試用期間中の解雇は違法?正当な理由と不当解雇された時の対処法
この記事の要約
試用期間中に解雇を告げられても、会社が自由に契約を終わらせられるわけではありません。厚生労働省の資料では、試用期間中の解約権の行使について「通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならない」と整理されています。この記事では、実際に有効とされた解雇と無効とされた解雇、入社14日を境に変わる予告のルール、解雇理由証明書の請求、無料で使える相談窓口とその限界、そして失業給付の扱いを順に整理します。
試用期間だから仕方ないのか
入社して数週間から数か月のうちに「本採用は難しい」「今日で終わりにしてほしい」と告げられると、頭のなかが真っ白になります。心当たりのある指摘もあれば、思い当たらない理由もある。それでも試用期間中なのだから受け入れるしかないのだろうか、と考えてしまう場面です。同時に、来月からの生活費や、次の就職活動をどう説明するかも一度に押し寄せてきます。
先に整理しておくと、試用期間中の解雇にも条件があり、納得できないときに取れる手順もあります。ただし、解雇が違法かどうかは事情ごとの判断になるため、最終的な確認は相談窓口や専門家に委ねることになります。
試用期間中でも解雇は自由ではない

試用期間中の解雇にも、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。厚生労働省の労働契約法に関するQ&Aは、労働契約法第16条について「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」という条文を示しています。
試用期間中の契約はどう扱われるのか。中央労働委員会のあっせん事例資料は、通常の試用期間中の契約関係について「解約権留保付の労働契約がすでに成立していると解されている(三菱樹脂事件―最大判昭 48・12・12)」としています。会社が本採用を拒否するのは、この留保された解約権を使うことにあたります。そのうえで同じ資料は「試用期間中の解約権の行使に関しては、通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならない」と整理しています。通常の解雇より会社側の裁量は広い、しかし無制限ではない、という位置づけです。
この制度がなぜ存在するのかも押さえておくと、基準の意味が分かりやすくなります。同資料の解説は「労働者が提供する労働力は実際に働いてみなければ本当の評価が困難であるということから、経営の必要に基づいて創設されたもの」と説明しています。就業規則で定められるのが通常で、期間は「3ヶ月が一番多く、それを中心に1ヶ月から6ヶ月にわたっている」とされています。適性を判断するために必要な期間だからこそ、判断の材料もその期間に得られた事情に限られる、という考え方につながります。
なお、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例のページは、適性を判断するのに必要な合理的な期間を越えた長期の試用期間について「公序良俗に反し、その限りにおいて無効と解される」としています。正社員と契約社員での扱いの違いや期間の目安といった、試用期間そのものの決まりは、以下の記事で整理しています。
認められた解雇・認められなかった解雇
判断を分けるのは、中央労働委員会の資料が示す次の基準です。「採用当初知ることができなかったような事実が試用期間中に判明し、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的合理性が認められるような場合に、解約権行使が相当であるとされる。」採用の時点で分かっていたはずのことを後から理由にするのは、この基準から外れます。
同じ資料の解説には、実際の裁判例が挙げられています。解雇が有効と判定された例として、雅叙園観光事件(東京地判昭60・11・20―労判464号17頁)では、周囲との悶着が絶えなかった等の労働者の行為が、就業規則の解雇事由である「就業態度が著しく不良で他に配置転換の見込みがないと認めたとき」に該当するとされました。ブレーンベース事件(東京地判平13・12・25 労経速1789号22頁)では、緊急の業務指示に速やかに応じないこと、採用面接時にパソコン使用に精通していると述べていたにもかかわらず満足に行うことができなかったこと、代表取締役の業務上の指示に応じなかったこと等を理由とする解雇について、期待に沿う業務が実行される可能性を見出しがたいと認められ、客観的合理的理由があるとされています。
一方、解雇が無効と判定された例もあります。テーダブルジェー事件(東京地判平13・2・27労判809号74頁)では、会長に声を出して挨拶しなかったという解雇理由が社会通念上相当性を欠くとされました。オープンタイドジャパン事件(東京地判平14・8・9労判836号94頁)では、高い処遇で中途採用された上級管理職の本採用拒否について、新卒者と同様の留保解約権の判断基準を適用したうえで、業務能力または業務遂行が著しく不良であるとか部長として不適格であったとは認められないとして、解雇が無効とされています。
並べてみると、判断を分けている観点が見えてきます。自分の状況を照らすときは、次の3点を確かめてください。
- 就業規則の解雇事由に当たると会社が示しているか
- 有効とされた事件では、就業規則に定められた事由への該当が判断の土台になっています。労働基準法第89条第3号により、退職に関する事項(解雇の事由を含む)は就業規則の記載事項とされています。
- 指導や改善の機会があったか
- 業務指示に応じない、指摘しても改善しないという経過が積み重なっているかどうかが問われています。
- 理由が採用時には分からなかった事実にあたるか
- 採用面接での申告と実際の能力の食い違いは、この基準に当てはまる例として挙げられています。逆に、挨拶の仕方のように採用前から分かりうる事柄や、程度の軽い事情は相当性を欠くと判断されています。
14日を境に変わる予告のルール
解雇そのものの有効性とは別に、手続きのルールがあります。労働基準法第20条は「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定めています。予告をしない場合に支払われるのが解雇予告手当です。
この規定には適用除外があります。第21条は、次の労働者について第20条の規定を適用しないとしています。
- 日日雇い入れられる者
- 1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合は予告の対象になります
- 2か月以内の期間を定めて使用される者
- 所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は予告の対象になります
- 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
- 所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は予告の対象になります
- 試の使用期間中の者
- 14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は予告の対象になります
つまり、入社から14日以内であれば予告や予告手当なしに解雇できる一方、14日を超えて働いていれば、試用期間中であっても30日前の予告か30日分以上の平均賃金が必要になります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aでも、試用期間中の者が14日間を超えて継続して使用されていない場合に限り、予告や手当の支払なしの即時解雇が可能と説明されています。
第20条は手続きの規定で、解雇そのものが有効かどうかを決めるものではありません。解雇予告手当が支払われたからといって、解雇に客観的合理性と社会通念上の相当性があったことになるわけではない、という関係です。実際、中央労働委員会の事例では、会社が解雇予告手当を支払ったあとに労働者があっせんを申請し、最終的に復職で解決しています。
「辞めてほしい」と言われたとき
会社から「辞めてほしい」と持ちかけられて自分から退職届を出すと、それは解雇ではなく退職勧奨に応じたことになります。解雇は会社が一方的に労働契約を終了させるもので、退職勧奨は労働者の同意を求めるものです。同意した時点で、離職の理由も、その後に使える制度も変わります。
この線引きは実務でも争いになりやすい部分です。厚生労働省が公表した令和6年度の個別労働紛争解決制度の施行状況では、民事上の個別労働関係紛争の相談内容として、解雇が32,059件、退職勧奨が25,604件挙がっています。どちらも相談の上位に入る項目です。
その場で取る行動は3つです。第1に、書類にその場で署名しないこと。退職届や退職合意書は、いったん出すと撤回が難しくなります。第2に、言われた内容と日付を記録すること。誰が、いつ、どのような言葉で伝えたかをメモやメールで残します。第3に、これは解雇なのか、退職を勧めているのかを会社に確認すること。曖昧なまま話が進むと、あとから離職理由が食い違います。
会社が解雇だと答えたなら、解雇理由証明書の請求という次の手順に進みます。退職勧奨だと答えたなら、応じるかどうかは自分で決められます。
解雇理由証明書を請求する
解雇を告げられたら、最初にやることは解雇理由証明書の請求です。口頭の説明だけでは、後から内容を確かめられません。
労働基準法第22条第2項は「労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と定めています。解雇の予告をされた日から退職の日までの間であれば請求でき、会社は遅滞なく交付する義務を負います。すでに退職した後であっても、同条第1項により、退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)について証明書を請求できます。
証明書に何が書かれるかにも決まりがあります。同条第3項は「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」としています。自分が請求していない事項を書き込むことはできません。
この請求が効くのは、記録が残るからです。中央労働委員会のあっせん事例では、労働者側の主張として「解雇理由について明確な説明を受けていない。」「何回も請求しているが、解雇理由証明書が発行されていない。」が挙げられ、会社側は「書面で理由を示す必要はないと理解していた。」と主張していました。この事例では最終的に、会社が解雇手続上の一部不備と指導不足を認める形で解決しています。会社が示した理由が書面に残っていれば、それが妥当かどうかを相談先で検討してもらえます。
請求するときは、記録の残る方法を選んでください。口頭で伝えるだけでなく、メールや書面で「労働基準法第22条に基づき、解雇理由証明書の交付を請求します」と伝え、送信日時が残る形にします。いつ請求したかが分かる状態にしておくと、交付されない場合にその事実自体を相談窓口に伝えられます。
納得できないときの相談先

解雇の理由に納得できないとき、最初に使えるのは国の制度です。厚生労働省の個別労働紛争解決制度には3つの方法があり、いずれも費用は無料で、制度を利用したことを理由とする事業主の不利益取扱いは法律で禁止されています。労働者からでも事業主からでも利用でき、秘密は厳守されます。
総合労働相談コーナー
あらゆる労働問題の相談をひとつの窓口で受け付ける場所です。都道府県労働局、労働基準監督署、駅近隣の建物など379か所(令和7年4月1日現在)に設置され、専門の相談員が対応します。次に述べる助言・指導とあっせんも、この窓口から申し込みます。令和6年度の総合労働相談件数は120万1,881件で、5年連続で120万件を超えています。
労働局長による助言・指導
民事上の個別労働関係紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に解決の方向を示し、当事者どうしの自主的な解決を促す制度です。助言は当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行い、指導は当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘して解決の方向性を文書で示します。令和6年度の申出件数は8,865件でした。
紛争調整委員会によるあっせん
弁護士や大学教授など労働問題の専門家であるあっせん委員が、当事者の間に入って話し合いを進める制度です。令和6年度の申請件数は3,867件で、内容別では解雇が792件と最も多くなっています。
ただし、あっせんは必ず解決に至る制度ではありません。令和6年度の処理件数3,782件の内訳は、合意の成立が1,143件、取り下げが159件、打ち切りが2,465件、その他15件です。相手方が話し合いに応じなければ打ち切りになります。それでも解決しない場合には、労働審判や訴訟という次の段階があり、そこでは弁護士への相談が現実的な選択肢になります。まずは無料の窓口で状況を整理し、次の段階に進むかどうかを判断する、という順序です。
離職票と失業給付の確認
解雇の当否を争うかどうかとは別に、退職後の生活費の見通しは早めに立てる必要があります。相談や手続きを進めている間も、収入が止まる状態は続くためです。そこで確認しておきたいのが雇用保険です。
在籍期間が短い場合、離職の理由によって失業給付を受けられるかどうかが変わります。在籍が短い分、この違いが受給の可否を左右します。
ハローワークインターネットサービスによれば、基本手当の受給資格は原則として「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。」とされています。ただし「特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。」という定めがあります。12か月と6か月では、在籍が数か月の人にとって結果がまったく変わります。
そして特定受給資格者の範囲には、「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者」が含まれます。会社の判断で解雇された場合と、自分から退職届を出した場合とで、この区分が変わりうるということです。「辞めてほしい」と言われたときに書類へその場で署名しないと書いたのは、ここに直結するためです。
離職後に会社から離職票が交付されたら、記載されている離職理由を確認してください。事実と違う理由が書かれている場合は、ハローワークの窓口に申し出ることができます。なお、実際に受け取れる日数は被保険者であった期間と年齢の区分で決まるため、金額や日数はハローワークで自分の条件をもとに確認してください。
短い在籍期間を次の応募先にどう説明するかは、辞め方によって書き方が変わります。自分から辞める選択をした場合の手順と、履歴書や面接での説明の仕方は、以下の記事で扱っています。
よくある質問
Q. 試用期間中でもクビにできますか?
会社が自由に解雇できるわけではありません。中央労働委員会の資料は、試用期間中の解約権の行使について「通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならない」と整理しています。
Q. 能力不足は解雇の理由になりますか?
事情によります。採用面接での申告と実際の能力が食い違い、業務指示にも応じなかった事案では解雇が有効とされた例(ブレーンベース事件)がある一方、高い処遇で中途採用された上級管理職について業務能力が著しく不良とは認められないとして無効とされた例(オープンタイドジャパン事件)もあります。
Q. 入社14日以内なら予告なしで解雇できるのですか?
労働基準法第21条は「試の使用期間中の者」を解雇予告の適用除外としており、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は予告の対象になります。ただしこれは予告の手続きの話で、解雇そのものの有効性は別に判断されます。
Q. 試用期間中に解雇されたら会社都合になりますか?
雇用保険では、特定受給資格者の範囲に「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者」が挙げられています。自分から退職届を出した場合は扱いが変わりうるため、離職票の離職理由の記載を確認してください。
まとめ
試用期間中に解雇を告げられたときに押さえておきたいのは、次の3点です。
- 試用期間中でも解雇には条件がある
- 通常の解雇より広い範囲の自由は認められるものの、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなければならない
- 解雇と退職勧奨は別物
- 「辞めてほしい」と言われて署名すると、離職理由も、その後に使える制度も変わる
- 最初の一手は解雇理由証明書の請求
- 労働基準法第22条に基づき、解雇の予告をされた日から退職の日までの間に請求でき、会社は遅滞なく交付する義務を負う
今日中にできることは1つです。会社に対して、記録の残る方法で解雇理由証明書の交付を請求してください。書面で理由が出てきた時点で、それが妥当かどうかを総合労働相談コーナーで相談できる状態になります。