転職先が決まっていると失業保険はどうなる?再就職手当の条件と金額・期限
この記事の要約
転職先が決まっている状態では、失業保険の基本手当は受け取れません。ただし、就職先が決まったのが退職前だったのか、ハローワークで求職の申込みをした後だったのかで結論が変わり、後者なら再就職手当の対象になる可能性があります。この記事では、決まった時期による3つの分かれ方、再就職手当の8つの要件、支給額の計算と申請の期限、そして再就職後に賃金が下がった場合の就業促進定着手当までを、厚生労働省とハローワークの資料に沿って整理します。
決まっていると失業保険は出ない

退職日が決まり、次の勤務先の内定も出ている。入社日は1か月後、あるいは数か月後で、その間の収入をどうするかを考えて失業保険を調べ始めた、という段階かもしれません。働いていない期間があるのだから受け取れるはずだ、と考えるのは自然なことです。
退職後に入社する会社が決まっているなら、まだハローワークで求職の申込みをしていない段階でも、申込みをした後に就職が決まった段階でも、確認すべき点は同じです。まだ就職先が決まっていないのであれば、先に失業保険(基本手当)の受給手続きを進めることになるので、確かめる順序が変わります。
先に結論を書くと、就職先が決まっている状態では基本手当は受け取れません。ただしそれで話が終わるわけではなく、就職先が決まった時期によっては、再就職手当という別の給付の対象になります。この2つを分けて考えると、自分がどちらのケースかを判断できます。
決まった時期で結論が変わる
基本手当を受け取れるかどうかも、再就職手当の対象になるかどうかも、就職先が決まった時期で変わります。まず基本手当が出ない理由から確認します。
雇用保険法第4条第3項は「失業」を、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることと定義しています。そして第15条第1項は、基本手当は受給資格者が失業している日について支給すると定め、同条第2項は、失業の認定を受けようとする者は離職後にハローワークへ出頭して求職の申込みをしなければならないとしています。就職先が決まっている状態は、この「職業に就くことができない状態」には当たりません。入社日が数か月先であっても、就く職業が決まっている以上は同じ扱いになります。
一方で、雇用保険には早期の再就職を促すための給付があります。それが再就職手当です。ハローワークが配布しているリーフレットでは、基本手当の受給資格の決定を受けた後に早期に安定した職業に就いた場合に支給する制度と説明されています。つまり、受給資格の決定を受ける前に就職先が決まっていたのか、決定を受けた後に決まったのかが分かれ目になります。
| 就職先が決まった時期 | 基本手当 | 再就職手当 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 退職前(求職の申込み前)から内定していた | 対象外 | 対象外 | 失業の状態に当たらない/再就職手当の要件⑧ |
| 求職の申込み後、待期期間(7日)の中に就職した | 待期期間中は支給されない | 対象外 | 雇用保険法第21条/再就職手当の要件① |
| 待期期間の満了後に就職した | 就職日の前日までの分を受給 | 要件を満たせば対象 | 再就職手当の要件①②ほか |
退職する前から内定が出ていた場合は、基本手当も再就職手当も受け取れません。再就職手当の要件には「受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと」が含まれているためです。この場合、雇用保険から受け取れるお金はありません。
待期期間というのは、雇用保険法第21条が定める7日間です。離職後に最初に求職の申込みをした日以後、失業している日が通算して7日に満たない間は基本手当が支給されません。この7日の中で就職した場合も、再就職手当の要件①(待期期間の満了後に就職したこと)を満たさないため対象外になります。
待期期間が満了した後に就職が決まった場合は、就職日の前日までの分の基本手当を受け取り、残った日数に応じて再就職手当の対象になります。どの要件を満たす必要があるかは次のセクションで確認してください。
就職先が決まっていない状態での申請の流れや、ハローワークへ持っていく書類については、以下の記事が手続きの全体像を整理しています。
再就職手当の8つの要件

再就職手当は、次の8つの要件をすべて満たしたときに支給されます。ハローワークのリーフレットに書かれている要件を、意味を補いながら並べます。
- ①待期期間の満了後に就職または事業を開始したこと
- 受給手続き後の7日間が待期期間です。待期期間中に仕事などをして失業の状態でなかった日、失業の認定を受けていない日は、この7日に含まれません
- ②就職日の前日までの失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- 認定を受けずに就職日を迎えると要件を満たせなくなるため、就職が決まったらハローワークに連絡して認定日を確かめます
- ③離職した前の事業主に再び就職したものでないこと
- 前の事業主と資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業主に就職したことも要件です。グループ会社への再就職は該当しない場合があります
- ④給付制限がある場合は、待期期間満了後1か月の期間内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であること
- 自己都合などの離職理由で基本手当が支給されない期間がある人が対象の要件です。この1か月を過ぎれば、知人の紹介や求人広告への応募で決まった就職も対象になります
- ⑤1年を超えて勤務することが確実であること
- 1年以下の雇用期間を定めて契約更新に一定の目標達成が条件付けられている場合や、派遣就業で雇用期間が定められ更新が見込まれない場合は該当しません
- ⑥原則として、雇用保険の被保険者になっていること
- 週の所定労働時間が短く雇用保険に加入しない働き方では要件を満たしません
- ⑦過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
- 短い期間に転職を繰り返している場合は、前回の受給が3年以内に入っていないかを確認してください
- ⑧受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
- 求職の申込みより先に内定が出ていたかどうかで結論が変わります。前のセクションの表で対象外としたのがこのケースです
要件の当てはめは、最終的にハローワークが個別に判断します。雇用契約の期間や前職との関係のように判断が分かれそうな点は、給付窓口で確認しておくと後戻りがありません。
支給額の計算と申請の期限
再就職手当の額は、基本手当日額に支給残日数と給付率を掛けて計算します。給付率は、就職する前日までの失業の認定を受けた後の支給残日数によって決まり、所定給付日数の3分の2以上を残して就職した場合は70%、3分の1以上を残した場合は60%です。1円未満の端数は切り捨てになります。早く就職するほど残日数が多く、給付率も高くなる仕組みです。
| 所定給付日数 | 給付率60%になる支給残日数 | 給付率70%になる支給残日数 |
|---|---|---|
| 90日 | 30日以上 | 60日以上 |
| 120日 | 40日以上 | 80日以上 |
| 150日 | 50日以上 | 100日以上 |
| 180日 | 60日以上 | 120日以上 |
| 210日 | 70日以上 | 140日以上 |
| 240日 | 80日以上 | 160日以上 |
| 270日 | 90日以上 | 180日以上 |
| 300日 | 100日以上 | 200日以上 |
| 330日 | 110日以上 | 220日以上 |
| 360日 | 120日以上 | 240日以上 |
計算の基礎になる基本手当日額には上限があります。離職時の年齢が60歳未満の方は6,745円、60歳以上65歳未満の方は5,454円です。この額は毎年8月1日に毎月勤労統計の平均給与額により改定され、リーフレットには令和9年7月31日までの額として記載されています。
金額の見当をつけるために、リーフレットの計算例を見ておきます。基本手当日額4,000円で所定給付日数90日の方が給付制限期間中に就職した場合、支給残日数は90日で給付率は70%となり、4,000円 × 90日 × 70% で252,000円です。基本手当日額4,000円で所定給付日数270日の方が受給資格決定日以後50日目に就職した場合は、支給残日数228日で給付率70%となり638,400円になります。同じ条件で100日目に就職した場合は支給残日数178日で給付率60%となり427,200円で、就職が50日遅れると金額が3割ほど下がる計算です。
申請には期限があります。支給申請書は、就職した日の翌日から1か月以内に、本人が持参するか、代理人に依頼するか、郵送で提出します。手続きの詳細はハローワークで受け取る「受給資格者のしおり」に書かれています。
再就職手当を受け取った後にも給付があります。再就職先での6か月間の賃金が離職前の賃金より低い場合は、就業促進定着手当を受けられます。対象になるのは、再就職手当の支給を受けていること、再就職の日から同じ事業主に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用されていること、再就職後6か月間の賃金の1日分の額が離職前の賃金日額を下回ることの3つを満たす場合です。支給額は下がった賃金の6か月分で、基本手当日額に支給残日数と20%を掛けた額が上限になります。申請期間は再就職した日から6か月経過した日の翌日から2か月間で、申請書は再就職手当の支給決定通知書とともにハローワークから郵送されます。
申請の前段では、退職した会社から受け取る離職票が必要になります。受け取り方や届かないときの対処は以下の記事にまとめています。
手当を残すためにやること
再就職手当の対象になるかどうかは、手続きの順序で決まる部分があります。今の段階でできることを整理します。
もしあなたが退職後まだハローワークに行っていないなら、入社日が確定する前に求職の申込みを済ませておくと、再就職手当の対象になる可能性が残ります。要件⑧は求職の申込み前から内定していた事業主に雇用された場合を対象外としているので、申込みが先か内定が先かで結論が変わります。退職が決まった段階で、離職票が届いたらすぐ手続きに行くつもりで準備しておくと選択肢が減りません。
自己都合の退職で給付制限がある場合は、紹介経路にも注意が必要です。要件④により、待期期間の満了後1か月の期間内に就職するなら、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが求められます。民間の転職エージェントは職業安定法に基づく許可を受けて職業紹介を行う事業者なので、エージェント経由で決まった就職はこの要件に当てはまります。ただし個別の可否はハローワークが判断するため、就職が決まった経路は申請のときに正確に伝えてください。この期間に決着させたいなら、自分で応募する経路だけに頼らず、紹介を受けられる状態を作っておくほうが安全です。
リクルートエージェントは総合型の転職エージェントで、担当者から求人を紹介してもらう形で選考を進められます。給付制限の期間中に応募先を決めたいのであれば、紹介を受けられる状態を先に作っておくと、経路の要件を気にせず選考に集中できます。
就職が決まった後にやることは2つです。就職日の前日までに失業の認定を受けること、そしてハローワークに就職を届け出て申請書類の案内を受けることです。認定を受けないまま就職日を迎えると要件②を満たせなくなるため、内定の連絡を受けた時点で認定日を確認してください。
よくある質問
Q. 転職先が決まっている場合、もらえるお金はありますか?
求職の申込み前から内定していた場合は、雇用保険から受け取れるものはありません。求職の申込みをした後に就職が決まった場合は、待期期間の満了後の就職で支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あるなど、8つの要件を満たせば再就職手当の対象になります。
Q. 就職先が決まったら失業保険はどうなりますか?
就職日の前日までの失業の認定を受けたところで基本手当の支給は終わり、残った日数に応じて再就職手当の対象になります。認定を受けずに就職日を迎えると再就職手当の要件を満たせなくなるので、就職が決まった時点でハローワークに連絡してください。
Q. 次の会社が決まっている状態で離職票は必要ですか?
基本手当を受給しないのであれば、ハローワークへの提出は必要ありません。ただし入社日までに空白ができて受給を検討することになった場合や、内定が取り消された場合には必要になります。退職時に受け取っておくほうが安全です。
Q. 再就職手当をもらうと転職先に知られますか?
再就職手当の申請には、就職した事実をハローワークに証明する書類が必要になるため、勤務先に伝えずに受け取ることはできません。書類の様式や記入を依頼する相手はハローワークで確認できます。
まとめ
転職先が決まっている場合の扱いは、決まった時期で分かれます。
- 退職前から内定していた場合
- 基本手当も再就職手当も対象外で、雇用保険から受け取れるお金はない
- 求職の申込み後に決まった場合
- 待期期間の満了後の就職で、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あれば再就職手当の対象になりうる
- 申請の期限
- 支給申請書は就職した日の翌日から1か月以内に提出する
すでに受給の手続きを済ませているなら、雇用保険受給資格者証を開いて支給残日数を数えてみてください。所定給付日数の3分の2の線を越えているか、3分の1の線の手前かで、給付率が70%になるか60%になるかが決まります。就職日を1日早めるだけで金額が変わる場面もあるので、内定の返答をする前に一度確かめておくと判断しやすくなります。