契約社員から正社員への転職|無期転換との違いと社内・他社の2つの道
この記事の要約
労働契約法18条には、通算5年を超えた有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込める仕組みがあります。ただしこの条文が定めているのは期間の定めのない労働契約への転換で、正社員への転換ではありません。条文には転換後の労働条件を「別段の定めがある部分を除く」として従前と同一とする旨が書かれており、厚生労働省の実態調査でも、無期転換した人の89.4パーセントが無期転換社員という区分に移り、そのうち87.3パーセントは業務量も賃金等の労働条件も変化なしでした。ここでは、無期転換と正社員登用がどう違うのか、社内で移る道と他社へ移る道でそれぞれ何を見るのか、契約期間の途中で辞められるのかを、条文と公的調査をもとに整理します。
正社員になる道が2つある

契約社員として1年以上働いて更新も経験し、そろそろ正社員になりたいと考え始めたとき、動き出す前に2つのことで迷うかもしれません。
ひとつは、「正社員になる」と言ったときに、いま勤めている会社で移る話と、他社へ応募する話が混ざってしまうことです。この2つは必要な準備が違います。社内なら就業規則と登用の要件を調べることになりますし、他社ならいまの契約をいつまでに終えられるかを先に決める必要があります。どちらの準備をすればよいのかが定まらないまま時間が過ぎます。
もうひとつは、「5年勤めれば無期になる」という話をどう受け取ればよいのかです。無期になることと正社員になることが同じなのか違うのかが分からないままだと、あと何年か待つべきなのか、いま動くべきなのかを判断できません。
どちらの迷いも、制度の側を見ると整理できます。契約期間の定めをなくす手続きと、正社員という社員区分に移る手続きは、根拠も進め方も別のものだからです。そこを分けたうえで、自分がどちらの道を選ぶのかを決める順番になります。
なお、異業種へのキャリアチェンジそのものを検討しているなら、年代別の考え方や未経験から挑戦しやすい職種、求人の探し方の手順は次の記事にまとめています。
無期転換は正社員化ではない
無期転換で変わるのは契約期間の定めの有無だけです。正社員になれる制度ではありません。
労働契約法18条1項は、通算契約期間が5年を超える労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申し込んだときは「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」と定めています。そのうえで、転換後の労働条件について「現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする」と書かれています。つまり、契約期間の定めがなくなるだけで、給与も業務内容も別段の定めがない限りそのままです。
厚生労働省の「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」も同じ方向を示しています。無期転換ルールにより申込みの権利を行使して無期転換した人の転換後の社員区分を見ると、「無期転換社員」に転換した割合が89.4パーセントで、そのうち「業務量や賃金等の労働条件がともに変化なし」が87.3パーセントを占めていました。多くの会社が、正社員とは別に「無期転換社員」という区分を置いて受け止めているということです。
「別段の定めがある部分を除く」とあるので、会社が別段の定めを置いて労働条件を変えること自体は制度上ありえます。ただし無期転換の効果として自動的に賃金が上がるわけではありません。労働条件がどうなるかは、就業規則や労働協約に無期契約社員向けの定めがあるかどうかで決まります。
もし待遇そのものを変えたいなら、無期転換とは別に正社員登用か転職を考える必要があります。もし雇止めの不安をなくすことが目的なら、無期転換の申込みはその目的に直接効きます。目的によって、打つ手が変わるということです。
5年を数える起点はどこか
通算されるのは同一の使用者との間で結んだ有期労働契約です。会社が変われば通算されませんし、契約と契約の間に一定以上の空白があると、それより前の期間は数に入りません。
労働契約法18条2項は、契約が満了した日と次の契約の初日との間にある期間を「空白期間」と呼び、この空白期間が6か月以上であるときは、それ以前の契約期間を通算しないとしています。直前の契約期間が1年に満たない場合は、その2分の1を基礎として厚生労働省令で定める期間が基準になります。
条文の要件を分解すると、自分が申し込めるかどうかは次の点で決まります。
| 確かめること | 条文上の要件 |
|---|---|
| 誰と結んだ契約か | 同一の使用者との間で締結された有期労働契約であること |
| 通算した期間 | 通算契約期間が5年を超えること(5年ちょうどでは足りない) |
| 契約の間の空白 | 空白期間が6か月以上あると、それ以前は通算されない |
| 申込みの時期 | 現に締結している有期労働契約の期間が満了する日までに申し込むこと |
| 申込みの効果 | 使用者は申込みを承諾したものとみなされる |
ここで見落とされやすいのが申込みです。条文は「申込みをしたときは」と書いているので、通算5年を超えても、申し込まなければ何も起きません。逆に申し込めば会社の側に断る選択肢はなく、承諾したものとみなされます。
実際に無期転換した人の割合も調査に出ています。厚生労働省の令和2年有期労働契約に関する実態調査によると、無期転換ルールにより申込みの権利を行使して、または事業所独自のルールなどで無期転換をした労働者の割合は、平成30年度と平成31年度の合算で常用労働者の2.9パーセントでした。無期転換した人のうち、権利を行使して無期転換した人は74.5パーセント、事業所独自の制度などで無期転換した人は25.5パーセントです。これは事業所に対する調査であり、権利を得た人のうちどれだけが申し込んだかを示す数字ではありません。
社内で正社員になる道
社内で正社員になるのは正社員登用制度で、無期転換とは別の手続きです。制度がある会社とない会社があり、あっても要件と実績は会社ごとに違います。
さきほどの実態調査は、有期契約労働者が従事する職務を、勤務先の正社員との対比で分類しています。正社員と同様の職務に従事する「正社員同様職務型」、正社員よりも高度な内容の職務に従事する「高度技能活用型」、正社員とは別の職務であるが高度でも軽易でもない職務に従事する「別職務・同水準型」、正社員よりも軽易な職務に従事する「軽易職務型」の4つです。
この分類ごとに、正社員転換制度がある事業所の割合が出ています。正社員同様職務型が54.6パーセント、高度技能活用型が21.7パーセント、別職務・同水準型が36.2パーセント、軽易職務型が34.3パーセントです。いずれも、当該職務タイプの有期契約労働者を雇用している、または雇用していた事業所を100とした割合になります。
注目したいのは、制度があることと実際に転換した人がいることが別だという点です。同調査によると、正社員転換制度がある場合に正社員へ転換した実績がある割合は、正社員同様職務型で66.8パーセント、高度技能活用型で26.0パーセント、別職務・同水準型で41.3パーセント、軽易職務型で50.0パーセントでした。制度があっても実績がない事業所が、職務タイプによっては半分以上あるということです。
職務タイプは調査に答えた事業所が分類したもので、働いている人が自分で判定するものではありません。ここから言えるのは、正社員と同じ職務に就いているかどうかで制度の有無も実績も変わる傾向がある、という水準までです。自分の勤務先がどうなっているかは、次に挙げる方法で個別に確かめることになります。
社内で確かめるのは3つです。1つめは就業規則の登用に関する条項で、要件(勤続年数、試験、上長の推薦など)がどう書かれているかを見ます。2つめは直近の登用実績で、何人が登用されたかを人事に聞きます。制度の条文だけでは、さきほどの調査が示すとおり実績があるかどうかが分かりません。3つめは登用の時期で、年に何回、いつ選考が行われるのかを確認します。応募のスケジュールを組むために要ります。
なお、会社の側にも有期雇用労働者を正社員化する事業主に支給される助成金(キャリアアップ助成金の正社員化コース)が用意されています。ただしこれは事業主に支給されるもので、働く人が受け取るものではありません。自分の勤務先が使っているかどうかも別の話です。
他社へ移る道と契約期間
他社の正社員求人に応募するときに先に決まっていないといけないのが、いま結んでいる契約をいつ終えられるかです。有期労働契約は期間の定めがあるぶん、退職のタイミングに制約がかかります。
労働基準法137条は、期間の定めのある労働契約を締結した労働者について「当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる」と定めています。ただし対象は限定されています。条文は「一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る」としており、さらに労働基準法14条1項各号に規定する労働者(高度な専門的知識等を有する者と満60歳以上の者)は除かれます。
つまり、1年を超える契約を結んでいる人は初日から1年を経過すれば申し出て退職できますが、1年契約を繰り返している人はこの条文の対象になりません。
137条の対象は契約期間が1年を超える契約です。1年契約や6か月契約を更新している場合は当てはまらないので、原則は契約期間の満了を待つか、会社との合意によって退職することになります。民法628条は「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」と定めていますが、同条は続けて、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは相手方に対して損害賠償の責任を負うとしています。個別の事情がやむを得ない事由に当たるかどうかは、この記事では判断できません。
そこで、応募のスケジュールは契約の満了日を起点に組むことになります。満了日を書き出し、そこから逆算して、選考にかかる期間と入社希望日を置きます。求人への応募時点で「現職の契約が◯月◯日に満了する」と伝えられる状態にしておくと、入社日の調整が進めやすくなります。
なお、転職先では入社後の一定期間が試用期間とされることがあります。その長さや延長、解雇や退職が心配なときの考え方は次の記事で整理しています。
収入は何が変わるのか

無期転換では労働条件が変わらないので、収入が動くのは正社員登用か転職のときです。
雇用形態による賃金の水準差は公的統計で確かめられます。厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」によると、男女計で正社員・正職員が358.8千円、正社員・正職員以外が241.7千円でした。雇用形態間賃金格差は、正社員・正職員を100として男女計で67.4です。
ただしこの数字の読み方には注意が要ります。同概況の定義では「正社員・正職員以外」は「正社員・正職員に該当しない者」で、契約社員だけの区分ではなくパートやアルバイトも含みます。また、ここでいう賃金は6月分の所定内給与額の平均で、時間外勤務手当などの超過労働給与額を差し引いた額です。賞与も入っていません。
年齢階級別に見ると、格差の幅は年齢によって変わります。
| 年齢階級 | 雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100、男女計) |
|---|---|
| 〜19歳 | 88.4 |
| 20〜24歳 | 82.2 |
| 25〜29歳 | 80.0 |
| 30〜34歳 | 72.8 |
| 35〜39歳 | 65.3 |
| 40〜44歳 | 60.8 |
| 45〜49歳 | 59.0 |
| 50〜54歳 | 55.7 |
| 55〜59歳 | 54.8 |
若い層では差が小さく、年齢が上がるほど開いています。ただしこれは年齢構成や職種構成、勤続年数の違いを含んだ集計なので、同じ人が正社員に移ればこの差のぶんだけ増える、という意味ではありません。
自分の場合にどうなるかは、労働条件通知書で個別に確かめることになります。見るのは基本給の額、賞与の有無と算定方法、退職金制度の有無、昇給の仕組みの4つです。これらは雇用形態の名前ではなく個別の労働条件として決まるので、正社員という区分に移っても定めがなければ発生しません。
応募前に確かめること
社内の道と他社の道のどちらを選ぶかは、先に社内から確かめると決まります。就業規則の条項と登用の実績は自分で調べれば答えが出ますが、他社の選考は応募先の判断で進むため、結果が出るまでの時間が読めないためです。社内の可否が分かってから他社を見ても、順番として無駄になりません。
そのうえで確かめる事項は4つです。いま結んでいる契約の期間と満了日、社内の登用制度の要件と実績、応募先の求人票に書かれた雇用形態、そして「正社員登用あり」という表記が何を指しているかです。前の2つが社内の道と自分の動ける時期にかかわり、後の2つが他社の道にかかわります。
順に、どこを見て何を聞くのかを見ていきます。
1つめは、手元の労働契約書を出して契約期間の開始日と満了日、更新の回数を書き出すことです。ここが分からないと、無期転換を申し込めるのがいつなのかも、他社へ移れるのがいつなのかも決まりません。契約と契約の間に空白があった場合は、その長さも記録しておきます。
2つめは、社内の登用制度について就業規則の条項と直近の実績を確認することです。「社内で正社員になる道」で挙げた3点(要件、実績の人数、選考の時期)を人事に聞きます。
3つめは、応募先の求人票で雇用形態の欄を見ることです。「正社員」と書かれているのか、「契約社員(正社員登用あり)」と書かれているのかで、入社時点の契約が変わります。後者の場合、入社してすぐ正社員になるわけではありません。
4つめが、その「正社員登用あり」という表記の意味です。この表記は制度があることを示すもので、登用を約束するものではありません。「社内で正社員になる道」で見たとおり、制度があっても転換の実績がない事業所は職務タイプによって3割から7割あります。応募の段階で、直近何年に何人が登用されたかを聞いておくと、表記の実質が分かります。
この4つのうち、求人票だけで分かるのは雇用形態の記載までです。残りは書類を見せてもらうか、聞いて確かめることになります。掲載されていない条件を応募前に確かめたい場合は、企業とのやりとりを代行してくれる転職エージェントを使う方法もあります。
よくある質問
Q. 契約社員は5年働けば正社員になれますか?
無期転換と正社員化は別のことです。労働契約法18条が定めているのは期間の定めのない労働契約への転換で、正社員という社員区分への移動ではありません。条文も転換後の労働条件を、契約期間を除いて従前と同一(別段の定めがある部分を除く)としています。また通算契約期間が5年を超えることが要件なので、5年ちょうどでは足りません。
Q. 無期転換を申し込むと給与は上がりますか?
別段の定めがない限り、労働条件は従前と同一です。厚生労働省の令和2年有期労働契約に関する実態調査でも、無期転換した人の89.4パーセントが無期転換社員に転換し、そのうち87.3パーセントは業務量も賃金等の労働条件も変化なしでした。給与を動かしたい場合は、無期転換とは別に正社員登用か転職を検討することになります。
Q. 契約期間の途中で辞められますか?
労働基準法137条は、契約期間が1年を超える有期労働契約を結んだ労働者について、期間の初日から1年を経過した日以後は申し出ることによりいつでも退職できるとしています。ただし一定の事業の完了に必要な期間を定めるものと、労働基準法14条1項各号に規定する労働者は除かれます。1年以内の契約を更新している場合はこの条文の対象外なので、契約期間の満了を待つか会社との合意によることになります。
Q. 契約社員だと転職で不利になりますか?
厚生労働省の実態調査で確かめられるのは、いま就いている職務が正社員と同様かどうかで社内の転換制度の有無や実績が変わる、という点です。雇用形態そのものが選考でどう扱われるかを示す数字は、公表されている統計には見当たりません。応募書類では、雇用形態の名前ではなく担当した職務の内容と成果を書くことになります。
Q. 「正社員登用あり」と書かれていれば正社員になれますか?
制度があることと、実際に登用された人がいることは別です。厚生労働省の実態調査では、正社員転換制度がある場合に正社員へ転換した実績がある割合は、正社員と同様の職務に従事する類型で66.8パーセント、正社員よりも高度な内容の職務に従事する類型で26.0パーセントでした。応募の段階で直近の登用人数を聞いておくと、表記の実質が分かります。
まとめ
契約社員から正社員へ移る道は、社内の正社員登用と他社への転職の2つです。よく知られている無期転換は、この2つとは別に、契約期間の定めをなくす手続きになります。
押さえておきたいのは次の3点です。
- 無期転換で変わるのは契約期間の定めの有無だけで、労働条件は別段の定めがない限り従前と同じ
- 社内の登用は、制度があるかどうかと実績があるかどうかを分けて確かめる
- 他社へ移るときは契約の満了日が起点になり、1年を超える契約かどうかで途中退職の扱いが変わる
今日できることとして、手元の労働契約書を出して、契約期間の開始日と満了日、これまでの更新回数を書き出してみてください。この3つが並べば、無期転換を申し込めるのがいつか、他社へ動けるのがいつかの見当が立ちます。どちらの道を選ぶかは、そのあとで決められます。