無で入口が変わるという話とそのままつながります。手元にある資格を起点に、それが条件や歓迎要件になっている募集を先に見ることができます。サポートのコンテンツとして、40歳からの転職成功マニュアル、職務経歴書と履歴書の書き方、自己PRや志望動機のサンプル、ミドルの職種大辞典が用意されています。
応募の前に確認する項目は3つです。雇用形態と契約期間はどうなっているか。賃金は月給制か時給制か。資格が応募の条件なのか、あれば歓迎という扱いなのか。この順に見れば、収入の見通しと、自分がその求人に応募できるかどうかが同時に分かります。
よくある質問
Q. 60代男性の年収の平均はいくらですか?
年収ではなく所定内給与額でお答えします。令和7年賃金構造基本統計調査では、男性の60歳から64歳が月358.5千円、65歳から69歳が月304.3千円です。この数値は令和7年6月分に支払われた所定内給与額の平均で、残業代と賞与を含みません。したがって、この額を12倍しても賞与込みの年収にはなりません。年収を見積もるときは、賞与の月数と残業の見込みを別に足す必要があります。
Q. 60歳を過ぎても働けるおすすめの仕事は何ですか?
就業者が集まっている産業と、入りやすさは分けて考えてください。令和6年に65歳以上の就業者数が上位だった産業は、卸売業・小売業、医療・福祉、サービス業(他に分類されないもの)、農業・林業です。そのうえで、同じ設備・管理系でも資格が条件になるかどうかで入口が変わります。資格を問わないマンション管理員は求人の年齢設定が60歳代のものが多く、資格が条件になることが多いビル施設管理は求人賃金が高い代わりに要件があります。
Q. 60歳を過ぎると正社員では働けませんか?
割合の話であって、不可能ではありません。令和7年版高齢社会白書によると、非正規の職員・従業員の比率は男性で65歳から69歳が67.8%です。裏を返せば3割強は非正規以外の働き方をしています。求人を探すときは、雇用形態の欄で正社員に絞り込んだ結果と、絞らずに眺めた結果の両方を見比べて、条件をどこまで妥協するかを決めてください。
Q. 60歳を過ぎると仕事はしんどいですか?
「しんどい」が指しているものを分けると、体の負担、収入の下がり方、立場の変化の3つになります。体の負担は職種によって差が大きく、統計では答えが出ません。収入は、男性の場合ピークの55歳から59歳と比べて60歳から64歳で月87.1千円、率にして19.5%下がります。立場については、指示を受ける相手が年下になる場面があり、報告の相手と頻度が変わります。このうち収入は数字で先に確かめられるので、そこから順に見ていくと判断しやすくなります。
まとめ
60歳を過ぎてからの仕事は、次の4つの順序で決めていくと迷いにくくなります。
- 賃金の落差を自分の額で押さえる
- 男性の平均では、ピークの55歳から59歳と比べて60歳から64歳で月87.1千円下がります。給与明細の所定内の項目を合計して当てはめます。
- 雇用形態が変わる前提で候補を広げる
- 男性の非正規比率は65歳から69歳で67.8%です。正社員だけに絞ると母集団が小さくなります。
- 資格の有無で入口を決める
- 資格が条件になる仕事は求人賃金が高く倍率も1を超え、資格を問わない仕事は入口が広い分だけ応募が集まります。
- 経験を作業の単位に言い換える
- 役職名ではなく、担当した作業と規模で書きます。
今日できることが1つあります。給与明細を開いて、基本給と毎月決まって支払われる手当を合計してください。その額から2割を引いた金額で1か月の家計が回るかどうかが、これから見る求人の条件を決める基準になります。