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更新日:2026/08/28

未経験から漁師になるには|求人の入口と雇用・独立で違う収入の見方

未経験から漁師になるには|求人の入口と雇用・独立で違う収入の見方

この記事の要約

漁業への新規就業は、統計の側で「雇用就業者」と「独立・自営を目指す新規就業者」に分けて数えられています。令和6年度は雇用就業者が1,071人、独立・自営を目指す人が591人でした。この2つは入口も収入の形も違います。収入についても、水産白書の令和6年の数値では沿岸漁船漁家の漁労所得が223万円、海面養殖業漁家が1,705万円と、同じ沿岸漁業でも7倍以上の開きがあります。ここでは、この分岐と、就業支援の場という入口、そして漁業の労働災害の実態を、水産庁の資料をもとに整理します。

漁師という言葉が広すぎる

陸上の仕事から漁業へ移りたいと考えて調べ始めると、沿岸や沖合、養殖といった漁業の種類があることも、求人がどこに出ているかも分かります。それでも一歩目が決めにくいとしたら、理由は次の2つかもしれません。

ひとつは、雇われて働くことと自分で漁を始めることが、別の道だという点です。求人には同じように「漁師募集」と出ていても、漁業会社に雇われる話なのか、独立を前提とした支援の話なのかで、確かめる条件も、その後の収入の決まり方も変わります。

もうひとつは、漁業の種類によって経営の姿が大きく変わることです。同じ沿岸漁業でも、船で獲る漁業と養殖では、経営体が1年で手元に残す所得に7倍以上の開きがあります。どの漁業を選ぶかで、そこから先の話が変わってきます。

この2つは、水産庁の統計がどう数えているかを見ると整理できます。統計の側が、新規に就業した人を雇われる側と独立する側に分けて数え、所得も漁船漁業と養殖に分けて集計しているためです。その区分をそのまま使えば、自分がどの道を見ているのかが分かります。

なお、漁業だけでなく農業や林業も含めて一次産業への転職を考えているなら、分野ごとの比較と移住を伴う場合の考え方は次の記事にまとめています。

参考記事:田舎で暮らす!未経験から始める農業・林業・漁業の仕事探し

雇われるか、自分でやるか

向かい合って話す二人の男性

漁業への新規就業は、統計の側で2つの形に分けて数えられています。雇用就業者と、独立・自営を目指す新規就業者です。

水産庁の令和7年度水産白書によると、新規漁業就業者数は令和6年度が1,754人で、前年度の1,733人から1.2パーセント増加しました。就業形態別に見ると、雇用就業者数は令和6年度が1,071人で前年度の1,150人に比べ6.9パーセント減少し、独立・自営を目指す新規就業者は591人で前年度の576人に比べ2.6パーセント増加しています。

新規就業者のうち39歳以下の割合は、白書によれば約6割から7割で推移しているとされています。

一方、漁業就業者の総数は減り続けています。同白書は「我が国の漁業就業者数は一貫して減少傾向にあり、令和6(2024)年の我が国の漁業就業者数は、前年から5.4%減少し、11万4,820人となっています」と記しています。

統計でいう「漁業就業者」の範囲

白書の図表の注記によれば、漁業就業者とは「満15歳以上で過去1年間に漁業の海上作業に30日以上従事した者」です。海の上での作業が要件になっているので、水産加工場や市場での仕事はこの数字に含まれていません。求人を探すときも、海に出る仕事とそうでない仕事は別の枠として扱われます。

もし収入の安定を優先するなら、まず雇用就業者として漁業会社や漁協に雇われる形が入口になります。もし将来自分の船を持つことを考えているなら、雇われて経験を積んでから独立する順序もありますし、統計上は最初から独立・自営を目指して就業する人も一定数います。どちらの入口を見ているのかで、確かめる条件が変わってきます。

漁船漁業と養殖では所得が違う

同じ沿岸漁業でも、船で獲る漁業と養殖では、所得の水準が大きく変わります。

水産白書の参考資料に載っている令和6年の水産基本指標では、沿岸漁家の漁労所得は447万円です。その内訳を見ると、沿岸漁船漁家が223万円、海面養殖業漁家が1,705万円となっています。

区分漁労所得(令和6年)
沿岸漁家(全体)447万円
沿岸漁船漁家223万円
海面養殖業漁家1,705万円

7倍以上の開きがあります。「漁師の年収」を1つの数字で語れないのは、この差があるためです。

漁労所得は給与ではない

ここでいう漁労所得は、漁家という経営体が漁労収入から漁労支出を差し引いた所得です。雇われて働く人が受け取る給与とは別のものです。新規就業者の多くは雇用就業者として入るので、その場合の収入は雇用先の給与規程で決まります。求人票の賃金欄で確かめることになります。

なお、海面養殖業漁家の数字が高いからといって、養殖のほうが有利だとは言えません。経営体としての規模、設備への投資、初期費用の大きさが漁船漁業とは違うためです。公開されている統計では、この差がどこから来ているのかまでは分けられていません。

同じ令和6年の指標では、漁業経営体数は6.1万経営体、漁船数は106,500隻とされています。

なお、ここまでは沿岸の話です。遠洋漁業やマグロ漁船では乗船期間も給与の仕組みも大きく変わり、員級によって額が決まります。その領域は次の記事で扱っています。

参考記事:マグロ漁船・遠洋漁業の求人の実態!未経験から年収1000万を目指せる?

入口は就業支援の場にある

漁業の求人は一般の求人サイトにも出ますが、未経験者の入口としては公的な就業支援の仕組みがあります。

一般社団法人全国漁業就業者確保育成センターが「漁師になりたい!をサポートする全国団体」として、漁業就業支援フェアを開催しています。同センターのサイトには、地域ごとの研修プログラムを紹介する支援制度のページも設けられています。

水産白書にも、浜の活力再生プランの取組例として「就業フェアの活用や長期研修の受入による新規漁業就業者の確保・育成」が挙げられており、地域が漁業人材を確保する手立てとして位置づけられています。

こうした場が入口として意味を持つのは、船主と直接話せるからです。求人票には書かれていない条件、たとえば住む場所がどうなるのか、船の規模はどれくらいか、乗組員は何人かといったことを、その場で確かめられます。

研修の詳細は直接確かめる

研修の期間や支援の金額、参加の要件は、同センターのサイトで直接確かめてください。地域によって用意されている研修の中身も違います。

海の上で働くということ

海を見つめながらロープを握る人物

漁業は、陸上の仕事より労働災害の発生率が高い仕事です。応募を決める前に知っておく必要があります。

水産白書は「漁業における労働災害発生率は、陸上における全産業の平均の約4倍と、高い水準が続いています」と記しています。

海中転落の実数も示されています。同白書によれば、令和7年における漁船からの海中転落者数は60人で、そのうち39人が死亡または行方不明となっています。ここでいう海中転落は、衝突や転覆などの船舶事故以外の理由で起きたものを指します。

事故のリスクが高い背景についても記載があります。「漁船は、進路や速度を大きく変化させながら漁場を探索したり、停船して漁労作業を行ったりと、商船とは大きく異なる航行をします」とされ、さらに「漁船の約8割を占める5トン未満の小型漁船は大型船からの視認性が悪いこと等、商船にはない事故リスクを抱えています」と書かれています。甲板の上では機械への巻き込みや転倒も起きています。

漁船の状態についての記載もあります。令和6年度に漁船保険に加入していた10トン未満の漁船では、船齢20年以上の船が全体の約85パーセント、30年以上の船が全体の約65パーセントを占めているとされ、白書は「高船齢化が進んで設備の能力が低下すると安全性の確保に問題が生じる可能性が高くなる」と述べています。

作業中のライフジャケットの着用がどう運用されているか、事業所として安全対策にどう取り組んでいるか、船に何人で乗るのかは、就業支援の場や面接で聞ける事項です。

応募前に確かめること

確かめる事項は4つです。雇用なのか独立の支援なのか、どの漁業か、収入の決まり方、そして安全と生活の条件です。

順に、どこを見て何を聞くのかを見ていきます。

1つめは、その募集が雇われて働く形なのか、独立を前提とした支援なのかです。前者なら雇用契約と給与の話になり、後者なら漁業権や漁船の取得、地域への定着の話になります。同じ「漁師募集」でも中身が変わるので、募集の主体が漁業会社なのか、自治体や漁協の就業支援なのかを見ます。

2つめは、どの漁業かです。船で獲る漁業なのか養殖なのか、日帰りの操業なのか泊まりがけなのかで、1日の過ごし方が変わります。募集の内容に書かれていなければ、扱う魚種と1回の操業がどれくらいの時間かを聞いておきます。

3つめが収入の決まり方です。雇われる場合は固定給なのか歩合が入るのか、歩合ならどの数字に対して何パーセントなのかを求人票の賃金欄で確かめます。「漁船漁業と養殖では所得が違う」で見たとおり、漁労所得の統計は経営体の数字なので、雇われる場合の目安には使えません。

4つめは、安全と生活の条件です。ライフジャケットの着用と安全対策の取組、乗組員の人数、そして住む場所です。住み込みや住居の提供がある募集もありますが、費用の負担や退職時の扱いは募集ごとに違うので、条件を文書で確かめておきます。

漁業と並行して陸上の仕事も見ておきたい場合は、一次産業の求人を扱うサービスを使う方法もあります。

よくある質問

Q. 未経験から漁師になれますか?

新規漁業就業者は毎年一定数います。水産庁の令和7年度水産白書によれば、令和6年度の新規漁業就業者数は1,754人で、就業形態別では雇用就業者が1,071人、独立・自営を目指す新規就業者が591人でした。新規就業者のうち39歳以下の割合は約6割から7割で推移しているとされています。未経験者の入口としては、漁業就業支援フェアなどの公的な場が用意されています。

Q. 漁師の年収はいくらですか?

統計で公開されているのは経営体の漁労所得で、雇われて働く人の給与ではありません。令和6年の水産基本指標では、沿岸漁船漁家の漁労所得が223万円、海面養殖業漁家が1,705万円です。雇われる場合の収入は雇用先の給与規程で決まるので、求人票の賃金欄と、歩合があるならその算定方法を確かめることになります。

Q. 漁業の求人はどこで探せますか?

一般の求人サイトのほか、一般社団法人全国漁業就業者確保育成センターが運営する仕組みがあります。同センターは漁業就業支援フェアを開催しており、サイトには地域ごとの研修プログラムを紹介するページもあります。船主と直接話せるので、求人票に書かれていない条件を確かめる場としても使えます。

Q. 漁業は危険な仕事ですか?

水産白書は「漁業における労働災害発生率は、陸上における全産業の平均の約4倍と、高い水準が続いています」と記しています。令和7年の漁船からの海中転落者数は60人で、そのうち39人が死亡または行方不明でした。応募を検討する際は、ライフジャケットの着用の運用や事業所の安全対策の取組を確かめてください。

Q. 住み込みの求人はありますか?

住居の提供がある募集はありますが、費用の負担や退職したときの扱いは募集ごとに違います。個別の条件は求人票と、就業支援の場での聞き取りで確かめることになります。

まとめ

漁業への転職は、雇われて働く道と、独立して経営体になる道に分かれます。統計の側もこの2つを分けて数えており、入口も収入の形も違います。

押さえておきたいのは次の3点です。

  • 新規漁業就業者は雇用就業者と独立・自営を目指す人に分けて集計されており、令和6年度はそれぞれ1,071人と591人
  • 沿岸漁船漁家と海面養殖業漁家では漁労所得に7倍以上の差があり、いずれも経営体の所得で給与ではない
  • 漁業の労働災害発生率は陸上における全産業の平均の約4倍とされている

今日できることとして、漁業就業支援フェアの開催予定を調べて、行ける回があるかを見てみてください。船主と直接話せる場なので、求人票では分からない条件をまとめて確かめられます。

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