登録販売者は資格を取った後も研修中|実務経験の要件と店長への道
この記事の要約
登録販売者の試験には受験資格がなく、学歴も実務経験も問われません。ただし合格して販売従事登録を受けた後も、一定の従事期間を満たすまでは制度上「研修中の登録販売者」として扱われ、名札にその旨を表記し、薬剤師または研修中でない登録販売者の管理・指導の下で業務に従事することになります。この記事では、試験の枠組みと合格率、研修中から外れるための3つの要件と時間の数え方、毎年続く研修の義務、そして店長やスーパーバイザーへ進む段までを、省令と厚生労働省の通知に沿って追いかけます。
合格しても研修中から始まる

登録販売者試験に合格し、販売従事登録を受けても、そこから一人で売場に立てるようになるわけではありません。制度は、登録販売者を「研修中の登録販売者」と「それ以外の登録販売者」の2つに分けていて、合格した直後は前者から始まります。
その線引きに使われているのが、店舗管理者の要件です。厚生労働省の「登録販売者制度の取扱い等について」(令和5年3月31日 薬生発0331第16号)は、店舗管理者になれる要件のいずれにも該当しない登録販売者を「研修中の登録販売者」と定めています。店舗管理者になるつもりがあるかどうかとは関係なく、この要件が「研修中かどうか」を判定する物差しとして使われている、という作りです。だからこの記事では、店舗管理者という言葉が繰り返し出てきます。役職の話ではなく、あなたが一人で売場に立てるかどうかを決めている基準の名前だと思って読んでください。
同通知が定めているのは、次の3点です。
1つめは名札です。「研修中の登録販売者が付ける名札については、その旨が容易に判別できるよう必要な表記をしなければならない」とし、表記の例として「登録販売者(研修中)」やシールによる表記を挙げています。
2つめは業務の従事のしかたです。「その店舗において勤務中の薬剤師又は登録販売者(研修中の登録販売者を除く。)の管理及び指導の下に業務に従事させなければならない」としています。
3つめはその帰結です。同通知は「このため、研修中の登録販売者は、店舗管理者の代行者にもなることができない」と続けています。店舗に掲示する事項にも、研修中の登録販売者かそれ以外かの別を記載することが定められています。
この扱いから外れる時期を決めるのが、従事期間の要件です。要件は期間・時間・研修の組み合わせで決まり、満たし方は1通りではありません。
ドラッグストアなど医薬品を扱う店舗で働いている、またはこれから働くことを決めていて、登録販売者の資格を軸にキャリアを組み立てようとしている方を主に想定しています。まだ働いていない方は次のセクションで扱います。要指導医薬品や第1類医薬品を扱う店舗の管理者は原則として薬剤師で、本記事が扱う要件とは別の制度になるため、薬剤師は対象に含みません。
資格を取る前に、まず店舗の仕事に就くところから考えたいのであれば、資格の有無で募集がどう分かれるかと、時給や給与の実態をまとめた記事があります。
試験は誰でも受けられる
登録販売者試験に受験資格はなく、学歴も実務経験も問われません。東京都保健医療局は、平成26年厚生労働省令第92号が平成27年4月1日に施行され、「登録販売者試験の受験資格として求められた薬局等での実務経験要件を不要とすること」などの改正が行われたと説明しています。旧制度で受験資格として定められていた実務経験要件等が不要になった、という書き方です。
試験は都道府県が実施します。東京都の令和8年度の要項では、筆記試験(多肢選択式)で、次の5項目から計120問が出題されます。
| 試験項目 | 問題数 |
|---|---|
| 医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 20問 |
| 人体の働きと医薬品 | 20問 |
| 薬事に関する法規と制度 | 20問 |
| 主な医薬品とその作用 | 40問 |
| 医薬品の適正使用と安全対策 | 20問 |
出題範囲は、厚生労働省が定める「試験問題の作成に関する手引き」を基本とすることになっています。日程・会場・受験手数料は都道府県ごとに決まるため、受けようとする自治体の要項を確認する必要があります。
合格率は半数を下回ります。厚生労働省医薬局が公表した令和6年度登録販売者試験実施状況(令和7年3月31日現在)では、年度計で受験者54,526名、合格者25,459名、合格率46.7%でした。この数値は同一人が複数の都道府県で受験している場合を含む延べ人数の集計です。
都道府県による差も小さくありません。同じ実施状況の集計では、最も高い北海道が62.3%、最も低い沖縄県が24.5%と、2.5倍以上の開きがあります。愛知県56.7%、三重県57.2%のように50%台後半の県がある一方、福岡県30.9%、鹿児島県28.8%、佐賀県28.7%と30%前後の県も並びます。東京都は45.8%、関西広域連合は46.7%でした。試験問題は都道府県ごとに作成されるため、受ける自治体によって難易度の体感が変わります。
もしあなたがまだ医薬品を扱う店舗で働いていないなら、先に試験を受けておくという順序も取れます。受験資格がないため、働き始める前でも受けられるからです。資格を持って応募すれば、資格名が職種名になっている募集にも手が届くようになります。
研修中から外れる3つの道
研修中の扱いから外れるのは、店舗管理者になれる登録販売者の要件を満たしたときです。「合格しても研修中から始まる」で見たとおり、この要件は役職に就くための条件であると同時に、研修中かどうかを分ける基準でもあります。第2類医薬品・第3類医薬品を扱う店舗の場合、満たし方は次の3通りに経過措置を加えた形で定められています(医薬品医療機器等法施行規則第140条・第149条の2関係、令和5年4月1日から一部改正)。
| ルート | 従事期間 | 従事時間 | 追加で必要なもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 過去5年間のうち2年以上 | 合計1,920時間以上 | なし |
| 2 | 過去5年間のうち1年以上 | 合計1,920時間以上 | 継続的研修と、店舗の管理および法令遵守に関する追加的研修の両方の修了 |
| 3 | 1年以上 | 合計1,920時間以上 | 過去に店舗管理者または区域管理者として従事した経験 |
| 経過措置 | 平成21年6月1日以降、5年以上 | 合計4,800時間以上 | 所定の研修を通算5年以上受講 |
表の最後の行は経過措置で、平成21年6月1日以降に長く従事してきた人を対象にしたものです。これから従事期間を積み上げる場合に現実的な選択肢になるのは、ルート1からルート3の3つです。
この表で重要なのは、従事期間に何が算入されるかです。京都府の説明によれば、算入できるのは「薬局等において、登録販売者として業務に従事した期間」と、「薬局等において、一般従事者(薬剤師や登録販売者以外の者)として薬剤師や登録販売者の管理・指導の下に実務に従事した期間」です。つまり、資格を取る前にドラッグストアで働いていた期間も、薬剤師や登録販売者の管理・指導の下での実務であれば数えられます。資格を取ってからゼロで数え直す、という仕組みではありません。
時間の数え方にも決まりがあります。東京都の説明では、従事した期間は月単位で計算し、ルート1では1か月に80時間以上、ルート2では1か月に160時間以上従事した月が対象になります。この条件を満たさない月がある場合でも、過去5年間のうち月単位で従事した期間が通算1年以上または2年以上あり、かつ合計1,920時間以上従事していれば、それぞれ通算1年以上・2年以上の従事期間としてみなして差し支えないとされています。週の勤務日数が少ない働き方でも、月数と合計時間の両方を満たせば積み上がる形です。
1,920時間という数字は、月ごとの時間数と対応しています。月80時間を24か月分積むと1,920時間、月160時間を12か月分積むと1,920時間です。ルート1の「月80時間以上を2年」とルート2の「月160時間以上を1年」は、どちらも同じ総量に行き着く設計になっています。週の勤務時間に置き換えると、月80時間はおおよそ週20時間、月160時間はおおよそ週40時間にあたります。いまの勤務時間が月80時間に届かない月がある場合は、月単位の通算と合計1,920時間の両方で数えるみなしの扱いに乗るかどうかを、勤務先に確認することになります。
一方、要指導医薬品や第1類医薬品を扱う店舗の管理者は、原則として薬剤師である必要があります。薬剤師を店舗管理者にできない場合に限り、薬剤師を補佐として設置したうえで登録販売者を管理者にできますが、その場合に算入できる従事期間は限定され、過去5年間のうち通算3年(合計2,880時間)以上が求められます。ここまでで見てきた要件は、第2類・第3類医薬品を扱う店舗のものです。
毎年の研修が続く
登録販売者として働くかぎり、研修は毎年度続きます。厚生労働省の「登録販売者に対する研修の実施要領について」(令和5年3月31日 薬生総発0331第6号)は、施行規則の規定により、一般用医薬品販売業者等は「その薬局、店舗等において業務に従事する登録販売者に、厚生労働大臣に届出を行った研修実施機関による研修(以下「継続的研修」という。)を毎年度受講させなければならない」としています。受講させる義務は事業者の側に課されているという構造です。
時間数も定められています。同要領は継続的研修について「毎年度、少なくとも計12時間以上、定期的かつ継続的に研修を受講させること」とし、対象を「当該販売業者等の下で一般用医薬品の販売に従事する全ての登録販売者」としています。研修中の登録販売者も、この期間中に研修を受講させなければならないと通知に明記されています。
もうひとつの追加的研修は、時間数が「少なくとも計6時間以上」で、対象は「過去5年間のうち通算して1年以上2年未満の従事期間で店舗管理者等となることを希望する登録販売者」が主なものとされています。「研修中から外れる3つの道」のルート2(過去5年間のうち1年以上・合計1,920時間以上)を取るなら、この2種類の研修を修了していることが条件になります。従事期間が通算2年以上の場合は追加的研修の修了は必要とされていませんが、同要領は資質向上の観点から受講することが望ましいとしています。
なお、これらの研修は「一般用医薬品販売業者等以外の機関が実施する研修」でなければならないとされています。勤め先の社内研修だけでは要件を満たさないということです。応募先を選ぶときに、外部の研修を受ける機会が用意されているかを確認しておくと、ルート2を取れるかどうかがはっきりします。
店長とその先のポジション

ここまで見てきた店舗管理者は制度上の役割で、会社が決める役職としての店長とは別のものです。そのうえで、登録販売者の先にあるポジションは、店舗の管理から始まって、店長、エリアを統括する職、本部という段で設計されています。職業情報提供サイト(job tag)の「医薬品販売/登録販売者」のページも、「登録販売者として経験を積み、店舗のマネージメントにも関わり店長になる場合もある」と記しています。
企業がどの段で設計しているかは、採用サイトで確認できます。ツルハドラッグの登録販売者キャリア採用のページは、キャリアパスを次の5段で紹介しています。
- 一般社員
- カウンセリング販売や売場づくりから始まる段です。
- 専門職
- 「化粧品担当」と「医薬品担当」が置かれています。
- 店長
- 「店舗を統括する責任者」で、店舗運営の裁量が大きいと説明されています。
- SV(スーパーバイザー)
- 「エリア内の店舗約10〜15店舗を統括し、年商40億〜50億の経営管理を行います」とされています。
- 本部スタッフ
- 店舗運営を支える各部署の仕事です。
同社は昇格について「入社半年〜1年で店長代行や店長を目指せます」とも書いていますが、これは同社が自社のキャリアパスとして説明している内容で、業界全体の目安ではありません。
勤務地の範囲を選べる仕組みを持つ企業もあります。ツルハの同じページは社員区分として「ナショナル社員(全国転勤あり)」「リージョナル社員(拠点ブロック内での勤務)」「エリア社員(転居を伴う異動なし)」の3つを挙げ、ライフイベントに合わせた見直しもできるとしています。SVや本部のポジションは担当する範囲が広がるため、どの区分を選ぶかは進める段と結びつきます。応募の段階で、区分の選択肢と変更の可否を確認しておく価値があります。
賃金の目安として、job tag は登録販売者が属する職業分類の年収を全国384.8万円としています(令和7年賃金構造基本統計調査を加工した値)。これは職業分類全体の平均で、役職や勤務先による差は含んでいません。
ドラッグストア以外の勤務先
登録販売者の資格は、試験に合格したあと店舗が所在する自治体に登録するもので、特定の会社や店舗に紐づくものではありません。第2類医薬品・第3類医薬品を扱う店舗であれば、業態はドラッグストアに限られません。
job tag の「医薬品販売/登録販売者」のページは、勤務先について「ドラッグストア、医薬品を扱うコンビニ、スーパー等であり全国に広がっている」と記しています。勤務の形もそれに応じて変わり、「店舗次第ではあるが早番、遅番の2交替制などシフトで働くケースもある」「24時間営業をしているコンビニなどで勤務する場合には夜勤もある」としています。同じ資格でも、店舗の業態と営業時間によって働き方が変わるということです。
この幅は、従事期間を積む場所を選ぶときにも効いてきます。医薬品を扱う店舗であれば業態を問わず従事期間として数えられるため、通える範囲でドラッグストアが見つからない場合でも、選択肢が閉じるわけではありません。
登録販売者以外も含めて、未経験から入れる専門職の入口を見比べたいのであれば、職種ごとの難易度と求人の探し方を横断的に整理した記事があります。
従事期間を積める職場の選び方
従事期間は働いた店舗で積み上がるので、応募の段階でその店舗が要件を満たせる場かどうかを確かめておきます。求人票と面接で確認できるのは、次の項目です。
- その店舗が第2類医薬品・第3類医薬品を扱っているか
- 薬剤師または研修中でない登録販売者が勤務しているか(研修中は管理・指導の下でしか業務に従事できないため)
- 継続的研修と追加的研修を受ける機会が用意されているか
- 1か月あたりの勤務時間が、ルート1の80時間またはルート2の160時間に届く働き方になるか
- 従事期間を証明する書類を出してもらえるか
最後の項目は、転職をまたぐときに効いてきます。厚生労働省の通知は、従事期間や店舗管理者としての経験について「当該登録販売者が従事している薬局、店舗又は区域の薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者が責任を持って確認すること」としており、店舗管理者とする場合には業務経験等を証明する書類を作成して添付することを求めています。管理者としない場合でも、都道府県から問い合わせがあった際に業務経験を客観的に説明できるようにしておくこととされています。前の勤務先での期間を数えるなら、在職中に勤務実績が確認できる形にしておくほうが後の手続きが早くなります。
職種名から募集を探す場合は、資格を職種として扱っている求人サイトが使えます。
バイトルPRO
資格名から募集を絞り込める求人サイト
資格や経験を活かせる求人を扱うサイトで、サイトのフッターに dip Corporation の著作権表示があります。トップページの「職種から探す」の医療カテゴリに、看護師や薬剤師と並んで登録販売者が職種として掲載されており、資格名で募集を絞り込めます。正社員だけでなくパート・アルバイトの募集も扱っているため、勤務時間の条件を見ながら従事期間の積み上げ方を組み立てたい場合に向いています。
よくある質問
Q. 登録販売者試験に受験資格はありますか?
ありません。平成26年厚生労働省令第92号が平成27年4月1日に施行され、旧制度で受験資格として定められていた薬局等での実務経験要件が不要になりました。学歴も問われないため、医薬品を扱う店舗で働いた経験がなくても受験できます。
Q. 実務経験はどこで積めますか?
薬局、店舗販売業、配置販売業の店舗や区域で従事した期間が算入されます。ドラッグストアのほか、医薬品を扱うコンビニやスーパーも対象になります。ただし、その店舗が第2類医薬品・第3類医薬品を扱っていることと、薬剤師または研修中でない登録販売者が勤務していることが前提になるため、応募前に確認してください。
Q. 資格を取る前に働いた期間も数えられますか?
数えられます。従事期間には、登録販売者として業務に従事した期間だけでなく、一般従事者として薬剤師や登録販売者の管理・指導の下に実務に従事した期間も含まれます。ただし期間の証明は勤務先の事業者が行うため、その店舗で勤務実績を確認できる状態になっているかを確かめておく必要があります。
Q. 「研修中」の間はどんな制限がありますか?
名札に研修中である旨を判別できるよう表記すること、勤務中の薬剤師または研修中でない登録販売者の管理・指導の下で業務に従事すること、店舗管理者の代行者になれないことです。いずれも厚生労働省の通知が店舗販売業者に対して求めている事項です。
Q. 資格を取れば店長になれますか?
店舗管理者の要件と、店長という役職は別のものです。店舗管理者は医薬品医療機器等法施行規則が定める要件を満たした人を店舗販売業者が設置するもので、店長は会社の人事の枠組みで決まります。管理者の要件を満たしていることが店長への条件になっている会社もありますが、要件を満たせば自動的に店長になるという関係ではありません。
まとめ
登録販売者試験に受験資格はなく、働く前でも受けられます。一方で、合格して販売従事登録を受けた後も、従事期間の要件を満たすまでは「研修中の登録販売者」として扱われ、名札の表記、管理・指導の下での業務、店舗管理者の代行者になれないという3点が制度で決められています。
その扱いから外れる道は3通りありました。過去5年間のうち2年以上かつ1,920時間以上、1年以上かつ1,920時間以上に継続的研修と追加的研修を加える形、そして過去に管理者の経験がある場合の1年以上です。従事期間には資格を取る前の一般従事者としての実務も算入されるので、いま働いている店舗での月数と時間から数え直せます。研修は取ったら終わりではなく、事業者が毎年度12時間以上の継続的研修を受講させることになっています。その先には、店長、エリアを統括する職、本部というポジションが段として用意されています。
まずは、いま働いている店舗、あるいは応募しようとしている店舗が、第2類・第3類医薬品を扱い、薬剤師または研修中でない登録販売者が勤務しているかを確かめてみてください。この2つが揃っていれば、そこで働いた月数はそのまま従事期間として積み上がります。